優れたピアニストとは?の鼎談
いま発売されている「モーストリー・クラシック」12月号は、ピアニストの特集である。音楽評論家、音楽ジャーナリスト46人が投票した「最新格付け! 世界の名ピアニスト」では、ウラディーミル・ホロビッツが第1位に選出された。第2位はアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、第3位はスヴャトスラフ・リヒテル。現役ピアニストの分野では、マルタ・アルゲリッチがダントツ第1位。第2位はマウリツィオ・ポリーニ、第3位はクリスティアン・ツィメルマンだった。
その結果を踏まえ、「優れたピアニスト」とは? という鼎談に参加した。出席者は仕事仲間である音楽評論家の青澤唯夫さんと、音楽ジャーナリストの片桐卓也さん。
ページは7ページに渡るものになったが、実は当初1時間と思われていたのが、延々と話が続き、2時間以上も話し込んでしまった。記事をまとめてくださったオヤマダアツシさんはさぞ苦労なさったことだろう。3人でいいたい放題、いろんなところに脱線して本当にごめんなさいね。3人を代表してオヤマダさんにあやまってしまおう(笑)。
このときは、いろんなピアニストの話題が出ると同時に、それぞれが自分の好きなピアニスト、演奏などについて語り、さらにいまのピアノの世界についても話がはずみ、まだまだ話たりない感じだった。
日本では、こうしたランキングを掲載すると、読者が増えるそうだ。以前は指揮者ランキングを行ったから、次は弦楽器かしら…。
希望としては、将来を担う若手音楽家のランキングもやってほしい。これこそ、ありとあらゆる方向に人選が広がっておもしろいと思うけど。でも、収集がつかなくなるかもしれないな。あまり来日していない人や、実力はあるけど、まだひのき舞台に登場してこない人、録音のない人などがいて、混戦模様になるかも。でも、それこそ読者にとっては貴重な情報源になると思うけどな。
編集長、ぜひ未来の巨匠たちの特集をやりましょうよ。
樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
昨夜は、樫本大進とコンスタンチン・リフシッツのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲チクルスの第2回をサントリーホールに聴きにいった。
このシリーズに関しては、大進に何度かインタビューを行い、作品に対する思い、リフシッツとの共演について、またプログラムの組み立てかたなどを聞き、さまざまなところで記事を展開してきた。
昨夜は前半に第2番と第6番を、後半に第7番と第8番をもってきた。
よく、「地位が人を作る」というが、まさにこのリサイタルでそのことばを実感した。大進の演奏はデビュー当初から聴き続け、人間的な成長とともに演奏が大きな変貌を遂げたと感じていたが、昨夜の演奏は、ベルリン・フィルのコンサートマスターとして日々緊張と責任と多大なる集中力のなかで演奏している成果が存分に発揮されたものだった。
以前にくらべ、音楽全体に余裕が生まれ、音色が自由自在に変化し、ベートーヴェンの作品に対する洞察力が増し、自信がみなぎっていた。
ここにリフシッツの真に天才的な自由闊達なピアノが加わると、えもいわれぬ味わい深いベートーヴェンが生まれる。
大進はいつもおごらず、和を大切に、主張すべきところはきちんと主張するが、相手を気遣い、その一方でリーダーシップを発揮する。
彼は、ベルリン・フィルのコンサートマスターに内定した段階では、口では気にしていない、なるようになるといっていたが、この時期はかなりストレスがたまっていたと思う。
それがコンサートマスターに正式に就任してからは、もちろん重責だが、リラックスした表情を見せるようになった。
こんなにも偉大な地位に就いたことが人間を変え、演奏を変えたことに驚いた。必死で弾いている感じはまったくなく、盟友とのデュオを心から楽しみ、ベートーヴェンに身も心も捧げていたため、私たち聴き手も作品のすばらしさに酔うことができた。
次回は2013年1、2月の予定。またひとまわり大きくなった樫本大進に会えるに違いない。
なお、リフシッツは3月15日に紀尾井ホールでJ.S.バッハの「フーガの技法」でリサイタルを行う。これはバッハの絶筆となった未完の大作。どんな楽器で演奏されるべきか、どのような順序で配列すべきか、またどのような形にしたかったのかなど、謎の多い作品である。
彼はすでに録音もリリースしているが、この大作にリフシッツがどう挑むのか、ナマを聴くのが非常に楽しみ。バッハを深く愛している彼ならではの宇宙が形成されるのではないだろうか。
いま発売されている「モーストリー・クラシック」12月号は、ピアニストの特集である。音楽評論家、音楽ジャーナリスト46人が投票した「最新格付け! 世界の名ピアニスト」では、ウラディーミル・ホロビッツが第1位に選出された。第2位はアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、第3位はスヴャトスラフ・リヒテル。現役ピアニストの分野では、マルタ・アルゲリッチがダントツ第1位。第2位はマウリツィオ・ポリーニ、第3位はクリスティアン・ツィメルマンだった。
その結果を踏まえ、「優れたピアニスト」とは? という鼎談に参加した。出席者は仕事仲間である音楽評論家の青澤唯夫さんと、音楽ジャーナリストの片桐卓也さん。
ページは7ページに渡るものになったが、実は当初1時間と思われていたのが、延々と話が続き、2時間以上も話し込んでしまった。記事をまとめてくださったオヤマダアツシさんはさぞ苦労なさったことだろう。3人でいいたい放題、いろんなところに脱線して本当にごめんなさいね。3人を代表してオヤマダさんにあやまってしまおう(笑)。
このときは、いろんなピアニストの話題が出ると同時に、それぞれが自分の好きなピアニスト、演奏などについて語り、さらにいまのピアノの世界についても話がはずみ、まだまだ話たりない感じだった。
日本では、こうしたランキングを掲載すると、読者が増えるそうだ。以前は指揮者ランキングを行ったから、次は弦楽器かしら…。
希望としては、将来を担う若手音楽家のランキングもやってほしい。これこそ、ありとあらゆる方向に人選が広がっておもしろいと思うけど。でも、収集がつかなくなるかもしれないな。あまり来日していない人や、実力はあるけど、まだひのき舞台に登場してこない人、録音のない人などがいて、混戦模様になるかも。でも、それこそ読者にとっては貴重な情報源になると思うけどな。
編集長、ぜひ未来の巨匠たちの特集をやりましょうよ。
樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
昨夜は、樫本大進とコンスタンチン・リフシッツのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲チクルスの第2回をサントリーホールに聴きにいった。
このシリーズに関しては、大進に何度かインタビューを行い、作品に対する思い、リフシッツとの共演について、またプログラムの組み立てかたなどを聞き、さまざまなところで記事を展開してきた。
昨夜は前半に第2番と第6番を、後半に第7番と第8番をもってきた。
よく、「地位が人を作る」というが、まさにこのリサイタルでそのことばを実感した。大進の演奏はデビュー当初から聴き続け、人間的な成長とともに演奏が大きな変貌を遂げたと感じていたが、昨夜の演奏は、ベルリン・フィルのコンサートマスターとして日々緊張と責任と多大なる集中力のなかで演奏している成果が存分に発揮されたものだった。
以前にくらべ、音楽全体に余裕が生まれ、音色が自由自在に変化し、ベートーヴェンの作品に対する洞察力が増し、自信がみなぎっていた。
ここにリフシッツの真に天才的な自由闊達なピアノが加わると、えもいわれぬ味わい深いベートーヴェンが生まれる。
大進はいつもおごらず、和を大切に、主張すべきところはきちんと主張するが、相手を気遣い、その一方でリーダーシップを発揮する。
彼は、ベルリン・フィルのコンサートマスターに内定した段階では、口では気にしていない、なるようになるといっていたが、この時期はかなりストレスがたまっていたと思う。
それがコンサートマスターに正式に就任してからは、もちろん重責だが、リラックスした表情を見せるようになった。
こんなにも偉大な地位に就いたことが人間を変え、演奏を変えたことに驚いた。必死で弾いている感じはまったくなく、盟友とのデュオを心から楽しみ、ベートーヴェンに身も心も捧げていたため、私たち聴き手も作品のすばらしさに酔うことができた。
次回は2013年1、2月の予定。またひとまわり大きくなった樫本大進に会えるに違いない。
なお、リフシッツは3月15日に紀尾井ホールでJ.S.バッハの「フーガの技法」でリサイタルを行う。これはバッハの絶筆となった未完の大作。どんな楽器で演奏されるべきか、どのような順序で配列すべきか、またどのような形にしたかったのかなど、謎の多い作品である。
彼はすでに録音もリリースしているが、この大作にリフシッツがどう挑むのか、ナマを聴くのが非常に楽しみ。バッハを深く愛している彼ならではの宇宙が形成されるのではないだろうか。