ところで、『週刊現代』(9月9日)が「日本全体が隠蔽体質、全くオープンにされない原発事故、ダダ漏れの「原発汚染水」に世界中激怒」と題して、次のように報道している。
「欧米人記者A 日本はこれほど世界中を不安にさせておいて、オリンピックに手を挙げる資格などあるのか?
田中 国際社会に大変迷惑をかけたことについては反省している。
9月2日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で開かれた田中俊一・原子力規制委員会委員長の記者会見は、世界中のメディアの特派員たちから、英語の集中砲火を浴びた。日本では詳しく報じられていないが、田中委員長は、まさに火ダルマになったのだった。
欧米人記者B 福島の放射能汚染水は、アジアの海を、取り返しのつかない汚染の海にする危険性を秘めているのではないか?
田中 現状は汚染は港内にとどまっている。トリチウムの汚染量が20兆ベクレルと報道されたが、これは最大で35gにすぎない。
欧米人記者C 規制委員会はこの2年半、一体何をやってきたのだ? 東京電力が隠蔽体質を持っているからこそ、規制委員会が規制を強めなければならないのではないか。
田中 実際、東電はタンクの水位すら測っていなかった。監督責任について言い訳はしたくないが、福島第一原発はずっと不安定な状況にあり、ガレキ一つ動かすのもリスクなのだ。
欧米人記者D 東電だけでなく、日本自体に隠蔽体質があるように見受けられる。なぜもっと海外の専門家も入れて、オープンにできないのか。
田中 アメリカ、イギリス、フランスの3人の専門家をアドバイザーに指名して、適宜メールなどで連絡を取っている。国際社会に今後とも適切な状況を伝えていきたい。
田中委員長は、まるで針のムシロに座るように、肩をすぼめ、時折ため息を交えながら、小声で答えたのだった。『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京支局長が嘆いて言う。
「2年半前に福島原発であれだけの事故を起こして、日本は解決を約束したのに、なぜ状況が悪化していくのか。特に太平洋は、日本だけの海ではない。放射能汚染水の問題は、日本という国の信頼性が問われているのだ」この記者会見には、各国政府の外交官たちまで参加していた。各国は自分の問題として考えており、切実に捉えている。
「「フクシマの問題は、日本だけでなくカナダの問題でもあり、国民が強い関心を抱いているので、話を聞きにきました」(カナダ・ケベック州在日事務所・マルク・ベリボー広報官)
「放射能汚染問題は、二重の意味で、われわれにとって他人事ではないのです。一つは福島の汚染が台湾にまで広がるのかということ、もう一つは台湾の原発が同様の事故を起こすことはないのかということです」(台北駐日経済文化代表処・許国禎広報部長)」
(中略)
カリフォルニア州立大学医学部放射線生物学科のレオン・カップ氏が、専門家の立場から、福島原発の汚染水の危険度について警告する。
「日本政府は、非常時における飲料水の汚染基準値を、1Lあたり60ベクレルに設定しています。しかし東京電力によれば、福島原発の地下水の放射線レベルは、310〜650ベクレルです。仮に300ベクレルと低く見積もったとしても、10〜15回分のレントゲンを一度に受けた量と同等になるのです。
また、放射性物質の種類がセシウムならば、人体に吸収されても排泄されますが、ストロンチウム90ならば骨内に蓄積されていくので、大変危険です。とにかく、福島海域での漁業を、直ちに中止すべきです。そして福島近海の魚は、絶対に食べてはいけません」」
わたしは、最近、日本と世界との、福島第一原発への危機感の乖離について懸念している。
ほんとうにわたしたちはわかっていないのである。わかっていないことがふたつある。まず原発の危機的状況について、日本人は世界のような危機感をもっていない。
2点目に世界の危機感にまともに向かい合おうとしていない。たとえば石原慎太郎のように無視する。
慎太郎は、福島第一原発の汚染水問題が世界で深刻に取り上げられていることについて、「被曝体験のない外国人は放射能について非常にナーバス(神経質)になっている。ハンディキャップになっている」と語る始末だ。
この認識はまったく間違っている。被爆体験は確かにあるが、肥田舜太郎が証言するように、敗戦後の米国の命令もあって、放射線の恐怖について日本は無知の状態におかれて今日に至っている。
むしろヨーロッパの方が、チェルノブイリ原発事故の影響もあって、よく理解しており、正当に恐れているのだ。
「欧米人記者A 日本はこれほど世界中を不安にさせておいて、オリンピックに手を挙げる資格などあるのか?
田中 国際社会に大変迷惑をかけたことについては反省している。
9月2日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で開かれた田中俊一・原子力規制委員会委員長の記者会見は、世界中のメディアの特派員たちから、英語の集中砲火を浴びた。日本では詳しく報じられていないが、田中委員長は、まさに火ダルマになったのだった。
欧米人記者B 福島の放射能汚染水は、アジアの海を、取り返しのつかない汚染の海にする危険性を秘めているのではないか?
田中 現状は汚染は港内にとどまっている。トリチウムの汚染量が20兆ベクレルと報道されたが、これは最大で35gにすぎない。
欧米人記者C 規制委員会はこの2年半、一体何をやってきたのだ? 東京電力が隠蔽体質を持っているからこそ、規制委員会が規制を強めなければならないのではないか。
田中 実際、東電はタンクの水位すら測っていなかった。監督責任について言い訳はしたくないが、福島第一原発はずっと不安定な状況にあり、ガレキ一つ動かすのもリスクなのだ。
欧米人記者D 東電だけでなく、日本自体に隠蔽体質があるように見受けられる。なぜもっと海外の専門家も入れて、オープンにできないのか。
田中 アメリカ、イギリス、フランスの3人の専門家をアドバイザーに指名して、適宜メールなどで連絡を取っている。国際社会に今後とも適切な状況を伝えていきたい。
田中委員長は、まるで針のムシロに座るように、肩をすぼめ、時折ため息を交えながら、小声で答えたのだった。『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京支局長が嘆いて言う。
「2年半前に福島原発であれだけの事故を起こして、日本は解決を約束したのに、なぜ状況が悪化していくのか。特に太平洋は、日本だけの海ではない。放射能汚染水の問題は、日本という国の信頼性が問われているのだ」この記者会見には、各国政府の外交官たちまで参加していた。各国は自分の問題として考えており、切実に捉えている。
「「フクシマの問題は、日本だけでなくカナダの問題でもあり、国民が強い関心を抱いているので、話を聞きにきました」(カナダ・ケベック州在日事務所・マルク・ベリボー広報官)
「放射能汚染問題は、二重の意味で、われわれにとって他人事ではないのです。一つは福島の汚染が台湾にまで広がるのかということ、もう一つは台湾の原発が同様の事故を起こすことはないのかということです」(台北駐日経済文化代表処・許国禎広報部長)」
(中略)
カリフォルニア州立大学医学部放射線生物学科のレオン・カップ氏が、専門家の立場から、福島原発の汚染水の危険度について警告する。
「日本政府は、非常時における飲料水の汚染基準値を、1Lあたり60ベクレルに設定しています。しかし東京電力によれば、福島原発の地下水の放射線レベルは、310〜650ベクレルです。仮に300ベクレルと低く見積もったとしても、10〜15回分のレントゲンを一度に受けた量と同等になるのです。
また、放射性物質の種類がセシウムならば、人体に吸収されても排泄されますが、ストロンチウム90ならば骨内に蓄積されていくので、大変危険です。とにかく、福島海域での漁業を、直ちに中止すべきです。そして福島近海の魚は、絶対に食べてはいけません」」
わたしは、最近、日本と世界との、福島第一原発への危機感の乖離について懸念している。
ほんとうにわたしたちはわかっていないのである。わかっていないことがふたつある。まず原発の危機的状況について、日本人は世界のような危機感をもっていない。
2点目に世界の危機感にまともに向かい合おうとしていない。たとえば石原慎太郎のように無視する。
慎太郎は、福島第一原発の汚染水問題が世界で深刻に取り上げられていることについて、「被曝体験のない外国人は放射能について非常にナーバス(神経質)になっている。ハンディキャップになっている」と語る始末だ。
この認識はまったく間違っている。被爆体験は確かにあるが、肥田舜太郎が証言するように、敗戦後の米国の命令もあって、放射線の恐怖について日本は無知の状態におかれて今日に至っている。
むしろヨーロッパの方が、チェルノブイリ原発事故の影響もあって、よく理解しており、正当に恐れているのだ。