2015年12月20日20:19
カテゴリ本山よろず屋本舗為替・金融市場
アメリカの利上げが及ぼす甚大な影響
本山よろず屋本舗さんのサイトより
http://homepage2.nifty.com/motoyama/index.htm
<転載開始>
12月15~16日に行われたFOMCにおいて、FRBは0.25%の利上げを決定しました。
7年間にわたって続けてきた事実上のゼロ金利政策を解除し、実に9年半ぶりの利上げとなります。リーマンショック後の長期にわたった金融緩和政策の転換点となるのもので、世界の金融市場に及ぼす影響は甚大となることが予想されます。
NY株式市場は荒れた展開となりました。
利上げ発表前まで上昇していましたが、発表後は2日間で620ドルを超える下げ幅となりました。
また日経平均株価も発表後に300円を超す上げ幅となりましたが、翌日には366円の下げとなり、これも波乱の展開となっています。
私は利上げ前後に上がったのは、ヘッジファンドなどの投機筋が利上げ確実とみて事前に売り叩いていたものを、買い戻した結果ではないかと睨んでいますが、まあこれは私の憶測です。
明らかなことは、利上げは株式市場でも債券市場でもマイナスの要因であり、冷え込んだ実体経済にもかかわらず大量に資金を流し込むことで上げてきた株式市場は、いつ暴落を開始してもおかしくない状況にあります。
「黄金の金玉を知らないか」のふぐり玉蔵さんは、来週にも暴落を開始すると読んでおられるようです。
http://golden-tamatama.com/
私は玉蔵さんのような相場師ではないので時期はわかりませんが、クリスマスシーズンで人々の関心が他に向いてる時に、暴落を開始するというのもありそうな気がします。
それと円ドル為替も不気味な動きをしています。
私は利上げで円に対してもドル高になるものと思っていたのですが、週末の18日は円高に振れたことです。世界の金融市場では、危機が起こると避難通貨として円が買われますが、その兆候なのかどうか気になるところです。
当HPの10月12日の記事、「近づく世界的な金融大変動」で、FRBの0.25%の利上げが世界にもたらす影響について、吉田繁治さんのメルマガから紹介しました。
さらに吉田さんのメルマガに利上げに関する記述がありましたので、最初にそれを紹介します。
たった0.25%の利上げなので、影響は少ないように感じてしまいますが、実は以下の2点で世界の金融市場に甚大な影響を与えます。
① レポ金融の縮小
銀行間の「レポ金融」で、5倍のレバレッジがかかっていれば、
0.25% × 5倍 = 1.25%
の利上げに相当するといいます。
このため、銀行間の流動性の縮小をもたらし、投機資金(債券、株、コモディティ、不動産、デリバティブ)の減少になり、価格が下がるといいます。
② 金利スワップでの損失
世界の金利スワップの想定元本は$319兆(3京8280兆円)もあり、そのうちドル金利スワップは$106兆(1京2720兆円)を占めるといいます。
金利スワップとは、固定金利と変動金利を交換するもので、ドルの変動金利が0.25%上がるだけで、
$106兆 × 0.25% = $2650億(約32兆円)
の受け渡しが生じることになります。
わずか0.25%の金利の上昇で、金融機関でこれだけの金額が動くということです。
当然ながら利上げは今回が終わりではなく、来年も続きます。来年3回の利上げがあれば、さらに0.75%の上げがあることになります。
利上げの影響は今後さらに大きくなっていくのですから、世界のどこかで破綻の憂き目に遭う金融機関が出てくる可能性は高まります。
吉田さんは、これだけ危険性を伴う利上げを、なぜFRBは行うのか苦慮します。
そして、どうにか絞り出したのが以下の2つの理由です。
① 米国株と不動産のバブルの警戒。
② 国債の金利を上げて、海外からの米国債の買いを促す。
しかしこれらの理由があるとはいえ、世界の金融市場に大変動をもたらし、世界を大恐慌にも導きかねない利上げを、なぜアメリカは行わなければならないのか。悩んだ吉田さんは、以下のような感想を述べておられます。
・・・<吉田繁治さんの感想>・・・
なぜ、2015年内に利上げをする必要があるのか。必要がないのに、
FRBの権威ため行うのか。次回不況に陥った時、政策余力を残すた
めか。あるいは、ドル基軸への不安が深いところで生じているのか。
みなさん、どう思いますか?
・・・<終了>・・・
私は12月13日の記事、「アメリカの経済統計の嘘と私の与太話」で、ひょっとするとドル基軸への不安が深いところで生じているかも・・・という記事を書きました。ただしあくまでも私の与太話ですが・・・。
利上げがもたらす影響は、革命と言われたシェールオイル産業の分野でも深刻なものがあります。
これから紹介するのは、「ヤスの備忘録」のヤスさんのメルマガによるものです。
2011年ころから、アメリカでは本格的にシェールオイルの生産が始まり、2014年にはアメリカはサウジアラビアを抜いて、世界一の原油生産国になりました。
http://www.garbagenews.net/archives/1872164.html
アメリカのシェールオイル産業を主に担っているのは大手資本ではなく、これを格好のビジネス機会と捉えた中小の石油会社です。
そうした中小の石油会社は資本力が乏しいので、将来の原油の販売価格を固定した販売契約を担保にして、銀行からローンを借り入れているといいます。
将来の原油価格を固定しているため、原油価格が大きく下がった場合、銀行は担保割れを起こしてしまいます。そうしたリスクを避けるため、銀行はこのローンをすぐに証券化して利回りの高い金融商品として販売してリスクを回避しています。
この金融商品は「CLO」と呼ばれ、原油価格が100ドルを超えて、かつ金融緩和で余剰資金が余っていた数年前までは、良く売れていたそうです。
またシェールオイル会社は、社債を発行して運転資金を調達しています。こうしたシェールオイル会社の社債は将来破綻するリスクが高いとしてジャンク債として扱われるそうです。
そしてさらにリスクを分散するために、シェールオイル各社の社債を輪切りにしてミックスして、「CBO」と呼ばれる金融商品として売られているそうです。これは破綻したサブプライムローンを輪切りにしてミックスした、「CDO」を連想させます。
このジャンク債や「CLO」、そして「CBO」などの金融商品は、アメリカの最大手の銀行6行だけで、なんと$3.9兆(約420兆円)も保有していると見積もられているそうです。
問題は、去年の夏頃から原油価格が急落していることです。
いまや原油価格は30ドル台まで下がっています。100ドル台をキープしていたときと比べると、3分の1になってしまいました。
シェールオイル会社のうち、高効率な数社の採算ラインが、40数ドル~50ドル弱程度だといわれているそうです。多くのシェールオイル会社の採算ラインは50ドル以上と言われていて、現在の30ドル台が続くと深刻な影響が出てきます。
アメリカの利上げは、採算割れに苦しむ多くのシェールオイル会社の経営をさらに窮地に追い込むことになります。
そうした状況にも関わらず、2016年に原油が上昇する見込みはほとんどありません。
アメリカ議会は、米国産原油輸出を40年ぶりに解禁する法案を可決しました。また2015年には、経済制裁を解かれたイラン産の原油が市場に出てくると言われています。サウジアラビアが主導するOPECは、原油増産維持を決定しました。中国経済の減速により、これから原油需要が飛躍的に伸びることは考えられません。
ゴールドマン・サックスは、こうした原油の供給過剰な状態が続くとして、今後15年にわたって原油が安値で推移するとの見通し示しました。また原油価格が1バレル20ドルに下落する可能性は、50%未満と予想しています。
これまで極めて正確な原油価格予測を発表してきたゴールドマン・サックスですから、そうなるのかもしれません。
ヤスさんによると、すでに12月14日、「サードアベニュー」と「ストーンライオン」という、シェールオイル関連のジャンク債を運用していた2つのファンドが破綻したそうです。
これらは比較的に小規模なファンドなので、現時点では市場の影響は少ないと見られているそうですが、今後注目する必要がありそうです。
私は不思議でならないのは、世界経済を大混乱に陥らせかねない利上げを、アメリカはなぜ行ったかということです。
吉田さんが考えた2つの理由は、他に思いつかないので、苦し紛れに編み出したとしか思えないのです。
本当は、アメリカはすべて承知の上で、あえて利上げしたのではないかと疑ってしまいます。
吉田さんによると、フィシャーFRB副議長は、「シャドーバンクとデリバティブの、利上げによる影響は、FRBは把握していない」と述べているそうです。
これは実に怪しい話です。
というのも事前にそう告げることで、世界的な金融の大変動が起こりFRBの責任を問われた際に、「知らなかったのだから、仕方ないじゃないか」と開き直るためではないかと邪推してしまいます。
とにかく、理由はなんであれアメリカは利上げに踏み切りました。
私は2016年のどこかで、金融大変動が起こる確率はとても高くなったとみています。
私たちのような一般庶民ができる防衛策は、現金と金(キン)の現物しかないと私は考えます。銀行が潰れることを想定すると、不用心でも手元に現金を持っている方が得策です。また金は先物やETFではなく、現物を手元に置いておくというのが重要だと考えます。
その金の現物ですが、今後原油価格が下落すると伴に、絶好の買い場がくるかもしれません。私は現在の1g4100円台の水準では買いませんが、この水準であれば買おうと決めている値段があります(もちろんその値段まで落ちなければ買うつもりはありません)。
もしその値段に達することがありましたら、当HPでお知らせしようと思います。
(2015年12月20日)
カテゴリ本山よろず屋本舗為替・金融市場
アメリカの利上げが及ぼす甚大な影響
本山よろず屋本舗さんのサイトより
http://homepage2.nifty.com/motoyama/index.htm
<転載開始>
12月15~16日に行われたFOMCにおいて、FRBは0.25%の利上げを決定しました。
7年間にわたって続けてきた事実上のゼロ金利政策を解除し、実に9年半ぶりの利上げとなります。リーマンショック後の長期にわたった金融緩和政策の転換点となるのもので、世界の金融市場に及ぼす影響は甚大となることが予想されます。
NY株式市場は荒れた展開となりました。
利上げ発表前まで上昇していましたが、発表後は2日間で620ドルを超える下げ幅となりました。
また日経平均株価も発表後に300円を超す上げ幅となりましたが、翌日には366円の下げとなり、これも波乱の展開となっています。
私は利上げ前後に上がったのは、ヘッジファンドなどの投機筋が利上げ確実とみて事前に売り叩いていたものを、買い戻した結果ではないかと睨んでいますが、まあこれは私の憶測です。
明らかなことは、利上げは株式市場でも債券市場でもマイナスの要因であり、冷え込んだ実体経済にもかかわらず大量に資金を流し込むことで上げてきた株式市場は、いつ暴落を開始してもおかしくない状況にあります。
「黄金の金玉を知らないか」のふぐり玉蔵さんは、来週にも暴落を開始すると読んでおられるようです。
http://golden-tamatama.com/
私は玉蔵さんのような相場師ではないので時期はわかりませんが、クリスマスシーズンで人々の関心が他に向いてる時に、暴落を開始するというのもありそうな気がします。
それと円ドル為替も不気味な動きをしています。
私は利上げで円に対してもドル高になるものと思っていたのですが、週末の18日は円高に振れたことです。世界の金融市場では、危機が起こると避難通貨として円が買われますが、その兆候なのかどうか気になるところです。
当HPの10月12日の記事、「近づく世界的な金融大変動」で、FRBの0.25%の利上げが世界にもたらす影響について、吉田繁治さんのメルマガから紹介しました。
さらに吉田さんのメルマガに利上げに関する記述がありましたので、最初にそれを紹介します。
たった0.25%の利上げなので、影響は少ないように感じてしまいますが、実は以下の2点で世界の金融市場に甚大な影響を与えます。
① レポ金融の縮小
銀行間の「レポ金融」で、5倍のレバレッジがかかっていれば、
0.25% × 5倍 = 1.25%
の利上げに相当するといいます。
このため、銀行間の流動性の縮小をもたらし、投機資金(債券、株、コモディティ、不動産、デリバティブ)の減少になり、価格が下がるといいます。
② 金利スワップでの損失
世界の金利スワップの想定元本は$319兆(3京8280兆円)もあり、そのうちドル金利スワップは$106兆(1京2720兆円)を占めるといいます。
金利スワップとは、固定金利と変動金利を交換するもので、ドルの変動金利が0.25%上がるだけで、
$106兆 × 0.25% = $2650億(約32兆円)
の受け渡しが生じることになります。
わずか0.25%の金利の上昇で、金融機関でこれだけの金額が動くということです。
当然ながら利上げは今回が終わりではなく、来年も続きます。来年3回の利上げがあれば、さらに0.75%の上げがあることになります。
利上げの影響は今後さらに大きくなっていくのですから、世界のどこかで破綻の憂き目に遭う金融機関が出てくる可能性は高まります。
吉田さんは、これだけ危険性を伴う利上げを、なぜFRBは行うのか苦慮します。
そして、どうにか絞り出したのが以下の2つの理由です。
① 米国株と不動産のバブルの警戒。
② 国債の金利を上げて、海外からの米国債の買いを促す。
しかしこれらの理由があるとはいえ、世界の金融市場に大変動をもたらし、世界を大恐慌にも導きかねない利上げを、なぜアメリカは行わなければならないのか。悩んだ吉田さんは、以下のような感想を述べておられます。
・・・<吉田繁治さんの感想>・・・
なぜ、2015年内に利上げをする必要があるのか。必要がないのに、
FRBの権威ため行うのか。次回不況に陥った時、政策余力を残すた
めか。あるいは、ドル基軸への不安が深いところで生じているのか。
みなさん、どう思いますか?
・・・<終了>・・・
私は12月13日の記事、「アメリカの経済統計の嘘と私の与太話」で、ひょっとするとドル基軸への不安が深いところで生じているかも・・・という記事を書きました。ただしあくまでも私の与太話ですが・・・。
利上げがもたらす影響は、革命と言われたシェールオイル産業の分野でも深刻なものがあります。
これから紹介するのは、「ヤスの備忘録」のヤスさんのメルマガによるものです。
2011年ころから、アメリカでは本格的にシェールオイルの生産が始まり、2014年にはアメリカはサウジアラビアを抜いて、世界一の原油生産国になりました。
http://www.garbagenews.net/archives/1872164.html
アメリカのシェールオイル産業を主に担っているのは大手資本ではなく、これを格好のビジネス機会と捉えた中小の石油会社です。
そうした中小の石油会社は資本力が乏しいので、将来の原油の販売価格を固定した販売契約を担保にして、銀行からローンを借り入れているといいます。
将来の原油価格を固定しているため、原油価格が大きく下がった場合、銀行は担保割れを起こしてしまいます。そうしたリスクを避けるため、銀行はこのローンをすぐに証券化して利回りの高い金融商品として販売してリスクを回避しています。
この金融商品は「CLO」と呼ばれ、原油価格が100ドルを超えて、かつ金融緩和で余剰資金が余っていた数年前までは、良く売れていたそうです。
またシェールオイル会社は、社債を発行して運転資金を調達しています。こうしたシェールオイル会社の社債は将来破綻するリスクが高いとしてジャンク債として扱われるそうです。
そしてさらにリスクを分散するために、シェールオイル各社の社債を輪切りにしてミックスして、「CBO」と呼ばれる金融商品として売られているそうです。これは破綻したサブプライムローンを輪切りにしてミックスした、「CDO」を連想させます。
このジャンク債や「CLO」、そして「CBO」などの金融商品は、アメリカの最大手の銀行6行だけで、なんと$3.9兆(約420兆円)も保有していると見積もられているそうです。
問題は、去年の夏頃から原油価格が急落していることです。
いまや原油価格は30ドル台まで下がっています。100ドル台をキープしていたときと比べると、3分の1になってしまいました。
シェールオイル会社のうち、高効率な数社の採算ラインが、40数ドル~50ドル弱程度だといわれているそうです。多くのシェールオイル会社の採算ラインは50ドル以上と言われていて、現在の30ドル台が続くと深刻な影響が出てきます。
アメリカの利上げは、採算割れに苦しむ多くのシェールオイル会社の経営をさらに窮地に追い込むことになります。
そうした状況にも関わらず、2016年に原油が上昇する見込みはほとんどありません。
アメリカ議会は、米国産原油輸出を40年ぶりに解禁する法案を可決しました。また2015年には、経済制裁を解かれたイラン産の原油が市場に出てくると言われています。サウジアラビアが主導するOPECは、原油増産維持を決定しました。中国経済の減速により、これから原油需要が飛躍的に伸びることは考えられません。
ゴールドマン・サックスは、こうした原油の供給過剰な状態が続くとして、今後15年にわたって原油が安値で推移するとの見通し示しました。また原油価格が1バレル20ドルに下落する可能性は、50%未満と予想しています。
これまで極めて正確な原油価格予測を発表してきたゴールドマン・サックスですから、そうなるのかもしれません。
ヤスさんによると、すでに12月14日、「サードアベニュー」と「ストーンライオン」という、シェールオイル関連のジャンク債を運用していた2つのファンドが破綻したそうです。
これらは比較的に小規模なファンドなので、現時点では市場の影響は少ないと見られているそうですが、今後注目する必要がありそうです。
私は不思議でならないのは、世界経済を大混乱に陥らせかねない利上げを、アメリカはなぜ行ったかということです。
吉田さんが考えた2つの理由は、他に思いつかないので、苦し紛れに編み出したとしか思えないのです。
本当は、アメリカはすべて承知の上で、あえて利上げしたのではないかと疑ってしまいます。
吉田さんによると、フィシャーFRB副議長は、「シャドーバンクとデリバティブの、利上げによる影響は、FRBは把握していない」と述べているそうです。
これは実に怪しい話です。
というのも事前にそう告げることで、世界的な金融の大変動が起こりFRBの責任を問われた際に、「知らなかったのだから、仕方ないじゃないか」と開き直るためではないかと邪推してしまいます。
とにかく、理由はなんであれアメリカは利上げに踏み切りました。
私は2016年のどこかで、金融大変動が起こる確率はとても高くなったとみています。
私たちのような一般庶民ができる防衛策は、現金と金(キン)の現物しかないと私は考えます。銀行が潰れることを想定すると、不用心でも手元に現金を持っている方が得策です。また金は先物やETFではなく、現物を手元に置いておくというのが重要だと考えます。
その金の現物ですが、今後原油価格が下落すると伴に、絶好の買い場がくるかもしれません。私は現在の1g4100円台の水準では買いませんが、この水準であれば買おうと決めている値段があります(もちろんその値段まで落ちなければ買うつもりはありません)。
もしその値段に達することがありましたら、当HPでお知らせしようと思います。
(2015年12月20日)