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河村尚子のベートーベン ピアノソナタ第9番 作品14−1の選曲の意図は

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ベートーベンのピアノソナタ32曲は「ピアノの新約聖書」と呼ばれるほど、
ピアノを弾く者にとって欠かせないものですね。


私も子供の頃ピアノを習ったことがありますが、
彼のソナタも初期の曲を中心に5〜6曲習いました。

名前付きの曲では「悲愴」「月光」を習いました。

習うのをやめてからも、自己流で何曲かチャレンジしました。
後期の曲は歯が立ちませんが、中期の「ワルトシュタイン」や「熱情」も
第3楽章がかなり難しくて、なかなか満足には弾けませんでしたね。

あと「テンペスト」も、弾いてみていい曲だと感じました。
ただ自己流ですので、第1楽章の提示部第1主題は、伴奏部分はすべて右手で弾いていました。
(譜面をよく見ると、旋律が高音のところは左手が伴奏を受け持つのですが、
私はその部分は、左手を右手上に交差させて、高音部の旋律を左手で弾いていました。)


まずは5番。第一楽章。いかにもピアノソナタ、という感じがしていい。
次、7番第一楽章。特に終わりの部分が感動。
やはり8番、悲愴。ベートーベンを代表する名曲と思います。第1〜3楽章すべてよい。
次、14番、月光。第一楽章は誰でも知っていますが、やはり第三楽章がすばらしい。第一楽章が煌々と輝く満月、第二楽章雲が出現、第三楽章素早く行き交う雲の合間の月、という印象かな。
次、17番テンペスト。第三楽章が大好きです。
次、21番ワルトシュタイン。第一楽章が大好きです。特に第二主題は泣けます。
次、23番熱情。第1、3楽章が好きです。
最後、32番。弾いたことはないが、好きです。

やはりベートーベンのピアノソナタは通向けですね。音大にでも行かない限り、こんな話をできる仲間は周りにはいません(笑)




ベートーベン ピアノソナタ第9番 作品14−1 ホ長調



第一期のピアノソナタは前2作で頂点を極めました。そして第一期にはあと3曲のソナタが残っています。頂点を極めたあとの作品がどのような佇まいを示すのか興味あるところです。

ベートーベンは強い個性を持ちながらも統一感をもったソナタの創作に成功しましたが、続く作品ではその集中力を和らげて古典的な姿に回帰しています。大きな仕事をした余韻で原点を確かめるような余裕させ感じさせます。

この作品は弦楽四重奏としてCDで聞くことができます。(メロス四重奏団/中期弦楽四重奏曲集)譜例を見ても明らかなように見事に四声部で書かれています。

第一楽章

提示部 60小節
展開部 30小節
再現部 72小節

全体的にも規模は大きくなく展開部も相対的に小さなものです。提示部は次のような構成です。

第一主題  12小節
確保と推移 10小節
第二主題   8小節
確保と推移 16小節
終止     14小節

シンプルかつ整った提示部でここにも古典的な姿に回帰して余裕をもって聞けるこの作品の特徴が表れています。第一主題は前半4小節の完全4度の跳躍が特徴的でこのあと展開される素材として扱われます。

第一主題の出だしの音型を見ると力強く演奏したくなりますがこの作品の性格からすると少し余力を残して余裕を持って弾く方がぴったりくるでしょう。そのような演奏を探すのも楽しみの一つです。

第二主題は対照的になだらかな線形のメロディで単音で進むところも第一主題とは対照的です。調性も第一主題の主調がホ長調であったのに対してロ長調をとりセオリーどおりで安心感があります。この第二主題はまさに弦楽四重奏曲の世界を示しています。

展開部では第一主題の完全4度の跳躍が展開され、途中左手に激しい動きが出て右手がオクターブで即興的な印象のフレーズが現れますがこのメロディー線は第二主題のメロディ線をなぞっています。主題展開を駆使した重いものではなくこの作品の性格に合った展開部です。

再現部は左手に変化が付きフォルテで始まりますが再現部全体はほぼ提示部の構成に沿って進みます。

第二楽章

アレグレット−マジョーレ−アレグレットという三部形式です。アレグレット主題の最初の4小節と次の4小節は特徴的な対比を示しています。この楽章でも四声部の構造が見えてきます。

中間部に相当するマジョーレは終止弱音で美しいものです。ここは3声部のトリオのようです。古典的弦楽四重奏曲のメヌエットによく出てくるパターンです。

後半のアレグレットは最初のアレグレットがそのまま繰り返されます。

第三楽章

ロンドソナタ形式です。第一部の構成は次の通りですが典型的なシンプルなものです。

第一主題  8小節
推移    13小節
第二主題  9小節
第一主題  8小節
推移     8小節

前作の作品13の第三楽章と比べるとそのシンプルさがよく分かります。第一主題も前半4小節と後半4小節が対照的です。前半4小節は右手が上昇し左手が下降して緊張感がたかまってゆき頂点に達したあと後半4小節は一気に下降します。

しかしこの運動量は大きくなく4小節目の頂点ではクレッシェンドしたあとストンと急にピアノになります。これに対して第二主題は大きな動きはなく静的なものです。

悲愴ソナタの後にこのように古典的に回顧してはいますが自信たっぷりに安定した作品がくるとは意外なことです。この不思議な感覚は初期のソナタの残り2曲を聞いてみると納得感に変わってきます。

ピアノソナタに取り組んだベートーベンが悲愴ソナタで頂点に達したあとまだ見ぬ新たな進化を予感しその可能性を予想するものであることを。

この作品が弦楽四重奏的な要素をもっていることを示しましたが実は作品18の弦楽四重奏曲はこの時点ではまだ生まれていないのです。

...[私の一枚]........................

ジョン・リル(ピアノ)
ベートーベン ピアノソナタ全集
BRILLANT CLASSICS
Monthly Classics



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