来年度に政府が発行する国債の総額が過去最高となる181.5兆円に達することが、12月24日発表の国債発行計画で明らかになりました。政府が抱える莫大な借金が問題視されていますが、日本の財政は大丈夫なのでしょうか?
これに対して2014年度に発行する国債の総額は181兆5000億円である。41.3兆の新規国債に対して、発行する国債の総額が181.5兆と大きな開きがあるのは、過去に発行した国債の借り換え分があるからである。
つまり国債市場は、毎年新規に発行する国債に加えて、過去に発行した国債の借り換え分も含めて消化しなければならない。国債が安定的に消化できるのかは、新規の国債発行額だけではなく、発行額全体
について考える必要がある。
日本経済が着実に崩壊へ向けて進んでいます。2014年度の国債発行総額が、過去最大の180兆円規模となることが決まりました。この影響で国債金利も上昇しており、12月2日の時点では0.622%だった10年物国債が、12月16日には0.682%にまで上昇。日本政府は「国債の金利が今のままだったら何とか大丈夫」というような考えをしているようですが、今まで積み上がった借金とアベノミクスの影響で、将来は金利が大きく動いてしまう可能性が高いです。
ただですら、1000兆円もの借金があるわけで、このままでは10年以内に日本経済が壊滅的な状態になってしまうかもしれません。また、アベノミクスが始まってから、外国人投資家の取引量が激増している事が非常に気になります。株価の上昇を支えているのも外国人による日本買いですし、何らかの目論見があるはずです。
クレディ・スイスが毎年発表している富に関する報告書「グローバル・ウェルス・レポート」の最新版には、「アベノミクスで日本の富580兆円が消え、日本の富裕層は130万人も激減」したと書いてあります。これからは消費税増税も待ち構えているわけで、日本の富は今以上に縮小していくことになるでしょう。
逆に言えば、ここで減税の決断をすれば、日本の経済を一気に復活させることが出来るかもしれないということです。誰か減税の決断をしてくれる政治家がいれば良いのですが・・・(苦笑)。
*安倍政権はこの状況で米国債を大量に買い込んでいます。
現在、日銀による国債の直接引き受けは法律で禁じられている。だが実際には、国会の決議を経て、毎年日銀による直接引受が行われており、2014年度は約11兆円が直接引き受けされる予定だ。また市中で消化されるといっても、日銀の量的緩和によってその国債はやがて日銀が購入することになるので、市場参加者は安心して国債を購入することができる。つまり実質的には日銀が国債の直接引き受けを行っている状況といってよい。
これは短期的には金利を引き下げ、国債の消化をスムーズにする役割を果たすことになる。だが問題はその後である。日銀は、いつかは量的緩和策を縮小あるいは中止する必要に迫られる。その時の金利動向が日本の財政に極めて大きな影響を与えることになる。
現在、国債の発行残高は800兆円を超えているが、毎年180兆円という巨額の国債発行が続けば、最短の場合、数年ですべての国債が新しく発行したものに入れ替わることになる。この間に金利が急騰する事態となれば、利払い額が一気に増加し、財政が立ちゆかなくなる。
財務省では、こうした事態を避けるため、償還期限の長期化を実施している。2014年度の発行計画において、長期債(30年債)の発行額を1.2兆円増額し、償還期限を6カ月長くする予定である。
日本の財政問題が議論される時には、国債の発行総額や負債のGDPに対する割合いなどがテーマとなることが多い。「国債の保有者の多くは日本人なので大きな問題はない」「日本政府は資産をたくさん保有しているので問題ない」といった議論はその典型といってよい。
国債保有者の10%近くがすでに外国人になっているという事実や、日本政府が保有する資産の多くは実質的に価値がないことを考えれば、財政に大きな問題はないとする見解の多くは根拠が薄い。だがそれにも増して重要なことは、財政問題でもっとも懸念されるのは、負債の総額などではなく、金利の急騰による混乱であるという点だ。
短期間で金利が急騰すれば、金融機関の経営に重大な影響が生じるほか、長期的には利払い額が増加し、従来通りの国家予算が成立しなくなってしまう。財政が完全に破綻していなくても、このような事態になっただけで、日本にとっては致命的な損失である。
金利を低く抑え、現在の国債消化余力をどれだけ維持することができるのか。日本の国債管理政策はいよいよ正念場を迎えつつある。
現在、日本政府は800兆円以上の国債を抱えています。政府の2013年度における一般会計予算の規模は93兆円ですが、このうち税収でカバーできているのは43兆円に過ぎません。残りは国債を中心とした政府の借金になります。
以前の国債の借り換え分を含む
毎年約45兆円ずつ国債残高が増えているわけですが、この45兆円という数字と毎年の国債発行総額180兆円という数字には大きな開きがあります。その理由は、新規の国債に加えて、償還を迎えた国債を借り換えている分があるからです。新しい国債を毎年45兆円発行し、さらに以前の国債の借り換え分などを加えると総額で180兆円になるというわけです。
日本の財政問題が議論になる際、日本国債はほとんどが日本人による購入なので大丈夫という声がよく聞かれます。しかし市場関係者の多くが懸念しているのは、日本の財政が完全に破綻してしまうことではなく、借換債も含めた巨額の国債発行に債券市場が耐えられなくなり、スムーズに国債の発行ができなくなる事態の方なのです。
日本国債の多くを日本人が買っているといっても、すでに10%近くが外国人投資家の保有になっています。彼等は何らかのニュースをきっかけに大量に保有分を売ってくる可能性があります。もし国債の消化が疑問視されるような事態となれば、外国人投資家は先物市場でも大量に売りを仕掛けてくるでしょう。そうなった場合、金利が急騰し、日本の金融市場は大混乱に陥ってしまうことになります。
金利が急上昇するとどうなる?
量的緩和策の実施によって、日銀は毎年70兆円の長期国債の購入を行っています。国債発行総額の4割を日銀が購入してくれるわけですから、当面は債券市場で国債の消化余力が問題になることはないと考えられます。
しかし日銀がいつまでも国債購入を続けることができるわけではありません。どこかのタイミングで国債の追加購入を停止し、さらにはその残高を減らす日がやってきます(出口戦略)。その時までに、日本の財政再建のメドが立っていない場合には、市場での金利急騰リスクが一気に高まることになります。
日本は高齢化の進展で社会保障費の支出が増えていきますから、国債の発行残高も増加が見込まれています。今は金利が低いので大丈夫ですが、金利が数%に急騰する事態となれば、最悪のケースでは、利払い額だけで税収を超えてしまう可能性もあるのです。
財政再建を実施するには、(1)経済成長を実現し税収を増加させる、(2)増税する、(3)インフレにする、という3つの選択肢しかありません。今のところ(1)の可能性は極めて低いですから、増税かインフレという形で解決される可能性が高いというのが現実でしょう。
日本の公的債務は計算方法にもよるが、ほぼ1000兆円の水準に達しており、公的債務のGDP比は200%を超えている。これは国際的にも突出した数字であり、このままでは日本の財政は破綻してしまうといわれている。これが消費税を増税する最大の理由である。
一方、日本の公的債務のリスクが強調されるのは増税を主導したい財務省の意向が強く反映されており、世界最大の債権国である日本は、それほど公的債務を気にする必要はないとの見解もある。果たして日本の公的債務は本当に危機的な水準にあるのだろうか?
グロスとネットは違うと言われるが・・・
日本の公的債務を国際比較すると確かにその高さは突出している。図1は主要国にギリシャとスペインを加えた8カ国における政府債務のGDP比を比較したものである(2012年)。日本は238%とダントツのトップで、債務問題で破綻の瀬戸際にあったギリシャよりもはるかに高い。主要国は総じて100%程度であることから日本はほぼ2倍の水準である。
一方この数値はグロス(負債総額)であり、ネット(負債総額から資産を差し引いた純負債)で比較すべきだという議論もある。図1の右側はネットで比較したものである。確かに日本の政府債務GDP比率は134%と大幅に低下し、順位もギリシャと逆転している。だが主要国との比較という意味ではあまり状況は変わっていない。
政府が保有する資産の多くはあまり価値がない
また政府が保有する資産についての解釈も様々だ。政府は現在、600兆円ほどの資産を保有している。主な内訳は有価証券が100兆円、独立行政法人などへの貸付金が140兆円、年金積立金110兆円、固定資産180兆円などである。このうち有価証券の多くは米国債であり流動性も高く資産としては問題ない。だがそれ以外は必ずしも優良な資産とはいえないものも多い。
年金積立金は年金加入者のお金であり、そもそも政府債務と相殺できるものではない。また貸付金も半分が地方公共団体向けであり、残りも多くが独立行政法人向けである。貸し付けの種類によっては、回収が困難であることが予想される。固定資産の多くは道路や堤防、港湾などであり、収益性のある資産ではない。
むやみにグロスの債務残高を強調するのは問題だが、現実に負債から差し引くことができる資産が乏しいのも事実である。後述するが、公的債務問題を財政破綻のリスクと考えるか、金融危機のリスクと捉えるのかで考え方も大きく変わってくる。金融危機のリスクと考える場合には、ネットかグロスかという議論はほとんど意味をなさない。
日本の借金の総額(地方分も含む)は1000兆円に迫る状況で、GDPの2倍以上の水準です。財政破綻と騒がれたギリシャですら1.7倍ですから日本の水準は異常といえます(ちなみにアメリカは日本の半分程度ですが、負債が多すぎると大問題になっています)。
日本政府の毎年の支出は約90兆円ありますが、収入(税収)は43兆円程度しかありません。残りのほとんどは借金(国債)です。年収400万円の人が、500万円近い借金を毎年しているような状況です。国内からの借金であればあまり大した問題ではないという人もいますが、外国人の国債購入者の数は年々増えており、そうもいっていられません。
景気回復がいちばん重要
では日本政府は何に対してこんなにお金を使っているのでしょうか?支出の中で最も多いのは社会保障費で全体の32%を占めています。次に多いのが国債費(過去の借金の金利返済など)で24%を占めます。3番目は地方交付税交付金で、地方に対する補助です(全体の18%)。つまり、年金や医療、過去の借金の返済、地方への援助という削減することが極めて難しい支出項目で全体の75%近くを占めているのです。
この巨額の支出と比べると、防衛費(5%)、公共事業(6%)などかわいいものです。もちろん公共事業のムダや公務員の人件費は重要な課題ですが、財政再建という視点で見れば、些末な問題でしかありません。
政治家はあまり言いたがりませんが、日本が財政再建をするには、年金や医療の水準を大幅に下げるか、あるいは地方への補助を削減するのかという2つの方法しかないのです。ただ好景気が続けば税収が増えるので、これら2つの削減幅を大幅に縮小することが可能です。その意味で景気を回復させることは何よりも重要なことなのです。
これに対して2014年度に発行する国債の総額は181兆5000億円である。41.3兆の新規国債に対して、発行する国債の総額が181.5兆と大きな開きがあるのは、過去に発行した国債の借り換え分があるからである。
つまり国債市場は、毎年新規に発行する国債に加えて、過去に発行した国債の借り換え分も含めて消化しなければならない。国債が安定的に消化できるのかは、新規の国債発行額だけではなく、発行額全体
について考える必要がある。
日本経済が着実に崩壊へ向けて進んでいます。2014年度の国債発行総額が、過去最大の180兆円規模となることが決まりました。この影響で国債金利も上昇しており、12月2日の時点では0.622%だった10年物国債が、12月16日には0.682%にまで上昇。日本政府は「国債の金利が今のままだったら何とか大丈夫」というような考えをしているようですが、今まで積み上がった借金とアベノミクスの影響で、将来は金利が大きく動いてしまう可能性が高いです。
ただですら、1000兆円もの借金があるわけで、このままでは10年以内に日本経済が壊滅的な状態になってしまうかもしれません。また、アベノミクスが始まってから、外国人投資家の取引量が激増している事が非常に気になります。株価の上昇を支えているのも外国人による日本買いですし、何らかの目論見があるはずです。
クレディ・スイスが毎年発表している富に関する報告書「グローバル・ウェルス・レポート」の最新版には、「アベノミクスで日本の富580兆円が消え、日本の富裕層は130万人も激減」したと書いてあります。これからは消費税増税も待ち構えているわけで、日本の富は今以上に縮小していくことになるでしょう。
逆に言えば、ここで減税の決断をすれば、日本の経済を一気に復活させることが出来るかもしれないということです。誰か減税の決断をしてくれる政治家がいれば良いのですが・・・(苦笑)。
*安倍政権はこの状況で米国債を大量に買い込んでいます。
現在、日銀による国債の直接引き受けは法律で禁じられている。だが実際には、国会の決議を経て、毎年日銀による直接引受が行われており、2014年度は約11兆円が直接引き受けされる予定だ。また市中で消化されるといっても、日銀の量的緩和によってその国債はやがて日銀が購入することになるので、市場参加者は安心して国債を購入することができる。つまり実質的には日銀が国債の直接引き受けを行っている状況といってよい。
これは短期的には金利を引き下げ、国債の消化をスムーズにする役割を果たすことになる。だが問題はその後である。日銀は、いつかは量的緩和策を縮小あるいは中止する必要に迫られる。その時の金利動向が日本の財政に極めて大きな影響を与えることになる。
現在、国債の発行残高は800兆円を超えているが、毎年180兆円という巨額の国債発行が続けば、最短の場合、数年ですべての国債が新しく発行したものに入れ替わることになる。この間に金利が急騰する事態となれば、利払い額が一気に増加し、財政が立ちゆかなくなる。
財務省では、こうした事態を避けるため、償還期限の長期化を実施している。2014年度の発行計画において、長期債(30年債)の発行額を1.2兆円増額し、償還期限を6カ月長くする予定である。
日本の財政問題が議論される時には、国債の発行総額や負債のGDPに対する割合いなどがテーマとなることが多い。「国債の保有者の多くは日本人なので大きな問題はない」「日本政府は資産をたくさん保有しているので問題ない」といった議論はその典型といってよい。
国債保有者の10%近くがすでに外国人になっているという事実や、日本政府が保有する資産の多くは実質的に価値がないことを考えれば、財政に大きな問題はないとする見解の多くは根拠が薄い。だがそれにも増して重要なことは、財政問題でもっとも懸念されるのは、負債の総額などではなく、金利の急騰による混乱であるという点だ。
短期間で金利が急騰すれば、金融機関の経営に重大な影響が生じるほか、長期的には利払い額が増加し、従来通りの国家予算が成立しなくなってしまう。財政が完全に破綻していなくても、このような事態になっただけで、日本にとっては致命的な損失である。
金利を低く抑え、現在の国債消化余力をどれだけ維持することができるのか。日本の国債管理政策はいよいよ正念場を迎えつつある。
現在、日本政府は800兆円以上の国債を抱えています。政府の2013年度における一般会計予算の規模は93兆円ですが、このうち税収でカバーできているのは43兆円に過ぎません。残りは国債を中心とした政府の借金になります。
以前の国債の借り換え分を含む
毎年約45兆円ずつ国債残高が増えているわけですが、この45兆円という数字と毎年の国債発行総額180兆円という数字には大きな開きがあります。その理由は、新規の国債に加えて、償還を迎えた国債を借り換えている分があるからです。新しい国債を毎年45兆円発行し、さらに以前の国債の借り換え分などを加えると総額で180兆円になるというわけです。
日本の財政問題が議論になる際、日本国債はほとんどが日本人による購入なので大丈夫という声がよく聞かれます。しかし市場関係者の多くが懸念しているのは、日本の財政が完全に破綻してしまうことではなく、借換債も含めた巨額の国債発行に債券市場が耐えられなくなり、スムーズに国債の発行ができなくなる事態の方なのです。
日本国債の多くを日本人が買っているといっても、すでに10%近くが外国人投資家の保有になっています。彼等は何らかのニュースをきっかけに大量に保有分を売ってくる可能性があります。もし国債の消化が疑問視されるような事態となれば、外国人投資家は先物市場でも大量に売りを仕掛けてくるでしょう。そうなった場合、金利が急騰し、日本の金融市場は大混乱に陥ってしまうことになります。
金利が急上昇するとどうなる?
量的緩和策の実施によって、日銀は毎年70兆円の長期国債の購入を行っています。国債発行総額の4割を日銀が購入してくれるわけですから、当面は債券市場で国債の消化余力が問題になることはないと考えられます。
しかし日銀がいつまでも国債購入を続けることができるわけではありません。どこかのタイミングで国債の追加購入を停止し、さらにはその残高を減らす日がやってきます(出口戦略)。その時までに、日本の財政再建のメドが立っていない場合には、市場での金利急騰リスクが一気に高まることになります。
日本は高齢化の進展で社会保障費の支出が増えていきますから、国債の発行残高も増加が見込まれています。今は金利が低いので大丈夫ですが、金利が数%に急騰する事態となれば、最悪のケースでは、利払い額だけで税収を超えてしまう可能性もあるのです。
財政再建を実施するには、(1)経済成長を実現し税収を増加させる、(2)増税する、(3)インフレにする、という3つの選択肢しかありません。今のところ(1)の可能性は極めて低いですから、増税かインフレという形で解決される可能性が高いというのが現実でしょう。
日本の公的債務は計算方法にもよるが、ほぼ1000兆円の水準に達しており、公的債務のGDP比は200%を超えている。これは国際的にも突出した数字であり、このままでは日本の財政は破綻してしまうといわれている。これが消費税を増税する最大の理由である。
一方、日本の公的債務のリスクが強調されるのは増税を主導したい財務省の意向が強く反映されており、世界最大の債権国である日本は、それほど公的債務を気にする必要はないとの見解もある。果たして日本の公的債務は本当に危機的な水準にあるのだろうか?
グロスとネットは違うと言われるが・・・
日本の公的債務を国際比較すると確かにその高さは突出している。図1は主要国にギリシャとスペインを加えた8カ国における政府債務のGDP比を比較したものである(2012年)。日本は238%とダントツのトップで、債務問題で破綻の瀬戸際にあったギリシャよりもはるかに高い。主要国は総じて100%程度であることから日本はほぼ2倍の水準である。
一方この数値はグロス(負債総額)であり、ネット(負債総額から資産を差し引いた純負債)で比較すべきだという議論もある。図1の右側はネットで比較したものである。確かに日本の政府債務GDP比率は134%と大幅に低下し、順位もギリシャと逆転している。だが主要国との比較という意味ではあまり状況は変わっていない。
政府が保有する資産の多くはあまり価値がない
また政府が保有する資産についての解釈も様々だ。政府は現在、600兆円ほどの資産を保有している。主な内訳は有価証券が100兆円、独立行政法人などへの貸付金が140兆円、年金積立金110兆円、固定資産180兆円などである。このうち有価証券の多くは米国債であり流動性も高く資産としては問題ない。だがそれ以外は必ずしも優良な資産とはいえないものも多い。
年金積立金は年金加入者のお金であり、そもそも政府債務と相殺できるものではない。また貸付金も半分が地方公共団体向けであり、残りも多くが独立行政法人向けである。貸し付けの種類によっては、回収が困難であることが予想される。固定資産の多くは道路や堤防、港湾などであり、収益性のある資産ではない。
むやみにグロスの債務残高を強調するのは問題だが、現実に負債から差し引くことができる資産が乏しいのも事実である。後述するが、公的債務問題を財政破綻のリスクと考えるか、金融危機のリスクと捉えるのかで考え方も大きく変わってくる。金融危機のリスクと考える場合には、ネットかグロスかという議論はほとんど意味をなさない。
日本の借金の総額(地方分も含む)は1000兆円に迫る状況で、GDPの2倍以上の水準です。財政破綻と騒がれたギリシャですら1.7倍ですから日本の水準は異常といえます(ちなみにアメリカは日本の半分程度ですが、負債が多すぎると大問題になっています)。
日本政府の毎年の支出は約90兆円ありますが、収入(税収)は43兆円程度しかありません。残りのほとんどは借金(国債)です。年収400万円の人が、500万円近い借金を毎年しているような状況です。国内からの借金であればあまり大した問題ではないという人もいますが、外国人の国債購入者の数は年々増えており、そうもいっていられません。
景気回復がいちばん重要
では日本政府は何に対してこんなにお金を使っているのでしょうか?支出の中で最も多いのは社会保障費で全体の32%を占めています。次に多いのが国債費(過去の借金の金利返済など)で24%を占めます。3番目は地方交付税交付金で、地方に対する補助です(全体の18%)。つまり、年金や医療、過去の借金の返済、地方への援助という削減することが極めて難しい支出項目で全体の75%近くを占めているのです。
この巨額の支出と比べると、防衛費(5%)、公共事業(6%)などかわいいものです。もちろん公共事業のムダや公務員の人件費は重要な課題ですが、財政再建という視点で見れば、些末な問題でしかありません。
政治家はあまり言いたがりませんが、日本が財政再建をするには、年金や医療の水準を大幅に下げるか、あるいは地方への補助を削減するのかという2つの方法しかないのです。ただ好景気が続けば税収が増えるので、これら2つの削減幅を大幅に縮小することが可能です。その意味で景気を回復させることは何よりも重要なことなのです。