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東日本大震災の前に書かれた本として、原発事故を予見するような部分はあるシュミレーションは細かくて3.11以前にかかれたとは思えないある意味予知できていたかのような仕上がりですね。

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本書の舞台は中部地方ですが、地震・津波・原発被害、まるで311東北大震災を予見するかのような作品。

東海・東南海地震のシュミレーション小説としても一読の価値あり。

地震、噴火、台風、凶悪犯罪、テロ、地球温暖化、異常気象。世紀の初めという のに、週刊誌の表紙には世紀末的見出しが並んでいます。「ミステリーの館」読者の 皆さん、お元気ですか? 石黒耀です。


東海地震、東南海地震の同時発生…浜岡原発の事故

  世界の1パーセントの国土に、21パーセントの地震(マグニチュード6以 上)。東京の自然災害危険度はニューヨークの17倍。日本で暮らすということは、 実はそれだけで、結構リスキィな行為なんです。まして政治は三流、行政は傲慢、公 的借金は年間税収の約20倍となると、大災害時に国が被災者をどこまで支援してく れるか怪しいですね。せっせと保険に入って自分で身を守るしかない?

 しかし、法律上、大規模災害時には保険会社の免責が認められていますから、それ もあてになりません。暗くなっちゃいますね。この世は、実はホラーで成り立ってい るんです。

 さて、前作の『死都日本』は火山の話でしたが、『震災列島』は地震の話です。も っとも、難しい地震理論の話ではありません。地震を使った逆密室完全犯罪に挑む親 子の痛快ミステリーです。いつ起こるか分からない地震を、どうやって利用するの か? 白昼堂々、人口密集地で、しかも警察官の目前で行われる完全犯罪は成立する のか? はたまた、愛知県は日本の首府になれるのか? 700兆円強奪は成功する のか? 笑いと涙と名古屋情報満載の人情冒険活劇ミステリー。

 そして、読み終わると、ちょっぴり地震に詳しくなっている。それが『震災列島』 のコンセプトです。

  日本中どこにでもいる市井の人達が、どこでも起こり得る災難に遭遇して、どう 行動し、何を見出だすか。このお話は、日本で暮らしている限り、貴方もやがて体験 する物語かもしれません。主人公達の悪戦苦闘を、彼らと同じ目線で見守ってやって 下されば、作者として至上の喜びです。ぜひ、御一読下さい。

読んで面白くなかったら? その時は、天災に遭ったと思って諦めましょう(笑)。

                               <石黒耀>

今回の震災で関係者はみんな口を揃えて「想定外」と言いますが、この小説を読むと、ちゃんと想定内の震災として考えてた人もいたんだっていうのが実感です。実際に起きた後に「ああだこうだ」と叫ぶ批評家はいなくてよく、小説に書いて警鐘を鳴らしている実践家=アクションする人がいかにすごいかが分かります。

小説を読んでも、震災が起きたときの対策は分かりませんでしたが、少なくとも大震災に対する危機感は芽生えました。起きてしまったことをやり直すことはできませんが、これで終わりではないし、震災列島たる日本の上に住んでいる以上、今後もずっとつきあわなければならない事実を考える良い機会になりました。三陸沖地震、東海地震、東南海地震、南海地震、火山。わずか1%にも満たない島国で世界の大きな震災の20%を占める日本。僕たちは間違いなく凄まじい場所に住んでいるのです。

どちらの小説も、自然の怖さを神に喩えています。イザナギ・イザナミ伝説は火山になぞらえると、本当につじつまがあって、大昔の人が自然に対していかに畏怖をもっていたのかが分かります。僕は無信教ですが、自然=神という考え方にはとても共感を覚えました。日本には唯一神がいません。いるのは八百万の神々。それはまるで、畏れ敬う存在としての神々が僕たちのまわりにいつもいるということです。

決して宗教として考える必要はないですが、神々に壊され、そして神々に守られている、このすばらしい日本を大切にし、もっともっと良い国にしていきたい。

東日本大震災の前に書かれた本で、東海、東南海地震を想定した内容だけど、まるで福島原発事故を予測していたかのような、そして津波の被害がどんなものであるかをある程度イメージできた本。東日本大震災を経験した今となっては、決して荒唐無稽な描写ではないはず。

最新の研究データに基づく大災害小説。新潟県中越地震、東日本大震災前に上梓されていたことに驚き。大地に畏れを抱き、地球の声に耳を澄まして生活するのが、地変国家・日本に生きる者の正しい暮らし方。いざというとき、人は、生き様を問われる。p.11歴史は繰り返すという。地殻の安定した国では人文学的な意味だが、日本では違う。p.480真理にのっとっていない活動ほど、嘘が多くなる。p.572自浄機能が不完全な組織は、必ず腐る。

2010年に書かれた本ということには驚かされます

東海・東南海地震の連続発生を予測し、地震による大津波を利用して、娘の敵を討復讐劇。震災の際の状況をシュミレーションのストーリーでは無いです。 このタイトルでは別なストーリーを想像してしまうと思います。 ただ地震についての説明の部分がかなり詳しいのでストーリーを遮る部分がありすが、そこがリアリティさを出しています。


ズンズン先を読みたくなる構成がしっかりしたストーリーだった。ヤクザとの抗争といった一見チープな感じに思えたが、読み進めていくうちに意外に奥が深いなと。 地震発生時の描写、原発での状況表現もリアリティ抜群で、阪神淡路大震災、東日本大震災の惨劇を風化させないために、あまり本を読まない人にも勧めたい一冊です。

災害パニックものと思って読みましたが、災害を利用した復讐物語でした。ただ、地震、津波、原発の件、先日の大震災を予想、予見した物語だったんですね。“地震の巣の上に、こんな過密都市を作るべきではない。巨大地震の震源の真ん中で原発を稼働させるべきではない。こんな不安定な地盤の国に、大量の放射性廃棄物を貯めるべきではない”のである。

東日本大震災発生前から読み始めました。震災を利用して孫(娘)の仇を討つ話ですが、東海・東南海地震を考察した秀作と思います。また、場所は違いますが原発の被害状況は今回の福島第1原発と酷似していることで、筆者の力量には感心。


ここで「石黒」さんの小説、『震災列島』で起こる地震を簡単にご紹介しておきましょう。これは「複合地震」と呼ばれるもので、最近よく話題になる、「静岡県・御前崎沖」を震源とする「東海地震」と「紀伊半島沖」を震源とする「東南海地震」、そして「四国」の南側の海域で起こる「南海地震」という、大きな地震が相次いでやってくるというものなんです。しかも歴史上、これから起こるといわれている「東海地震」と「東南海地震」は、おおむねセットでやってくるため、江戸時代までは、この2つを分けずに、ひっくるめて“東海地震”と呼んでいたそうです。
 細かいメカニズムには、諸説あるので、ここでは触れませんが、「関東地方」の沿岸から「日本列島」に沿って「沖縄付近」まで、「関東以西」の「太平洋側」は、「フィリピン海プレート」のちょうど境目にあり、もしこの3つの大きな「複合地震」が起こったら、大きな被害が出るのは避けられない上、列島に近い海域で起こるこの地震は、津波の被害も心配されているんです。

★    ★    ★
「東海地震の場合も大きな津波が起きます。この間のスマトラ沖の地震の映像があちこちで流れていましたが、あのクラスの津波が来ます。大体、静岡の焼津辺りだと6mから8m。これは沖合の話で、沿岸だともっと大きくなる可能性がありますね。特に地形的に狭まっているところです」

●私は「震災列島」の中で気になったのが、「東海地震前後に富士山の活動が活発化して、同時期に噴火する可能性がある」と書いてあったことなんですが、詳しく説明していただけますか?

「はい。おそらく、今回の想定東海地震のあと何年かすると、富士山が噴火するんじゃないかと思っているんです。ただし、「死都日本」の時の珪長質(けいちょうしつ)マグマといいまして、粘っこいマグマと違って、富士山はサッと流れるタイプなので、ああいう大爆発は起こらないんですね」

●「死都日本」ほどではないんですね?

「はい。ただし、じゃあ物凄く小さなものかというとその保証もなくて、過去には富士山は大変な爆発を起こしたこともあるんです。例えば、富士宮辺りは火砕流とか、崩れた富士山の山体で埋まってしまう可能性は十分にあります」

●色々な意味で東海地震というのは、日本列島にとって怖いものになりますね。

「“人間にとっては怖い”というべきで(笑)、日本列島にとっては、これは日本を作ってきた力なんですね。地震と噴火がなかったら、日本列島ってありえなかったわけなんですね。日本列島にとっては、ありがたい力ということになります」

●そこに住む人間にとって・・・?

「怖いというだけの話です」

原発を造ったのが最大の間違い

●「震災列島」の中で石黒さんが危惧していたのは原子力発電所。静岡県御前崎にある浜岡原発なんですが、原発震災になる可能性が高いそうですね?

「かなり高いです。まず、耐震基準が非常に甘い基準で作られたんですね。特に1号機、2号機は相当ひどいですね。で、当時から大地震が起こることは分かっていたんですけどね。まぁ、造っちゃえってことで造ってしまったんです(笑)。当時はこのくらいの強さで造っておけば、十分地震は切り抜けられるといわれていたのが、今から見ると全然大甘でですね、しかも経年変化、劣化というのがありまして、本来は1号機、2号機辺りは廃棄しないといけない時間が経っているのに、まだ使っているんですね(笑)。で、使っているだけでも危ないのに、そこへ地震が来るとまずもたないだろうというのが、比較的悲観的な地震学者さんたちの考え方ですね」

●2月に衆議院予算委員会の公聴会に、29年前に東海地震説を最初に唱えた神戸大学の石橋教授が出席して、浜岡原発の危険性を指摘されて話題になりましたが、地震学者の方が国会で警告するというのは非常に異例なことなんですか?

「はい。異例ですね。これが異例だというのが、私は恥ずかしいです(笑)。いかに科学的事実を無視して今まで国の運営がなされてきたかという証拠みたいなものですね。本当は、ずいぶん前からいわれていたんですけど、なかなか浸透しなかったですね」

●火山や地震が多く、震災国といわれている日本で原子力発電が行なわれています。原発は安全だという方がいますが、石黒さんの本には「原発は冷却加熱に大量のエネルギーを使うので、決して地球温暖化防止に役立っているとはいえない」と書いてありました。

「はい。全く役立っておりません」

●しかも、浜岡原発は偶然、揺れの大きい場所に設置されている。

「日本で原子力発電を選択したのは間違いだとハッキリ言えます。別な道があったはずです」

●ここまで進んできてしまいましたからね。

「そこで間違いを認めるかどうかですよね。自然科学というのは答えが実は自然の中にあるので、それを見つけさえすれば正解はすぐに出てくるんです。応用科学のほうは違うんですね。これは、明日新しい技術が開発されると嘘になっちゃうことがあるんですね。そこの判定基準がしっかりしていないからおかしなことになってきたわけで、答えは自然の中にあるということさえキッチリすれば、こんなところで道を踏み外すことはなかったんです。これから道を変えることも出来るんです。大体これだけ役に立っていないスギが日本にあるわけですからね。スギの木発電するべきですね(笑)」

●スギの木発電! 新しい発想ですね(笑)。

「いやいや(笑)、これは本気で言っているんです。スギの木ってなぜ薪に使えないかというと、油が多すぎるんですよ。ですから煙突の中にすすがいっぱい付くんですね。 実は、あれまで完全燃焼させるとカロリーが高いんですよ。で、あれだけスギに補助金を使ったのは間違いだとまず認めて、じゃあどうするかといった時に、政府かあるいは電力会社がスギを買い入れて発電に利用すれば世話をする人が出てくる。すると、山の保水力が高まる。すると、ダムを造らなくて済む。色々な問題が一気に片付いてしまうんですね。つまり原発を造ったのが最大の間違いだったんです」

●原発以前に、自然にもっと目を向ければよかったんですね。

「ええ。答えはあったはずなんです」

●小説の中で「メタン・ハイドレート層の大規模破壊が起こって、大変な被害をもたらす」というくだりがあるんですが、この「メタン・ハイドレート層」について説明していただけますか?

「ちょうど東海地震とか、東南海地震とか南海地震が起こる場所に限って、海底の地面の深いところにメタンガスが水と反応してシャーベットのような層を造っているんです。で、それを取り出して常温にすると、ボコボコとメタンガスが気化して湧いてきます。これは、日本が使うエネルギーの200年分くらいが、さっきいった3カ所を合わせると、埋まっているといわれていまして、大変なエネルギー源なんです。ところが、うっかり突くと危なくて、暴噴(ぼうふん)という現象を起こすんです」

●暴噴ですか?

「ええ。暴れるに噴きだすで暴噴と読むんですけど、これが1度起こると連鎖的に繋がっているものですから、横へ横へと広がっていって止まらなくなる恐れがあるんです。実際、過去に暴噴が起こった跡もありまして、その時に気候の大変動が起こってしまうんですね」

●今、全く別のところで騒がれている気候の大変動ですね。それがここで繋がってきてしまうわけですね。

「ええ。ですから、その開発は物凄く慎重にやらないとまずいですね」

●ボロボロなんですね。

「ボロボロっていうか、我々はそういう国に住んでいるんですよ(笑)」

日本を知るところから災害対策が始まる

石黒耀さん
●私なんかは大きな地震というと、大都会に住んでいて感じるのがビルが多いこと。耐震は進んでいると聞きますが、シミュレーションのテレビなどを見ていると、倒れない代わりにすごく揺れています。大きく揺れたらビル同士がぶつかってしまうことってないんですか?

「神戸の地震の時も隣のビルとぶつかってしまうということが結構あったんです。だけど、あの時は地震が1秒に1回くらいのサイクルだったので、そこまでひどくはなかったんですね。東京なんかには1秒に10数回のサイクルで地震がきます。そうすると、今、盛んに建てている超高層ビルっていうのは、運が悪いとちょうどその周期にピッタリあって、非常に大きなブランコのような動き方をして、ほとんどの場合、隣の超高層ビルとの距離は離れているんですけど、例えば、同じ敷地の中に古いビルと超高層の新しいビルが建っているようなところっていうのは、意外に間が1mとか2mしかないような場所が結構あるんですね。そういうのはぶつかる可能性が結構ありまして、そういうぶつかったところで鉄骨材に亀裂が生じて、崩れていくということは有り得ますし、何よりも一番の問題は手抜き工事がないかということですね。これは、絶対あります」

●あと、大地震がきた時に間接的な被害もかなりありますよね。

「まず、金額的なことからいいますと、兵庫県南部地震の時は建物が倒れたなどの直接的な被害が10兆円だといわれているんですね。それから、銀行が倒産したので、そこが融資していた会社がつぶれたとか、労働力が地方に離れてしまって働けなくなったから生産力が落ちたとか、間接的なものが出てきますね。それがどのくらいだったか、そろばんをはじいてみると、人によって違うんですけど6兆円から9兆円といわれているんです。つまり、直接被害と近い額の被害が出たんですね。それに当てはめてみると、東海地震の時もおそらく50兆円くらいは出るんじゃないかと。で、もっと増える可能性も十分あります。というのは、50兆というと年間の国の税収を上回ってしまうんですね。特に、経済というのは日本中を一瞬で巡りますからね。
 ですから、東海地方の経済だけがダメになって済むという問題ではなくて、国の経済が破綻していくと。例えば今、保険料率が3割ですけど、これを8割にしちゃえってなれば、我々も病院に行くのをやめようかってなっちゃいますよね。そうすると、本来だったら治っていた病気も見つからなくてそこで死んでしまうと。それから、中小企業向けにかなり有利な公的貸出制度なんかもやめちゃえと。すると、バタバタと中小企業が倒れていくと。あと、浮浪者が増える、社会が不安定になると。それも実は地震の被害なんですね。
 これを端的に物語るのが、大正時代に関東大震災というのがありましたよね。あのあと、物凄い不況がきたんですよ。銀行がバタバタ倒れました。そこで国は何をしたかというと、軍の予算を減らそうと。で、2.26事件が起こってしまうわけです。それを抑えたのがまた軍なので、軍の発言力が一気に高まってしまうわけですね。で、軍主導で植民地を獲得して、植民地経営で乗り切れという方向に走ったので、太平洋戦争になっちゃったんですね。で、挙げ句に何人死んだかというと、中国朝鮮合わせて1700万人死んだというんですね。で、関東大震災だけなら10万人だけで済んでいたはずなんです。そこで済まないのが、大被害が出たときの恐ろしいところなんですね」

●日本は自然が豊かであるがゆえに、自然の厳しさも身をもって感じさせられるんですね。私たちは、そのことを知ったうえで生活しなければいけませんね。

「結局、日本のことを知っているかどうかということですよね」

●我々、日本人は知らなすぎですよね。

「と、思うんですよ」

3作目では日本が消滅!?

●石黒さんは「死都日本」「震災列島」とお書きになっていますが、この先の予定を教えて下さい。

「僕が考えているのは、実はこれ3部構成でして、火山、地震ときて最後に一遍、日本を全部潰してしまおうかという(笑)」

●そうきましたか(笑)。

「で、日本に誰も住めなくなったときに、日本人が果たす役割は一体何なのだろうというのを書きたいです。小松左京さんの『日本沈没』という非常に有名な作品がありますが、あの作品はみなさんが世界中に散らばるところで終わっていたんですね。僕は、その先が問題じゃないかと思うんですね」

●確かに私もあの先が気になりました。

「ただ散らばってダメになるのか、本当に日本人って滅亡してくれてよかったと思っているのか、そこが分かれ目だと思います」

●それが3部作の最終章になるんですね?

「それはあんまりだという説もあって(笑)、ちょっと一休みして違う方面の話を書けという声もあるので・・・」

●石黒さんは、いずれは日本が消滅してしまうという小説が最終的には書かれるんですね?

「書きたいとは思っているのですが・・・(笑)」

●(笑)。今後も私たちがぬるま湯に浸からないように、警鐘を鳴らすような小説を書き続けていただきたいと思います。今、一番注意すべきは東海地震ですね?

「そこは難しいですね。ここは東京だということを考えると、むしろ、首都直下地震のほうが被害が大きいですし、被害額も、東海地震で浜岡原発がつぶれなかったときと比べると、首都直下でマグニチュード7.3程度が起こるほうが遥かに被害が大きいんですね。で、国がひっくり返る可能性としても、首都機能がありますから、首都直下のほうが危ないことは危ないです。ただ、浜岡原発がメルトダウンすると、これまた首都も全部ダメになりますので、さぁどっちが危ないでしょうね(笑)」

●(笑)。一概には言えないんですね。

「なかなか難しいです」

●いずれにしても、生活の仕方から国のあり方まで考え直さなきゃならないということなんですね。

「そうです。それが基本ですね」

●その詳しくは「震災列島」をお読みになって、みなさんの頭の中でシミュレートしていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

この本で目についたことは、ひたすら日本の国策が批判されていたところです。
公共事業と称して土建屋に地盤の緩いところに原発を建てさせたりするなどの行為を、かなり鋭く批判していました。
とりあえず、日本のような地盤の弱いところに、無責任に建物を建てていく行政のありかただとか、
あるいは、大手ゼネコンとずぶずぶになっている政治家だとか、
無策な都市政策だとか…などなどが、批判の対象となっていました。

読後雑感~「震災列島」(石黒耀)
<< 作成日時 : 2012/01/07 00:44 >>
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★物語の内容に触れている部分があります。★

想定東海地震(と、連動する東南海地震)について、主に名古屋を舞台に扱った小説。

なのだが、物語の本筋は、それを利用した私的復讐劇に据えられていて、読後に振り替えると、水増し感がぬぐえない。いくつかそう言った書評を事前に読んでいたこと、巨大地震に先立つ地質学的な活動期に世が乱れるという、著者の歴史観が冒頭から語られているので、読んでいる最中はそれほど違和感がなかったのだが、書名から期待される災害シミュレーション小説としては中身が薄いように思う。

今作では、前作「死都日本」では描かれなかった原発事故が扱われている。ただ、前作同様、著者の良心というべきか希望というべきか、作中では浜岡原発の事故は、運転員の決死の作業により辛くも核燃料の飛散はまぬかれている。

新潟県中越地震より前の時点でここまで詳細に描いたのは驚きだが、巨大地震、津波、原発事故など、事象としては東日本大震災と重なる部分が多いため、震災を目の当たりにした目からは、想定が甘いと思えてしまう点がやや残念だ。言い換えると、まだ起こっていない事象を想定するのはそれだけ難しいということで、防災において「想定」に基づくことの危うさを改めて感じさせられる。実際の東日本大震災のj被害、特に津波と原発事故については本書を上回ったことを考えると、これから起こる東海、東南海地震も、いくつもの想定外をもたらすと思っておいたほうがよいかもしれない。本書では東海地震の事前予知が達成され、主人公はシミュレーションによる津波到達予想時刻を駆使して罠を仕掛けるが、予知・予測がそんなにうまくいくという設定も、大震災後となってはやや迫力に欠ける。

一方、東日本大震災ではあまり見られなかった事象、たとえば高層ビルの長周期地震動による崩壊、放置車両による都市道路での火災については、新鮮に思える。可能性としては示されている事象が、実際に起こったら、居合わせた人間がどれほどの危険を味わうかを考える上で興味深い。

本書で扱われている東海地震、東南海地震、原発事故が起きた場合の対応(起こさないための対応ではなく)は、どのように変わったか。東海地震については、予知できないことを前提とした対応を考える必要があると思う。原発事故については、福島第一原発事故ではSPEEDIを活用できなかったとされたが、万一放射能漏れが起こった場合の汚染予想区域について、いっそ毎日、向こう48時間くらいの「予報」を垂れ流しにしたらどうかと思う。


震災列島 石黒耀 講談社
ISBN4-06-212608-7 1,800円 2004年10月

目次
プロローグ
第1章 警報
第2章 策謀
第3章 戦雲
第4章 敵陣
第5章 迷走
第6章 安息日
第7章 奇襲
第8章 衝撃
第9章 特攻
第10章 反攻計画
第11章 東海地震戦争
第12章 テロリスト
第13章 破壊工作
第14章 地下要塞
第15章 開戦前夜
第16章 出撃
第17章 潰乱
第18章 開戦
第19章 決戦
エピローグ

〔あらすじ〕

 12月18日、迫り来る東海地震の前兆が数多く現れ、政府(早川首相)ははじめて「警戒宣言」を出す。しかし、起きたのはプレート境界型ではなく、陸に向かって枝分かれした断層が動いたもの、規模もM6.8だった。「空振り」、それでも莫大な被害が出た。浜岡原発4号炉も軽微な損傷を受けた。

 そのとき名古屋市塩見区上汐町の自宅に向かうため、高速道路上でこの地震を体験したのが明石真人とその父善蔵であった。二人は家族営業の地質調査屋(ボーリング屋)であった。

 1月、首相は本当の東海地震後を考え、密かに通貨交換(デフレ)の準備を始める。

 翌年、2月終わりから上汐町は企業舎弟「阿布里住宅」の猛烈な嫌がらせと地上げ攻勢にあっていた。3月22日、町内会長である善蔵は「阿布里住宅」に抗議に出かける。

 4月2日、真人は娘友紀とその恋人千葉巡査長、妻孝子と鉱石取りに出かける。つかの間の楽しい一日。

 4月3日、埼玉南部でM6.9の地震が起き、さいたま市は大打撃を受ける。

 4月4日、友紀が阿布里組の手のものに誘拐、陵辱される。4月6日、見つかった友紀は結局自殺する。

 一人で「阿布里住宅」に殴り込んだ、善蔵は逆に逮捕されてしまう。現場に登場したのは、上汐地区の保安を担当する黒澤警部補であった。一方千葉の努力で、「阿布里住宅」の裏もわかってくる。名古屋進出を狙う関西の長村連合、さらにその裏には自分たちも投票していた小鶴居衆議院議員、さらに沼井島建設、彼らが首都移転にからみ上汐地区が経済活性特別区に指定されることを読んで、巨大な利権獲得を目指していたのだ。そして、彼らは東海地震のさいにこのあたりを焼き払おうと、ガソリンをため込んでいた。

 真人も東海地震を利用して娘の仇を討つ計画を立てる。4月16日に「阿布里住宅」からの示談金(娘を誘拐したのが「もと」社員ということで)1,000万円が提示される。真人はこれを活動資金にすることにする。善蔵も釈放された。かつて、水産関係の道具販売をしていた自宅地下室を〔要塞〕に変え、そこに「阿布里住宅」のヤクザを集め、東海地震の際に発生する津浪に飲み込ませるというものである。

 4月17日から具体的な活動に入る。北朝鮮の地下核実験のニュースもはいる。5月18日に4月3日の埼玉県南部地震の際の京葉コンビナートの火災は、フィリピンのタマリン聖戦機構のテロというニュースも入る。フィリピンには自衛隊が「治安維持」のために出動していた。

 真人や善蔵はボウガンの特訓やら、鉄パイプ爆弾の製造・実験などを行う。

 7月26日、黒澤警部補が警告に来る。7月31日、孝子を預けている仙台の実家に挨拶に行く。

 8月に入ると日本が競争状態なってくる。8月13日の友紀の初盆に千葉巡査長もやってきて、仲間に入れて欲しいと頼まれるが断る。

 8月31日東海地震の「注意情報」が出される。さらにそれが9時16分に「警戒宣言」に変わる。そして、ついに東海地震、さらには東南海地震が起る。メタンハイドレート層の大規模崩壊も起こる。津波が襲いはじめた。

 浜岡原発は運転を停止しようとしていた。上汐町の住民でもあった新見所長は、事故を起こした3号炉の措置のために死を覚悟した。

 警戒宣言が出され、混乱する名古屋の交通整理にかり出されていた千葉巡査長も地震に見舞われる。ビルからはさまざまなものが降ってくる。真人・善蔵の応援には行けそうもない。

 とうとう真人・善蔵も戦闘を開始する。ガソリンをため込んだ阿布里住宅に、ランクルで突っ込み、火を放つ。社長室から脱出しようとした男をボウガンで打つ。ヤクザ達も反撃をする。真人・善蔵は家に逃げる。そこには黒澤警部もいた。

 地下室のシェルターに籠もった真人・善蔵は、ヤクザ達を津波に巻き込ませることに成功する。

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