心の柱となった藤川の存在
青山学院大の藤川(右)は9区の歴代2位の記録となる1時間8分4秒で走り、強さを見せた【写真:アフロスポーツ】――復路のレースに限ると、どの選手が印象に残りましたか?
やはり9区の青山学院大・藤川選手ですね。(昨年11月の)世田谷246ハーフマラソン大会で藤川選手が優勝していますが、その自信もあったのだと思います。もちろん5区で神野選手がヒーローになったように見えますが、藤川選手も9区区間歴代2位という記録で走っていますので、非常に強い選手だったと思いました。青山学院大にとって、心の柱になっていたと思います。
早稲田大の三浦雅裕選手も6区の山下りで良い走りをしていました。往路で前のチームと差がついてしまった中で、復路で崩れても仕方がないかと思いますが、そこをしっかり三浦選手が走ったことで、なんとか5位で持ちこたえたと思います。復路の総合タイムを見ても復路2位の駒澤大と20秒程度しか変わりませんし。三浦選手のスタートダッシュで意地を見せられましたね。
駒澤大では8区の大塚祥平選手、9区の其田健也選手も来年につながる良い走りをしたと思います。簡単には崩れないというところを見せました。
――そうなるとやはり、来年も青山学院大、駒澤大は抜きん出た存在になりそうですが
青山学院大はもちろん強いと思います。駒澤大も大塚選手、其田選手、7区を走った西山雄介選手もいますし、往路を走った中谷圭佑、工藤有生がいます。5区の馬場選手も次回は平地を走るかもしれません。その中で先ほど言いました2区、4区、7区、9区で区間賞を取れる強さがあれば、勝てるのではないでしょうか。
これからは、今大会で青山学院大が奪っていった区間賞を、どれだけ他の大学が奪い返せるかですね。東洋大も服部勇馬、弾馬の兄弟がいますし。青山学院大を見ながら、強いチームを作り直すことが課題だと思います。
村山兄弟(謙太/駒澤大、紘太/城西大)の卒業で大学長距離界のイメージが変わると思いますが、そこで青山学院大の時代になることを阻止できるかどうかですね。 シード権の獲得を見越したチーム作りを
――シード権争いに目を向けると、山梨学院大、大東文化大などがシード権を獲得し、帝京大、順天堂大などがあと一歩のところでシード権を逃しました。シード権争いの明暗を分けた要因は何だと思いますか?
山梨学院大は1区、2区でブレーキ、またエースのエノック・オムワンバ選手が欠場ということもありましたが、それでもシード権を獲得できました。結局のところ、力が均衡している中で、ミスをしても取り返せる部分まで残れるか、それとも中央大のように最後に致命的なブレーキをしてしまうかの違いはありますね。
トップ争いにも言えますが、いまの大学長距離界では1万メートルの持ちタイムが28分台というのはたくさんいて、27分台がトップになっています。それぞれのチームが28分の持ちタイムを持っている選手を抱えることになりますが、その中でどれだけ自分の力を発揮できるか、ミスをしてもそれを取り返せる選手がいたかどうかだと思います。
――そのあたりが駅伝のうまさという部分でしょうか?
シード落ちをしてしまった神奈川大もそうですが、持ちタイムが28分台という選手を数人抱えていても崩れてしまうことはあります。オーダーにもよりますが、きちんと10人がそれぞれの力を発揮して、ミスをしても補えるかどうか、トータルで戦えるかどうかですね。
次回大会は中央大、日本大、日本体育大、順天堂大といった古豪が予選会に回ります。これらのチームが駅伝を知らない、ということはないのですが、空回りしたり、かみ合わなかったことが差だったと思います。ただ、ひとことで明暗を分けるのはどこかと言うのはむずかしいですね。
予選会を突破することは、今回は創価大も成功しましたし、次回は東京国際大あたりもしっかり狙ってくると思います。ただチーム作りをする中で、本戦を見据えた組み方をしないと、箱根で上位に上がるのは難しいと思います。とりあえず持ちタイムが28分台の選手をそろえれば良いというわけではないので。
――やはり箱根駅伝本番は、持ちタイムだけでは力が図れないと?
優勝争いもそうですが、一番難しい区間、ハイリスクな区間が5区、次が下りの6区、さらに距離の長い2区、9区、そして遊行寺坂がある8区の順で難易度があると思います。1区に関しては、高速レースになることはありますが、通常のハーフマラソンと距離的にも変わらないし、コースも同じなので、そこまでリスクは高くなく、大きなブレーキとはなりません。
その中で、予選会だけを見据えると、このハイリスク区間の難易度が高いんですよね。特に復路は8区、9区で差が広がります。そのリスクを考え、本戦に合わせてトレーニングできるかどうかが、やはり大事かと思います。
第91回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、2日の往路、3日の復路ともに青山学院大が強さを見せて、10時間49分27秒という大記録を打ちたて、史上16校目となる優勝校となった。
青山学院大は往路で2位の明治大と4分59秒差をつけてゴールし、復路での大きなアドバンテージを持ってスタートした。6区の村井駿(3年)が5分42秒、7区の小椋裕介(3年)が8分21秒、8区の高橋宗司(4年)が8分35秒と順調に2位との差を広げる。復路のエース区間・9区では、主将の藤川拓也が区間記録にあと3秒と迫る1時間8分4秒の快走を見せ、2位・駒澤大に9分56秒と大差をつけた。2年生でアンカーを任された安藤悠哉も勢いが衰えることなくフィニッシュテープを切った。
2位は駒澤大、3位・東洋大、4位・明治大、5位・早稲田大と、戦前から“5強”と目されていたチームが上位を占めた。
スポーツナビでは、駒澤大のエースとして箱根駅伝に4年連続で出場し(1999年〜2002年)、現在はランニングアドバイザーを務める神屋伸行さんに復路のレース展開と総括、そして今後の箱根駅伝の展望などについて伺った。 復路に経験者を残した良オーダー
――青山学院大が総合タイム10時間49分27秒という大記録を打ち立て初優勝を飾りましたが、その要因は?
ひとつはバランスのいいオーダーを組めたことですね。9区に藤川拓也選手を残していましたし、7区に小椋裕介選手、8区に高橋宗司選手といった過去に(箱根駅伝を)走った経験のある選手を残していました。もちろん、往路にも主力を置いていましたが、復路にもしっかり走れる選手を残していました。5区の神野大地選手が、1時間16分台というすごい記録を出すと予測ができていたかは分かりませんが、神野選手があそこまでのタイムを出さなくても、ほかの選手の実力だけでもしっかり勝てていた可能性が高かったと思います。
ここ数年続いていた、5区、6区の山重視に引っ張られないと言いますか、きちんと10区間を見越して配置して勝ったレースだったと思います。それは2年前に日本体育大が5区の服部翔大選手(現Honda)を中心に、2区の本田匠選手(現旭化成)や、9区に矢野圭吾選手(現日清食品グループ)を残して勝ったレースに似ていますね。
――復路の記録を見ると、青山学院大は7区、8区、9区で区間賞、6区、10区も区間2位の記録で走りました。各選手が好走できた理由は、やはり往路のアドバンテージにありますか?
もちろんトップでの走りやすさもあると思いますが、9区に藤川選手がいたことが各選手の安心材料になったのだと思います。また7区の小椋選手、8区の高橋選手も過去に走っているので、ある程度、どれぐらいで走ればいいかという計算ができたと。また6区の村井駿選手も前回は6区区間18位でしたので、不安はあったかもしれませんが、それでもほかの選手が補えるという自信があったと思いますし、初めて箱根を走る選手にとっても、実績を持った選手がいることでやりやすかった部分もあると思います。それで安心して自分の仕事をすればいいという、気持ち的にもリラックスして走れたことにつながったと思います。 勝つためには“何か”が必要
駒澤大は9区の其田(写真)らも好走したが、主要区間で区間賞を奪えなかったことが痛かった【写真:中西祐介/アフロスポーツ】――2位の駒澤大は優勝候補と言われて臨みましたが、最終的には10分50秒の差がつきました
駒澤大は今回、戦略を変えて大会に臨みました。前回は9区に窪田忍選手(現トヨタ自動車)を残して負けてしまったところもあるので、今回は往路での“先制パンチ”を見据えたオーダーで、復路は安定感のある選手を置いていました。それが結果的に裏目になってしまいましたね。
ただ駒澤大もしっかり力を発揮していたと思います。5区では馬場翔大選手が失速してしまうアクシデントもありましたが、それでも2位になったことがそれを示していると思います。やはり駒澤大は大八木弘明監督に変わって以来、ほとんど優勝争いに絡んでいます。ただその中で、箱根で勝つには強いだけでは足りなく、“何か”が加わってこないと勝てなかったのだと思います。
――その“何か”とは、やはり山でのアドバンテージですか?
私はそうでもないと思います。バランスよく区間配置をすること、2区、4区、7区、9区で区間賞を取れるチームが総合的に勝てるチームだと思います。今大会の駒澤大はその4区間の区間賞を取れていません。(※2区は東洋大、4、7、9区はいずれも青山学院大)その4区間で区間賞を取っていれば山区間でプレッシャーをかけられたと思います。そのような微妙なバランスの上に箱根駅伝の勝利は成り立っていると思います。
要は今回の青山学院大は駒澤大を圧するだけの“何か”を持っていて、それが10時間49分台という大記録にもつながっているのだと思います。駒澤大に関しても、5区の失速がなくても10時間55分台だったと思いますので、十分、チームとしては強いですが、それ以上に青山学院大が強かったですね。
◆1 藤川 拓也 青山学院大学 01:08:04 - -
◆2 木村 慎 明治大学 01:08:58 00:54 -
◆3 其田 健也 駒澤大学 01:09:25 01:21 -
◆4 柳 利幸 早稲田大学 01:09:32 01:28 -
*◆5 廣川 倖暉 國學院大學 01:09:42 01:38 -
*◆6 橋 裕太 帝京大学 01:09:50 01:46 -
*◆7 池田 紀保 大東文化大学 01:10:08 02:04 -
*◆8 松村 和樹 順天堂大学 01:10:21 02:17 -
◆9 寺内 將人 東洋大学 01:10:27 02:23 -
*◆10 村越 直希 日本大学 01:10:28 02:24 -
*◆11 山本 航平 日本体育大学 01:10:30 02:26 -
◆12 木登志夫 東海大学 01:10:32 02:28 -
*◆13 山岸 塁 上武大学 01:10:36 02:32 -
*◆14 阿部 竜巳 山梨学院大学 01:10:44 02:40 -
*◆15 菅 真大 城西大学 01:11:16 03:12 -
◆16 山田 侑紀 中央学院大学 01:12:06 04:02 -
*◆OP 松井 将器 関東学生連合 01:12:08 04:04 参考
*◆17 栩山 健 拓殖大学 01:12:12 04:08 -
*◆18 松原 啓介 中央大学 01:12:13 04:09 -
*◆19 彦坂 一成 創価大学 01:13:07 05:03 -
*◆20 井上 雄介 神奈川大学 01:13:58 05:54
◆1 小椋 裕介 青山学院大学 01:02:40 - -
◆2 西山 雄介 駒澤大学 01:03:26 00:46 -
◆3 服部 弾馬 東洋大学 01:03:35 00:55 -
*◆4 西澤 卓弥 順天堂大学 01:04:07 01:27 -
◆5 武田凜太郎 早稲田大学 01:04:09 01:29 -
*◆6 室井 勇吾 城西大学 01:04:29 01:49 -
◆7 石橋 安孝 東海大学 01:04:30 01:50 -
*◆8 徳永 照 中央大学 01:04:44 02:04 -
*◆9 高山 直哉 神奈川大学 01:04:57 02:17 -
*◆10 内田 直斗 帝京大学 01:05:06 02:26 -
*◆OP 村瀬 圭太 関東学生連合 01:05:16 02:36 参考
◆11 海老澤 太 中央学院大学 01:05:17 02:37 -
*◆12 市谷龍太郎 山梨学院大学 01:05:23 02:43 -
*◆13 鮫島紋二郎 國學院大學 01:05:33 02:53 -
◆14 末次 慶太 明治大学 01:05:45 03:05 -
*◆15 三好 慎平 上武大学 01:05:50 03:10 -
*◆16 大手 敬史 日本体育大学 01:05:51 03:11 -
*◆17 北村 一摩 大東文化大学 01:06:17 03:37 -
*◆18 高松 峻平 日本大学 01:06:30 03:50 -
*◆19 江藤 光輝 創価大学 01:06:33 03:53 -
*◆20 新井 裕崇 拓殖大学 01:07:08 04:28 -
◆1 青山学院大学 10:49:27 - - -
◆2 駒澤大学 11:00:17 10:50 10:50 -
◆3 東洋大学 11:01:22 11:55 01:05 -
◆4 明治大学 11:01:57 12:30 00:35 -
◆5 早稲田大学 11:02:15 12:48 00:18 -
◆6 東海大学 11:07:08 17:41 04:53 -
*◆7 城西大学 11:08:15 18:48 01:07 -
◆8 中央学院大学 11:09:18 19:51 01:03 -
*◆9 山梨学院大学 11:10:43 21:16 01:25 -
*◆10 大東文化大学 11:11:15 21:48 00:32 -
*◆11 帝京大学 11:13:30 24:03 02:15 -
*◆12 順天堂大学 11:13:32 24:05 00:02 -
*◆13 日本大学 11:17:59 28:32 04:27 -
*◆14 國學院大學 11:18:12 28:45 00:13 -
*◆15 日本体育大学 11:18:24 28:57 00:12 -
*◆16 拓殖大学 11:18:24 28:57 00:00 -
*◆17 神奈川大学 11:18:47 29:20 00:23 -
*◆18 上武大学 11:18:53 29:26 00:06 -
*◆OP 関東学生連合 11:19:12 29:45 00:19 参考
*◆19 中央大学 11:20:51 31:24 01:39 -
*◆20 創価大学 11:31:40 42:13 10:49 -
青山学院大の藤川(右)は9区の歴代2位の記録となる1時間8分4秒で走り、強さを見せた【写真:アフロスポーツ】――復路のレースに限ると、どの選手が印象に残りましたか?
やはり9区の青山学院大・藤川選手ですね。(昨年11月の)世田谷246ハーフマラソン大会で藤川選手が優勝していますが、その自信もあったのだと思います。もちろん5区で神野選手がヒーローになったように見えますが、藤川選手も9区区間歴代2位という記録で走っていますので、非常に強い選手だったと思いました。青山学院大にとって、心の柱になっていたと思います。
早稲田大の三浦雅裕選手も6区の山下りで良い走りをしていました。往路で前のチームと差がついてしまった中で、復路で崩れても仕方がないかと思いますが、そこをしっかり三浦選手が走ったことで、なんとか5位で持ちこたえたと思います。復路の総合タイムを見ても復路2位の駒澤大と20秒程度しか変わりませんし。三浦選手のスタートダッシュで意地を見せられましたね。
駒澤大では8区の大塚祥平選手、9区の其田健也選手も来年につながる良い走りをしたと思います。簡単には崩れないというところを見せました。
――そうなるとやはり、来年も青山学院大、駒澤大は抜きん出た存在になりそうですが
青山学院大はもちろん強いと思います。駒澤大も大塚選手、其田選手、7区を走った西山雄介選手もいますし、往路を走った中谷圭佑、工藤有生がいます。5区の馬場選手も次回は平地を走るかもしれません。その中で先ほど言いました2区、4区、7区、9区で区間賞を取れる強さがあれば、勝てるのではないでしょうか。
これからは、今大会で青山学院大が奪っていった区間賞を、どれだけ他の大学が奪い返せるかですね。東洋大も服部勇馬、弾馬の兄弟がいますし。青山学院大を見ながら、強いチームを作り直すことが課題だと思います。
村山兄弟(謙太/駒澤大、紘太/城西大)の卒業で大学長距離界のイメージが変わると思いますが、そこで青山学院大の時代になることを阻止できるかどうかですね。 シード権の獲得を見越したチーム作りを
――シード権争いに目を向けると、山梨学院大、大東文化大などがシード権を獲得し、帝京大、順天堂大などがあと一歩のところでシード権を逃しました。シード権争いの明暗を分けた要因は何だと思いますか?
山梨学院大は1区、2区でブレーキ、またエースのエノック・オムワンバ選手が欠場ということもありましたが、それでもシード権を獲得できました。結局のところ、力が均衡している中で、ミスをしても取り返せる部分まで残れるか、それとも中央大のように最後に致命的なブレーキをしてしまうかの違いはありますね。
トップ争いにも言えますが、いまの大学長距離界では1万メートルの持ちタイムが28分台というのはたくさんいて、27分台がトップになっています。それぞれのチームが28分の持ちタイムを持っている選手を抱えることになりますが、その中でどれだけ自分の力を発揮できるか、ミスをしてもそれを取り返せる選手がいたかどうかだと思います。
――そのあたりが駅伝のうまさという部分でしょうか?
シード落ちをしてしまった神奈川大もそうですが、持ちタイムが28分台という選手を数人抱えていても崩れてしまうことはあります。オーダーにもよりますが、きちんと10人がそれぞれの力を発揮して、ミスをしても補えるかどうか、トータルで戦えるかどうかですね。
次回大会は中央大、日本大、日本体育大、順天堂大といった古豪が予選会に回ります。これらのチームが駅伝を知らない、ということはないのですが、空回りしたり、かみ合わなかったことが差だったと思います。ただ、ひとことで明暗を分けるのはどこかと言うのはむずかしいですね。
予選会を突破することは、今回は創価大も成功しましたし、次回は東京国際大あたりもしっかり狙ってくると思います。ただチーム作りをする中で、本戦を見据えた組み方をしないと、箱根で上位に上がるのは難しいと思います。とりあえず持ちタイムが28分台の選手をそろえれば良いというわけではないので。
――やはり箱根駅伝本番は、持ちタイムだけでは力が図れないと?
優勝争いもそうですが、一番難しい区間、ハイリスクな区間が5区、次が下りの6区、さらに距離の長い2区、9区、そして遊行寺坂がある8区の順で難易度があると思います。1区に関しては、高速レースになることはありますが、通常のハーフマラソンと距離的にも変わらないし、コースも同じなので、そこまでリスクは高くなく、大きなブレーキとはなりません。
その中で、予選会だけを見据えると、このハイリスク区間の難易度が高いんですよね。特に復路は8区、9区で差が広がります。そのリスクを考え、本戦に合わせてトレーニングできるかどうかが、やはり大事かと思います。
第91回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、2日の往路、3日の復路ともに青山学院大が強さを見せて、10時間49分27秒という大記録を打ちたて、史上16校目となる優勝校となった。
青山学院大は往路で2位の明治大と4分59秒差をつけてゴールし、復路での大きなアドバンテージを持ってスタートした。6区の村井駿(3年)が5分42秒、7区の小椋裕介(3年)が8分21秒、8区の高橋宗司(4年)が8分35秒と順調に2位との差を広げる。復路のエース区間・9区では、主将の藤川拓也が区間記録にあと3秒と迫る1時間8分4秒の快走を見せ、2位・駒澤大に9分56秒と大差をつけた。2年生でアンカーを任された安藤悠哉も勢いが衰えることなくフィニッシュテープを切った。
2位は駒澤大、3位・東洋大、4位・明治大、5位・早稲田大と、戦前から“5強”と目されていたチームが上位を占めた。
スポーツナビでは、駒澤大のエースとして箱根駅伝に4年連続で出場し(1999年〜2002年)、現在はランニングアドバイザーを務める神屋伸行さんに復路のレース展開と総括、そして今後の箱根駅伝の展望などについて伺った。 復路に経験者を残した良オーダー
――青山学院大が総合タイム10時間49分27秒という大記録を打ち立て初優勝を飾りましたが、その要因は?
ひとつはバランスのいいオーダーを組めたことですね。9区に藤川拓也選手を残していましたし、7区に小椋裕介選手、8区に高橋宗司選手といった過去に(箱根駅伝を)走った経験のある選手を残していました。もちろん、往路にも主力を置いていましたが、復路にもしっかり走れる選手を残していました。5区の神野大地選手が、1時間16分台というすごい記録を出すと予測ができていたかは分かりませんが、神野選手があそこまでのタイムを出さなくても、ほかの選手の実力だけでもしっかり勝てていた可能性が高かったと思います。
ここ数年続いていた、5区、6区の山重視に引っ張られないと言いますか、きちんと10区間を見越して配置して勝ったレースだったと思います。それは2年前に日本体育大が5区の服部翔大選手(現Honda)を中心に、2区の本田匠選手(現旭化成)や、9区に矢野圭吾選手(現日清食品グループ)を残して勝ったレースに似ていますね。
――復路の記録を見ると、青山学院大は7区、8区、9区で区間賞、6区、10区も区間2位の記録で走りました。各選手が好走できた理由は、やはり往路のアドバンテージにありますか?
もちろんトップでの走りやすさもあると思いますが、9区に藤川選手がいたことが各選手の安心材料になったのだと思います。また7区の小椋選手、8区の高橋選手も過去に走っているので、ある程度、どれぐらいで走ればいいかという計算ができたと。また6区の村井駿選手も前回は6区区間18位でしたので、不安はあったかもしれませんが、それでもほかの選手が補えるという自信があったと思いますし、初めて箱根を走る選手にとっても、実績を持った選手がいることでやりやすかった部分もあると思います。それで安心して自分の仕事をすればいいという、気持ち的にもリラックスして走れたことにつながったと思います。 勝つためには“何か”が必要
駒澤大は9区の其田(写真)らも好走したが、主要区間で区間賞を奪えなかったことが痛かった【写真:中西祐介/アフロスポーツ】――2位の駒澤大は優勝候補と言われて臨みましたが、最終的には10分50秒の差がつきました
駒澤大は今回、戦略を変えて大会に臨みました。前回は9区に窪田忍選手(現トヨタ自動車)を残して負けてしまったところもあるので、今回は往路での“先制パンチ”を見据えたオーダーで、復路は安定感のある選手を置いていました。それが結果的に裏目になってしまいましたね。
ただ駒澤大もしっかり力を発揮していたと思います。5区では馬場翔大選手が失速してしまうアクシデントもありましたが、それでも2位になったことがそれを示していると思います。やはり駒澤大は大八木弘明監督に変わって以来、ほとんど優勝争いに絡んでいます。ただその中で、箱根で勝つには強いだけでは足りなく、“何か”が加わってこないと勝てなかったのだと思います。
――その“何か”とは、やはり山でのアドバンテージですか?
私はそうでもないと思います。バランスよく区間配置をすること、2区、4区、7区、9区で区間賞を取れるチームが総合的に勝てるチームだと思います。今大会の駒澤大はその4区間の区間賞を取れていません。(※2区は東洋大、4、7、9区はいずれも青山学院大)その4区間で区間賞を取っていれば山区間でプレッシャーをかけられたと思います。そのような微妙なバランスの上に箱根駅伝の勝利は成り立っていると思います。
要は今回の青山学院大は駒澤大を圧するだけの“何か”を持っていて、それが10時間49分台という大記録にもつながっているのだと思います。駒澤大に関しても、5区の失速がなくても10時間55分台だったと思いますので、十分、チームとしては強いですが、それ以上に青山学院大が強かったですね。
◆1 藤川 拓也 青山学院大学 01:08:04 - -
◆2 木村 慎 明治大学 01:08:58 00:54 -
◆3 其田 健也 駒澤大学 01:09:25 01:21 -
◆4 柳 利幸 早稲田大学 01:09:32 01:28 -
*◆5 廣川 倖暉 國學院大學 01:09:42 01:38 -
*◆6 橋 裕太 帝京大学 01:09:50 01:46 -
*◆7 池田 紀保 大東文化大学 01:10:08 02:04 -
*◆8 松村 和樹 順天堂大学 01:10:21 02:17 -
◆9 寺内 將人 東洋大学 01:10:27 02:23 -
*◆10 村越 直希 日本大学 01:10:28 02:24 -
*◆11 山本 航平 日本体育大学 01:10:30 02:26 -
◆12 木登志夫 東海大学 01:10:32 02:28 -
*◆13 山岸 塁 上武大学 01:10:36 02:32 -
*◆14 阿部 竜巳 山梨学院大学 01:10:44 02:40 -
*◆15 菅 真大 城西大学 01:11:16 03:12 -
◆16 山田 侑紀 中央学院大学 01:12:06 04:02 -
*◆OP 松井 将器 関東学生連合 01:12:08 04:04 参考
*◆17 栩山 健 拓殖大学 01:12:12 04:08 -
*◆18 松原 啓介 中央大学 01:12:13 04:09 -
*◆19 彦坂 一成 創価大学 01:13:07 05:03 -
*◆20 井上 雄介 神奈川大学 01:13:58 05:54
◆1 小椋 裕介 青山学院大学 01:02:40 - -
◆2 西山 雄介 駒澤大学 01:03:26 00:46 -
◆3 服部 弾馬 東洋大学 01:03:35 00:55 -
*◆4 西澤 卓弥 順天堂大学 01:04:07 01:27 -
◆5 武田凜太郎 早稲田大学 01:04:09 01:29 -
*◆6 室井 勇吾 城西大学 01:04:29 01:49 -
◆7 石橋 安孝 東海大学 01:04:30 01:50 -
*◆8 徳永 照 中央大学 01:04:44 02:04 -
*◆9 高山 直哉 神奈川大学 01:04:57 02:17 -
*◆10 内田 直斗 帝京大学 01:05:06 02:26 -
*◆OP 村瀬 圭太 関東学生連合 01:05:16 02:36 参考
◆11 海老澤 太 中央学院大学 01:05:17 02:37 -
*◆12 市谷龍太郎 山梨学院大学 01:05:23 02:43 -
*◆13 鮫島紋二郎 國學院大學 01:05:33 02:53 -
◆14 末次 慶太 明治大学 01:05:45 03:05 -
*◆15 三好 慎平 上武大学 01:05:50 03:10 -
*◆16 大手 敬史 日本体育大学 01:05:51 03:11 -
*◆17 北村 一摩 大東文化大学 01:06:17 03:37 -
*◆18 高松 峻平 日本大学 01:06:30 03:50 -
*◆19 江藤 光輝 創価大学 01:06:33 03:53 -
*◆20 新井 裕崇 拓殖大学 01:07:08 04:28 -
◆1 青山学院大学 10:49:27 - - -
◆2 駒澤大学 11:00:17 10:50 10:50 -
◆3 東洋大学 11:01:22 11:55 01:05 -
◆4 明治大学 11:01:57 12:30 00:35 -
◆5 早稲田大学 11:02:15 12:48 00:18 -
◆6 東海大学 11:07:08 17:41 04:53 -
*◆7 城西大学 11:08:15 18:48 01:07 -
◆8 中央学院大学 11:09:18 19:51 01:03 -
*◆9 山梨学院大学 11:10:43 21:16 01:25 -
*◆10 大東文化大学 11:11:15 21:48 00:32 -
*◆11 帝京大学 11:13:30 24:03 02:15 -
*◆12 順天堂大学 11:13:32 24:05 00:02 -
*◆13 日本大学 11:17:59 28:32 04:27 -
*◆14 國學院大學 11:18:12 28:45 00:13 -
*◆15 日本体育大学 11:18:24 28:57 00:12 -
*◆16 拓殖大学 11:18:24 28:57 00:00 -
*◆17 神奈川大学 11:18:47 29:20 00:23 -
*◆18 上武大学 11:18:53 29:26 00:06 -
*◆OP 関東学生連合 11:19:12 29:45 00:19 参考
*◆19 中央大学 11:20:51 31:24 01:39 -
*◆20 創価大学 11:31:40 42:13 10:49 -