南アルプスの登山 いや、日本の自然を愛する全ての方へ。
本当に南アルプスにリニアのトンネルを掘ってしまっていいのでしょうか。
直径約11m、東から長さ約10km、22km、10kmくらいかな?
あけられたら、二度と、絶対に復元することはできません。
JR東海は南アルプスを横断する長大トンネルを掘るにあたり、南アルプスのど真ん中、大井川源流の静岡市二軒小屋という場所へ斜坑を掘ろうと計画しています。斜坑というのは長大トンネルの工期を短縮するために横から本坑へ掘り進める工事用トンネルのことです。
二軒小屋というのは3000m級の山々に囲まれた秘境の地です。
静岡の市街地から自動車で向かった場合、ヘアピンカーブの県道を経て畑薙第一ダムに至り、さらに未舗装・一般車両通行禁止の林道東俣線を通ってゆくことになります。直線距離では70~80㎞くらいですが、所要時間は少なくとも4時間はかかります。
リニア中央新幹線の建設工事は10年以上に及びます。
現在の計画では、その間は大井川源流部の東俣林道を使って、毎日300~500台の大型車両が大量の物資と人とを乗せて、外部と南アルプスとを行き来することになっています。
こんな事態は南アルプスにとってはじめてです
このトンネルを掘るために、さらにたくさんの作業用トンネルが掘られます。なお、これらについては、準備書においても、いまだに長さ・規模・構造が明らかにされていないという問題があります。残土発生量や河川流量の予測を行っているわけですから、全く未定ということはないはずです。準備書段階でもこういう情報を出さないのはおかしな話です。
とりあえず斜坑が11本、作業用道路トンネルを2本想定しているということです。このうち静岡市二軒小屋の作業用道路トンネルについては、構造は不明ですが、準備書に点線で位置が示され、長さは2500m、2900mとみられます。
また、山梨県早川両岸の斜坑は、おそらく山の中腹に開けられる坑口への通路になると思われ、(12.5パーミリ勾配とすると)長さはそれぞれ1000m程度とみられます。長野県大鹿村の上蔵地区に計画されている斜坑も、同様に長さは1100m程度とみられます。
以上のように計13本の斜坑・作業用道路トンネルのうち、5本については、合計8500mほどになります。
残る8本については推定ですが、確実に2500m以上となるのものが4本(早川町内河内川、静岡市二軒小屋2本、大鹿村釜沢)あり合計15000mは上回るはずです。
大井川の流量減少問題は、リニアが南アルプスを貫く以上は構造的に避けらず、また根本的な対策もとれないと思います。
→昨年暮れに記事を更新しました
「リニアは南アルプスの巨大水抜きパイプ」
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Ooigawa/Ooigawa.html
二軒小屋付近は中部電力の発電所があり、東海フォレストの作業員のための宿泊施設も沢山ある(プレハブ風)ので、二軒小屋付近からトンネルの坑道を掘り作業を進めるとのことだ。伝付峠にはベルトコンベアで土砂をあげて何かを作ることも決まっているらしい。大鹿村は20秒に1台のトラックに大怒だ。
大井川源流部には、ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、アカイシサンショウウオの3種が分布しているそうです。いずれも数は少なく、ハコネ、ヒダの2種は県版レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に、アカイシサンショウウオはⅠB類に選定されています。ⅠB類というのは、絶滅のおそれがかなり高いことを意味しています。
私自身、現物を見たことはありませんが、アカイシサンショウウオというのは、2004年に新種と判明したばかりのもので、その分布域は現在のところ赤石山脈南部(静岡・長野)に限定されているようです。すなわち、この地球上で南アルプス南部にしか分布していないわけです。地味な生き物ですが、非常に貴重なんです。
ところでJR東海作成の環境影響評価準備書によると、リニア中央新幹線の建設工事では、南アルプス山中の林道東俣線を、1日最大480台の大型車両が通行する計画になっています。1日の作業時間を8時間とすると、1時間に60台すなわち1分おきに通行することになります。これが10年余にわたって続きます。
大型車両の通行で気になるのが、サンショウウオを含む、小動物の交通事故死です。路上で轢死することからロードキルとよばれます。http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2928
林道東俣線は、大井川の谷底に沿って、延々35㎞に及びます。トンネルや高架構造はほとんどなく、谷底に近い部分にへばりつくような感じです。ちなみに未舗装です。
静岡市、林道管理条例制定へ リニア工事に発言力強化か
(2014/9/30 08:34)
静岡市はユネスコエコパークに登録された南アルプス地域の林道管理に関する条例を制定する。車両の通行規制を条例で定め、自然環境の保全と地域の発展の調和につなげる。JR東海リニア中央新幹線の工事車両が通る予定の林道東俣線も含まれ、条例制定で工事への発言力を強める狙いもあるとみられる。
29日に条例骨子案を公表し、10月29日までパブリックコメント(市民意見の募集)を実施している。条例案は市議会11月定例会に諮る予定。
対象はエコパーク移行地域内の市管理林道。東俣線は既に市が内規で車両の通行を規制しているが、条例に“格上げ”する。林業用や地域住民の生活道路としてだけでなく、近年は登山やハイキングなど利用の多様化が進む他の林道も通行に一定の制約を設ける必要があると判断した。
骨子案では、林業・農業従事者、林道を生活道路として使う地域住民を市長の通行許可の除外対象とし、登山、ハイキング、散策などレクリエーション目的で通る場合も許可が不要とした。リニア工事に入る車両は許可が必要になるという。
林業者の通行に支障を及ぼす▽林道を損傷・汚損する▽周辺の自然環境保全に支障を及ぼす―などの恐れがある場合は、許可しない方針。 道路の損傷・汚損、土石・竹木・ごみの投棄などを禁止行為とし、違反者に対して通行許可を取り消したり、通行禁止を命じたりできるようにする。
大井川流量低下回避を リニア工事で県山岳連など要望
(2014/9/11 09:17)
県山岳連盟、静岡市山岳連盟、県勤労者山岳連盟、日本山岳会静岡支部の4団体は10日、リニア中央新幹線の工事で大井川の流量を低下させないことや渓谷に残土を投棄しないことについて、JR東海に対し指導するよう求める川勝平太知事宛ての要望書を県に提出した。
要望書は「南アルプスの破砕帯を貫通するトンネルが地下水脈を思わぬ方向に導くことは容易に想像できる。豊かさと便利さのために貴重な自然をこれ以上壊すことに慎重でなければならない」と指摘し、計画経路の変更も視野に入れ、県がJR東海を指導するよう求めている。
日本山岳会静岡支部の大島康弘代表は県庁で開いた記者会見で「景観が壊され、生態系にも影響が出ると考えられ、看過できない」と述べた。
だいたいゴゼンタチバナ、オサバグサ、イワオウギ、ハリブキ、ツバメオモト、タカネフタバランなどは標高2000m級の山に行かねば見られない種類であり(主に亜高山帯の植物)、ミネウスユキソウなどというのは完全な高山植物です。こんなものが鉄道建設によって影響を受けるおそれがあり、しかも保全対象にあがってないなんてきわめて異常です!!
マニアが盗掘したら罰金モノなのに、JR東海が残土で埋めてしまうのはOKというのはどういうこっちゃ?。.
リニア残土 燕沢に集約 JR東海検討、扇沢回避か
(2014/8/29 07:36)
残土置き場の集約先として検討されている燕沢=7月29日、静岡市葵区
2027年に東京・品川―名古屋間で開業を目指すリニア中央新幹線計画で、南アルプス(静岡市最北部)内に設ける発生土(残土)置き場について、JR東海は7カ所ある候補地を最大規模の燕(つばくろ)沢に一本化する案を軸に検討に入った。28日、関係者の話で分かった。
JRは残土置き場を燕沢と、同様に候補地の一つである扇沢の2カ所を重要視して地元サイドに説明してきた。一本化されれば事実上の計画変更になる。扇沢の使用を回避することで残土運搬用トンネルの一部は建設の必要がなくなるなど、県内区間の工事予定図は一定程度塗り替えられる可能性も出てくる。
残土運搬用トンネルの一部を造らないため掘削量が減り、県内の残土発生量は360万立方メートルから300万立方メートル程度まで削減されるとの試算もあるという。
関係者によると、燕沢の盛り土の高さは50メートル前後、延長1キロ程度になる見込み。擁壁を設置するなどの対策が必要になるが、JRによると50メートル級の盛り土は技術的に問題ないとされる。
残土置き場をめぐる議論はこれまで、静岡市が標高2千メートル級に位置する扇沢について「崩壊の危険性がある」と利用に強く反発してきた。国土交通相も7月の意見書で事業実施には地元の理解と協力が不可欠と指摘した。
JRはこうした経緯を踏まえ総合的に判断するとみられる。ただ、県は燕沢の利用について3月に取りまとめた知事意見で「土石流が発生すれば以前にも増して影響拡大が懸念される」と綿密な検討を要請した。大量の残土を同所に集約することが可能かどうか、今後の協議は曲折も予想される。
◇リニア計画の県内区間
南アルプスの地下に東西10・7キロの長大トンネルを通す。地上区間はなく、難工事が予想される。環境面で学術的に未解明な地域でもあり県は慎重な対応を求めているが、JR東海は早期着手を否定していない。26日に東京・品川―名古屋間の工事実施計画を国に申請した。早ければ10月にも着工する見通し。
リニア計画の南ア保全 工事前に川勝知事意見
(2014/6/26 07:36)
川勝平太知事は25日の県議会6月定例会で、JR東海リニア中央新幹線計画における南アルプスの保全策について、県環境影響評価(アセスメント)条例に基づき工事開始前に知事意見を提出し、保全措置に関するJRの姿勢を再びただす考えを示した。
ふじのくに県議団の小長井由雄氏(静岡市葵区)の代表質問への答弁。知事意見は、一連の環境アセスの工程で県が公式に意思表示する最後の機会になる見通し。
同条例に基づきJRは事後調査計画書を作成し、河川流量の減少が予測される大井川などで行う環境調査の具体的な内容を提示することになっている。知事は「極めて大規模な土地改変を多くの県民が懸念するのは当然。着工後も事業が与える影響を把握、確認するよう強く求める」と語り、県として長期的に事業に関与する意向もあらためて強調した。
法律に基づくリニア計画の環境アセスは、国土交通相が7月22日までに意見書を公表して実質的に終了する。今月初旬の環境相意見では、「個別の懸念に踏み込んでいない」などと総花的な内容に沿線住民から不満が上がった。知事の発言は、こうした事情も念頭にしたとみられる。
環境省「問題見つからず」 リニア残土、県内置き場
(2014/6/ 6 07:56)
JR東海リニア中央新幹線の環境影響評価(アセスメント)書に対する意見書を国土交通省に提出したことに関連し、環境省は5日、JR東海が静岡県内で予定するリニア中央新幹線のトンネル掘削工事の発生土(残土)置き場について、現地で確認した範囲では具体的な問題は見つかっていないとの認識を示した。
同省の審査官は昨年10月、JR東海が発生土置き場として予定する県内全7カ所を回った。全ての場所が選定要件を満たすかどうかについて、同省担当者はJR東海がまだ選定範囲を十分に絞り込んでいないため「全ての予定地をつぶさに見たわけではない。よく分からない」と語った。
その上で、少なくともいくつかの予定地は周辺が既に人工的に改変されていたことから、同省が回避するよう要請している「自然度の高い区域」には該当せず、登山道から見えにくい場所にあることも要件に適合していたとの見方を示した。
静岡市は伝付峠周辺の扇沢、燕沢の発生土置き場について、山体崩壊の危険があるなどとしてJR東海に見直しを求めている。
リニア中央新幹線工事の環境影響評価準備書に対し、静岡市の田辺信宏市長が22日、公表した意見書。トンネル掘削で発生する土(残土)置き場予定地のうち、南アルプスの標高2千メートル付近の扇沢源頭部(伝付峠周辺)について、「処理は回避すること」と“ノー”を突き付けた。 最大級の残土置き場となる可能性のある燕(つばくろ)沢についても土石流災害への懸念を表明した。残土処理計画について、JR東海に抜本的見直しを迫る内容となっている。
伝付峠周辺は山梨県側からも静岡県側からも地滑りや崩壊による浸食が進み、面積が縮小する不安定な領域。他の残土置き場とは明らかに地形や地質も違い、そこに新たな残土を積み上げれば山体崩壊を促進する恐れがある、と指摘した。
大井川の水に与える影響については、流域の県中西部9市町の首長が強い懸念の声を上げている。住民の生活や産業用水に直結する問題だけに、JRの丁寧な説明が求められている。
上流部にすむヤマトイワナに関しては渓流釣り愛好家が「ヤマトイワナがいないという調査結果は撤回してほしい。今後のJR東海の説明によっては、現地調査を独自で行うことも検討する」としている。
JR「10月着工困難」 リニア、南アルプス区間
(2014/9/ 9 07:31)
JR東海は8日、リニア中央新幹線計画における南アルプスの工事が10月にも始まると一部で伝えられていることについて、「さまざまな手続きがあり、現実的に困難」との認識を明らかにした。
同社中央新幹線建設部環境保全事務所(静岡)の田中雅裕所長が同日、県庁で開かれた県中央新幹線環境保全連絡会議水資源部会の第1回会合で述べた。
田中所長は中心線測量や設計協議、用地買収など着工までに必要な工程を紹介し、「とてもすぐに工事できるスケジュールにない」と強調した。
一方で「南アルプスは綿密な検討を重ねてきた。環境が整えばできるだけ早くという気持ちはある」とし、工事認可が下り次第、速やかに地元向けの事業説明会を実施し、準備を進める意向を示した。
南アルプスの着工時期については、10月にも着手するとの観測が報道ベースで伝えられ、JRも環境影響評価書を公表した先月26日の記者会見で否定しなかった。
「JRは責任対応を」 望月環境相、環境対策求める
(2014/9/ 5 07:30)
望月義夫環境相(衆院静岡4区)は4日、環境省で記者団のインタビューに応じ、JR東海リニア中央新幹線の工事に伴う環境影響に関し、「JR東海は責任ある事業主体として適切な対応をしてもらいたい」と述べ、JR側に環境保全対策の徹底を求めた。
望月氏はJR東海の環境影響評価(アセスメント)の最終的な評価書の内容には「環境影響評価の手続きは既に終了している。環境相意見はおおむね反映されていると思っている」と肯定的な認識を示した。その上で、「南アルプスの環境を決して壊すことがないように指導しているが、JR東海も独自に研究を進めてもらいたい」と指摘した。
JR東海は8月、工事の環境影響評価の最終的な評価書を公表し、国土交通省に工事実施計画の認可を申請している。
一方、世界遺産に登録された富士山の環境保全について「今後、登録が取り消されることもある。国民に広く呼び掛け、大事に守っていかねばならない」と訴えた。
リニア中央新幹線はJR東海が建設を進めており、今年5月に国土交通省から正式に建設指示が出されました。
東京(品川駅)から名古屋駅まで真っ直ぐに路線を築き、総延長286㎞のうち8~9割がトンネルになります。
その途中に横たわる南アルプスの山々については、当初は中央本線に沿って迂回する案も検討されましたが、「速達性を重視したい」というJR東海の主張どおりに、トンネルで貫くことになりました。
路線の概略は…
甲府盆地から西へ進み、釜無川を渡ったところで南へ曲がり、A級活断層である市之瀬断層南部を横切り、旧増穂町(現富士川町)で長大なトンネルに入ります。
このトンネルは、1:25000地形図から推測すると長さはおよそ12~13㎞程度で、大柳渓谷の下をくぐり、早川渓谷の新倉付近に達します。
そして、おそらく1:25000地形図で青崖隧道とあるあたりで川をわたります。このあたり、谷底から尾根までの比高は1000m近くあり、両側の平均的な勾配は30~60°と異常に急なうえ、地すべりや崩壊地が密集しており、とてつもなく急なV字谷になっています。
早川を橋梁で渡り、次に白根南嶺と赤石山脈とを潜り抜ける長大トンネルに入ります。1:25000地形図では24㎞くらいの長さになると思われます。トンネルは広河内川の谷底~転付峠(伝付峠)~二軒小屋~マンノー沢頭~西俣右岸~大日影山付近を経て、長野県大鹿村の釜無集落北方に達するものと思われます。
そして小渋川を橋梁で渡ります。このあたりは地すべり地形が密集しており、土砂災害が常習的に起きている地域で、前々からリニアのトンネル掘削や工事用道路開削による土砂災害誘発が懸念されています。工事用車両が狭い集落内を頻繁に通行することや、橋梁設置による景観の大きな悪化も懸念されます。
そして伊那山地を長さ15㎞ほどの長大なトンネルで潜り抜け、伊那盆地に抜けます。途中で中央構造線を通過するので、懸念の声が強く挙げられています。
このルートの設定にあたり、国土交通省中央新幹線小委員会という専門家会議で環境に関する審議を行ったらしいのですが、出席した委員から「資料が大雑把で審議しようがない」という発言があったのを幸いとして、委員長から「審議を行ったが、沿線自然環境はルート設定の制約条件とはならない」という、実にご都合主義な見解が出され、南アルプスにトンネルを掘ることが既成事実となりました。
詳しくはこちらhttp://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/4464182.html
これだけたくさんの穴を掘れば、当然地下水流動に何らかの悪影響が出るのは必至でしょう。
特に、谷底に沿うようにトンネルが掘られる広河内川、大井川西俣、小渋川水系小河内川では、どのような影響が出るのか全く予想がつきません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
長大トンネル工事の常として、途中に斜坑が設けられます。
斜坑というのは、工期を短縮させるために山の脇腹から本坑へむけて掘る工事補助用のトンネルです。後々、非難通路にするつもりだとか。
どうやら、JR東海は大井川源流部の二軒小屋という、南アルプスのど真ん中に斜坑を設けるつもりのようです。斜坑の深さはおそらく500mほど、ダンプカーの性能を考えると、ある程度勾配を緩やかにしなければならないので、長さは2㎞程度になるかと思われます。
このトンネル工事、3本のトンネルを合計すると400万立方メートル以上の土砂が排出されることになります
(3本合計長さ50000m×トンネル掘削断面積81平方メートル=405万㎥)
ちょっと計算をすると、毎日、とても狭い南アルプスのV字谷へと472tもの岩が掘り出されてくる計算になります。11t積みのダンプカーなら、約43台分。少なくとも、11年間、休日を除く毎日、大型ダンプカーが43往復しなければ、このトンネルを掘ることは物理的に不可能なのです。
さらには大量に発生する汚泥も運搬しなければなりませんし、資材や燃料を積んだ大型車両も通ることになります。斜坑を掘った際に出る岩も運び出さなければなりません。
ということは、少なく見積もっても、大型車両が11年間毎日轟音を響かせて50往復しなければなりません。
トーゼンのことながら、これだけの大型車両を円滑に通行させるために、道路整備をおこなう必要が出てきます。そしてここでも大規模な自然破壊…。
大井川源流部に至る東俣林道は狭く未舗装で、そのうえ土砂崩れでしょっちゅう通行止めになっています。今年の夏も、何度も崩落しています。また、一般車両は通行禁止となっています。ですから林道とはいえ、大きく自然環境や景観を損ねるものではありません。林道沿いにも絶滅危惧種を含む多種多様な植物が生育し、渓流にはイワナやカワネズミなどといった希少な生物も住んでいます。静岡県内で最も大規模な渓畦林(けいはんりん:渓流沿いに立地する、カツラ、サワグルミなどから構成される特殊な林)が見られるのも大井川源流部です。
道路整備…路面を舗装し、道幅拡幅のために山肌を削ってコンクリートで固め、、谷を埋め立てて護岸を整備し、小渓流に砂防ダムをつくり、雨水対策にU字溝を設ける…そして頻繁な大型車両の通行。
→貴重な渓畦林や道ばたのマント群集(ツル植物など)は消滅し、外来雑草がはびこり、川底は流入した砂利で埋まって水生昆虫やそれをエサにする動物は激減し、大型哺乳類や土壌生物の移動は遮断され、騒音ゆえ猛きん類の生態にも悪影響をおよぼす。南アルプスの深山幽谷に残るのは無粋なコンクリート構造物。
工事用道路のイメージ(静岡市清水区布沢川ダム工事用道路)
南アルプスは今まで静寂に包まれてきた、本州最後・最大の無人地帯です。何をどう配慮したって、環境の悪化と自然破壊は免れません。
東京~名古屋を47分で移動するだけのために、全く関係のない南アルプスの自然と景観とを未来永劫にわたってぶち壊すというのが、リニア計画の側面です。
2014年開業にこだわれば、この自然破壊という面を避けることは不可能です。
何度も強調しますが、トンネルをつくる限り、土砂の運搬という問題は物理的に避けることができません。
賢いことだとは思えません。
坑口付近が開けていた谷川岳直下の大清水トンネル等とは違い、とても狭く険しく、通ずる道もない場所で大工事を行うことに、大きな問題が潜んでいるのです。
なにより、このような貴重な場所を簡単に消し去ってしまうのを許容する感性が許せない…。
最後になりますが、静岡市が設置した南アルプス世界自然遺産登録学術検討委員会という組織から、具体的な問題点が数多く指摘されています。こちらもどうぞご覧ください。
http://www.city.shizuoka.jp/deps/seiryuu/houhousho.seiryu.html
日本自然保護協会の意見
httpwww.nacsj.or.jp/katsudo/kokuritsu/
リニア中央新幹線計画において、外来植物・移入種の搬入が南アルプスの生態系に与える危険性は、土砂災害を引き起こしかねない残土捨て場や、大井川の大幅な流量減少に比べて目に見えにくい懸念ですす。しかし林道や工事現場周辺が外来植物で埋め尽くされたら、南アルプスの生態系が根本的に破壊されてしまいます。
長くなりましたので要点をまとめます
・現状では、南アルプスの林道沿いでは外来植物の割合は少ない
・南アルプスという場所である以上、外来種をこれ以上増やしてはいけない
・リニア建設に伴い、人為的に広範囲にわたって裸地が生じる
・そこを大量の砂利や資材を積んだ大型車両が頻繁に出入りする
・大量の人間も出入りする
・これでは裸地が外来種で覆われてしまう
・いったん定着したら根絶は不可能であり、周囲に拡散する
・それは生態系の大きな破壊と南アルプスのもつ価値の低下である
しかし見解書で明らかな通り、現段階で現実的で有効な対策は考えられていません。
これでは南アルプスの生態系が南アルプスのものでなくなってしまいます!!.
アルプスはだれのものか?
[リニア新幹線]
中央リニア新幹線は、超電導磁気浮上方式、軌道から浮上し、時速500キロで走行する。来年中に着工し、2027年に品川、名古屋間を完成する。だが、これからの日本に、時速500キロで走行する鉄道が必要不可欠だろうか?
新幹線は品川を出発し、相模原、甲府、飯田、中津川と、名古屋までの停車駅は4駅のみ。乗降客の99%が、甲府以東の駅と、名古屋に集中するだろう。甲府以外の沿線住民には何の便益ももたらさない。その甲府にしても、すでに1時間強で新宿と結ばれている。東京、名古屋間は、言うまでもなく、東海道新幹線が2時間で走っている。それを最速40分に短縮しても、いったい、この国に、どれだけの便益をもたらすというのか?。
代償が大きすぎる。6兆円に近い巨額建設費(「リニア新幹線は狂気の沙汰」参照)もさることながら、大きな自然破壊を伴う。
南アルプスの壁に長大トンネルをぶちぬくという。南北アルプスは、かけがいのない、国民の資産である。もちろん国立公園である。地熱発電の開発でさえ、国立公園内では制限されているというのに、JR東海という一営利企業が、南アルプスに穴をぶち抜くことが、許されるのか?
リニア新幹線は 高速で走行するため、従来の鉄道のように、山間を縫って走るルートがとれない。障害物があれば、トンネルをぶちぬいてでも、直進せざるをえない。もともと、東京、名古屋間286キロの8割が地下に潜ると云われ、いわば地下鉄に近い路線だが、単なる地下鉄ではない。トンネルの中で浮上走行する、いわばロケットなのである。危険も伴うし、装置も大がかりになる。
最大、最長のトンネルは、地形の制約と路線の直進性から、南アルプスの塩見岳(3047M)と荒川岳(3141M)直下、大井川源流の静岡県・二軒小屋付近から、天竜川源流の長野県・大鹿村付近に抜くと推測されている。トンネルの長さは20キロ以上。トンネルの標高は1500メートルに近い。
この二つの地点は、大井川、天竜川のV字型渓谷に立つ、断崖絶壁の地点で、そこに大型重機をもちこみ、山を掘り進めなければならない。
当然、掘り出された土砂量を処分しなければならないが、おそらく、付近には埋め立て可能な土地は存在しないから、ダンプで土砂を運び出すことになる。そのための道路が必要。山を削り、谷を埋め立て、コンクリートで固め、渓流は護岸し、砂防ダムを建築することになるだろう。
手つかずの自然が残っていた山は、喧噪に包まれ、変形し、緑を失い、土砂に洗われる。工事期間は、おそらく、10年。そして、完成後の南アルプスには、およそ山とはそぐわない、無機質な光景が出現するだろう。植生も、動物の生態も変わる。水害、地すべり、地下断層の変形も心配だ。
何のために、だれのために、こんな大がかりな自然破壊をおこなうのか? くりかえすが、停車駅は4駅のみ。沿線住民には何の便益もないのである。
本当に南アルプスにリニアのトンネルを掘ってしまっていいのでしょうか。
直径約11m、東から長さ約10km、22km、10kmくらいかな?
あけられたら、二度と、絶対に復元することはできません。
JR東海は南アルプスを横断する長大トンネルを掘るにあたり、南アルプスのど真ん中、大井川源流の静岡市二軒小屋という場所へ斜坑を掘ろうと計画しています。斜坑というのは長大トンネルの工期を短縮するために横から本坑へ掘り進める工事用トンネルのことです。
二軒小屋というのは3000m級の山々に囲まれた秘境の地です。
静岡の市街地から自動車で向かった場合、ヘアピンカーブの県道を経て畑薙第一ダムに至り、さらに未舗装・一般車両通行禁止の林道東俣線を通ってゆくことになります。直線距離では70~80㎞くらいですが、所要時間は少なくとも4時間はかかります。
リニア中央新幹線の建設工事は10年以上に及びます。
現在の計画では、その間は大井川源流部の東俣林道を使って、毎日300~500台の大型車両が大量の物資と人とを乗せて、外部と南アルプスとを行き来することになっています。
こんな事態は南アルプスにとってはじめてです
このトンネルを掘るために、さらにたくさんの作業用トンネルが掘られます。なお、これらについては、準備書においても、いまだに長さ・規模・構造が明らかにされていないという問題があります。残土発生量や河川流量の予測を行っているわけですから、全く未定ということはないはずです。準備書段階でもこういう情報を出さないのはおかしな話です。
とりあえず斜坑が11本、作業用道路トンネルを2本想定しているということです。このうち静岡市二軒小屋の作業用道路トンネルについては、構造は不明ですが、準備書に点線で位置が示され、長さは2500m、2900mとみられます。
また、山梨県早川両岸の斜坑は、おそらく山の中腹に開けられる坑口への通路になると思われ、(12.5パーミリ勾配とすると)長さはそれぞれ1000m程度とみられます。長野県大鹿村の上蔵地区に計画されている斜坑も、同様に長さは1100m程度とみられます。
以上のように計13本の斜坑・作業用道路トンネルのうち、5本については、合計8500mほどになります。
残る8本については推定ですが、確実に2500m以上となるのものが4本(早川町内河内川、静岡市二軒小屋2本、大鹿村釜沢)あり合計15000mは上回るはずです。
大井川の流量減少問題は、リニアが南アルプスを貫く以上は構造的に避けらず、また根本的な対策もとれないと思います。
→昨年暮れに記事を更新しました
「リニアは南アルプスの巨大水抜きパイプ」
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Ooigawa/Ooigawa.html
二軒小屋付近は中部電力の発電所があり、東海フォレストの作業員のための宿泊施設も沢山ある(プレハブ風)ので、二軒小屋付近からトンネルの坑道を掘り作業を進めるとのことだ。伝付峠にはベルトコンベアで土砂をあげて何かを作ることも決まっているらしい。大鹿村は20秒に1台のトラックに大怒だ。
大井川源流部には、ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、アカイシサンショウウオの3種が分布しているそうです。いずれも数は少なく、ハコネ、ヒダの2種は県版レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に、アカイシサンショウウオはⅠB類に選定されています。ⅠB類というのは、絶滅のおそれがかなり高いことを意味しています。
私自身、現物を見たことはありませんが、アカイシサンショウウオというのは、2004年に新種と判明したばかりのもので、その分布域は現在のところ赤石山脈南部(静岡・長野)に限定されているようです。すなわち、この地球上で南アルプス南部にしか分布していないわけです。地味な生き物ですが、非常に貴重なんです。
ところでJR東海作成の環境影響評価準備書によると、リニア中央新幹線の建設工事では、南アルプス山中の林道東俣線を、1日最大480台の大型車両が通行する計画になっています。1日の作業時間を8時間とすると、1時間に60台すなわち1分おきに通行することになります。これが10年余にわたって続きます。
大型車両の通行で気になるのが、サンショウウオを含む、小動物の交通事故死です。路上で轢死することからロードキルとよばれます。http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2928
林道東俣線は、大井川の谷底に沿って、延々35㎞に及びます。トンネルや高架構造はほとんどなく、谷底に近い部分にへばりつくような感じです。ちなみに未舗装です。
静岡市、林道管理条例制定へ リニア工事に発言力強化か
(2014/9/30 08:34)
静岡市はユネスコエコパークに登録された南アルプス地域の林道管理に関する条例を制定する。車両の通行規制を条例で定め、自然環境の保全と地域の発展の調和につなげる。JR東海リニア中央新幹線の工事車両が通る予定の林道東俣線も含まれ、条例制定で工事への発言力を強める狙いもあるとみられる。
29日に条例骨子案を公表し、10月29日までパブリックコメント(市民意見の募集)を実施している。条例案は市議会11月定例会に諮る予定。
対象はエコパーク移行地域内の市管理林道。東俣線は既に市が内規で車両の通行を規制しているが、条例に“格上げ”する。林業用や地域住民の生活道路としてだけでなく、近年は登山やハイキングなど利用の多様化が進む他の林道も通行に一定の制約を設ける必要があると判断した。
骨子案では、林業・農業従事者、林道を生活道路として使う地域住民を市長の通行許可の除外対象とし、登山、ハイキング、散策などレクリエーション目的で通る場合も許可が不要とした。リニア工事に入る車両は許可が必要になるという。
林業者の通行に支障を及ぼす▽林道を損傷・汚損する▽周辺の自然環境保全に支障を及ぼす―などの恐れがある場合は、許可しない方針。 道路の損傷・汚損、土石・竹木・ごみの投棄などを禁止行為とし、違反者に対して通行許可を取り消したり、通行禁止を命じたりできるようにする。
大井川流量低下回避を リニア工事で県山岳連など要望
(2014/9/11 09:17)
県山岳連盟、静岡市山岳連盟、県勤労者山岳連盟、日本山岳会静岡支部の4団体は10日、リニア中央新幹線の工事で大井川の流量を低下させないことや渓谷に残土を投棄しないことについて、JR東海に対し指導するよう求める川勝平太知事宛ての要望書を県に提出した。
要望書は「南アルプスの破砕帯を貫通するトンネルが地下水脈を思わぬ方向に導くことは容易に想像できる。豊かさと便利さのために貴重な自然をこれ以上壊すことに慎重でなければならない」と指摘し、計画経路の変更も視野に入れ、県がJR東海を指導するよう求めている。
日本山岳会静岡支部の大島康弘代表は県庁で開いた記者会見で「景観が壊され、生態系にも影響が出ると考えられ、看過できない」と述べた。
だいたいゴゼンタチバナ、オサバグサ、イワオウギ、ハリブキ、ツバメオモト、タカネフタバランなどは標高2000m級の山に行かねば見られない種類であり(主に亜高山帯の植物)、ミネウスユキソウなどというのは完全な高山植物です。こんなものが鉄道建設によって影響を受けるおそれがあり、しかも保全対象にあがってないなんてきわめて異常です!!
マニアが盗掘したら罰金モノなのに、JR東海が残土で埋めてしまうのはOKというのはどういうこっちゃ?。.
リニア残土 燕沢に集約 JR東海検討、扇沢回避か
(2014/8/29 07:36)
残土置き場の集約先として検討されている燕沢=7月29日、静岡市葵区
2027年に東京・品川―名古屋間で開業を目指すリニア中央新幹線計画で、南アルプス(静岡市最北部)内に設ける発生土(残土)置き場について、JR東海は7カ所ある候補地を最大規模の燕(つばくろ)沢に一本化する案を軸に検討に入った。28日、関係者の話で分かった。
JRは残土置き場を燕沢と、同様に候補地の一つである扇沢の2カ所を重要視して地元サイドに説明してきた。一本化されれば事実上の計画変更になる。扇沢の使用を回避することで残土運搬用トンネルの一部は建設の必要がなくなるなど、県内区間の工事予定図は一定程度塗り替えられる可能性も出てくる。
残土運搬用トンネルの一部を造らないため掘削量が減り、県内の残土発生量は360万立方メートルから300万立方メートル程度まで削減されるとの試算もあるという。
関係者によると、燕沢の盛り土の高さは50メートル前後、延長1キロ程度になる見込み。擁壁を設置するなどの対策が必要になるが、JRによると50メートル級の盛り土は技術的に問題ないとされる。
残土置き場をめぐる議論はこれまで、静岡市が標高2千メートル級に位置する扇沢について「崩壊の危険性がある」と利用に強く反発してきた。国土交通相も7月の意見書で事業実施には地元の理解と協力が不可欠と指摘した。
JRはこうした経緯を踏まえ総合的に判断するとみられる。ただ、県は燕沢の利用について3月に取りまとめた知事意見で「土石流が発生すれば以前にも増して影響拡大が懸念される」と綿密な検討を要請した。大量の残土を同所に集約することが可能かどうか、今後の協議は曲折も予想される。
◇リニア計画の県内区間
南アルプスの地下に東西10・7キロの長大トンネルを通す。地上区間はなく、難工事が予想される。環境面で学術的に未解明な地域でもあり県は慎重な対応を求めているが、JR東海は早期着手を否定していない。26日に東京・品川―名古屋間の工事実施計画を国に申請した。早ければ10月にも着工する見通し。
リニア計画の南ア保全 工事前に川勝知事意見
(2014/6/26 07:36)
川勝平太知事は25日の県議会6月定例会で、JR東海リニア中央新幹線計画における南アルプスの保全策について、県環境影響評価(アセスメント)条例に基づき工事開始前に知事意見を提出し、保全措置に関するJRの姿勢を再びただす考えを示した。
ふじのくに県議団の小長井由雄氏(静岡市葵区)の代表質問への答弁。知事意見は、一連の環境アセスの工程で県が公式に意思表示する最後の機会になる見通し。
同条例に基づきJRは事後調査計画書を作成し、河川流量の減少が予測される大井川などで行う環境調査の具体的な内容を提示することになっている。知事は「極めて大規模な土地改変を多くの県民が懸念するのは当然。着工後も事業が与える影響を把握、確認するよう強く求める」と語り、県として長期的に事業に関与する意向もあらためて強調した。
法律に基づくリニア計画の環境アセスは、国土交通相が7月22日までに意見書を公表して実質的に終了する。今月初旬の環境相意見では、「個別の懸念に踏み込んでいない」などと総花的な内容に沿線住民から不満が上がった。知事の発言は、こうした事情も念頭にしたとみられる。
環境省「問題見つからず」 リニア残土、県内置き場
(2014/6/ 6 07:56)
JR東海リニア中央新幹線の環境影響評価(アセスメント)書に対する意見書を国土交通省に提出したことに関連し、環境省は5日、JR東海が静岡県内で予定するリニア中央新幹線のトンネル掘削工事の発生土(残土)置き場について、現地で確認した範囲では具体的な問題は見つかっていないとの認識を示した。
同省の審査官は昨年10月、JR東海が発生土置き場として予定する県内全7カ所を回った。全ての場所が選定要件を満たすかどうかについて、同省担当者はJR東海がまだ選定範囲を十分に絞り込んでいないため「全ての予定地をつぶさに見たわけではない。よく分からない」と語った。
その上で、少なくともいくつかの予定地は周辺が既に人工的に改変されていたことから、同省が回避するよう要請している「自然度の高い区域」には該当せず、登山道から見えにくい場所にあることも要件に適合していたとの見方を示した。
静岡市は伝付峠周辺の扇沢、燕沢の発生土置き場について、山体崩壊の危険があるなどとしてJR東海に見直しを求めている。
リニア中央新幹線工事の環境影響評価準備書に対し、静岡市の田辺信宏市長が22日、公表した意見書。トンネル掘削で発生する土(残土)置き場予定地のうち、南アルプスの標高2千メートル付近の扇沢源頭部(伝付峠周辺)について、「処理は回避すること」と“ノー”を突き付けた。 最大級の残土置き場となる可能性のある燕(つばくろ)沢についても土石流災害への懸念を表明した。残土処理計画について、JR東海に抜本的見直しを迫る内容となっている。
伝付峠周辺は山梨県側からも静岡県側からも地滑りや崩壊による浸食が進み、面積が縮小する不安定な領域。他の残土置き場とは明らかに地形や地質も違い、そこに新たな残土を積み上げれば山体崩壊を促進する恐れがある、と指摘した。
大井川の水に与える影響については、流域の県中西部9市町の首長が強い懸念の声を上げている。住民の生活や産業用水に直結する問題だけに、JRの丁寧な説明が求められている。
上流部にすむヤマトイワナに関しては渓流釣り愛好家が「ヤマトイワナがいないという調査結果は撤回してほしい。今後のJR東海の説明によっては、現地調査を独自で行うことも検討する」としている。
JR「10月着工困難」 リニア、南アルプス区間
(2014/9/ 9 07:31)
JR東海は8日、リニア中央新幹線計画における南アルプスの工事が10月にも始まると一部で伝えられていることについて、「さまざまな手続きがあり、現実的に困難」との認識を明らかにした。
同社中央新幹線建設部環境保全事務所(静岡)の田中雅裕所長が同日、県庁で開かれた県中央新幹線環境保全連絡会議水資源部会の第1回会合で述べた。
田中所長は中心線測量や設計協議、用地買収など着工までに必要な工程を紹介し、「とてもすぐに工事できるスケジュールにない」と強調した。
一方で「南アルプスは綿密な検討を重ねてきた。環境が整えばできるだけ早くという気持ちはある」とし、工事認可が下り次第、速やかに地元向けの事業説明会を実施し、準備を進める意向を示した。
南アルプスの着工時期については、10月にも着手するとの観測が報道ベースで伝えられ、JRも環境影響評価書を公表した先月26日の記者会見で否定しなかった。
「JRは責任対応を」 望月環境相、環境対策求める
(2014/9/ 5 07:30)
望月義夫環境相(衆院静岡4区)は4日、環境省で記者団のインタビューに応じ、JR東海リニア中央新幹線の工事に伴う環境影響に関し、「JR東海は責任ある事業主体として適切な対応をしてもらいたい」と述べ、JR側に環境保全対策の徹底を求めた。
望月氏はJR東海の環境影響評価(アセスメント)の最終的な評価書の内容には「環境影響評価の手続きは既に終了している。環境相意見はおおむね反映されていると思っている」と肯定的な認識を示した。その上で、「南アルプスの環境を決して壊すことがないように指導しているが、JR東海も独自に研究を進めてもらいたい」と指摘した。
JR東海は8月、工事の環境影響評価の最終的な評価書を公表し、国土交通省に工事実施計画の認可を申請している。
一方、世界遺産に登録された富士山の環境保全について「今後、登録が取り消されることもある。国民に広く呼び掛け、大事に守っていかねばならない」と訴えた。
リニア中央新幹線はJR東海が建設を進めており、今年5月に国土交通省から正式に建設指示が出されました。
東京(品川駅)から名古屋駅まで真っ直ぐに路線を築き、総延長286㎞のうち8~9割がトンネルになります。
その途中に横たわる南アルプスの山々については、当初は中央本線に沿って迂回する案も検討されましたが、「速達性を重視したい」というJR東海の主張どおりに、トンネルで貫くことになりました。
路線の概略は…
甲府盆地から西へ進み、釜無川を渡ったところで南へ曲がり、A級活断層である市之瀬断層南部を横切り、旧増穂町(現富士川町)で長大なトンネルに入ります。
このトンネルは、1:25000地形図から推測すると長さはおよそ12~13㎞程度で、大柳渓谷の下をくぐり、早川渓谷の新倉付近に達します。
そして、おそらく1:25000地形図で青崖隧道とあるあたりで川をわたります。このあたり、谷底から尾根までの比高は1000m近くあり、両側の平均的な勾配は30~60°と異常に急なうえ、地すべりや崩壊地が密集しており、とてつもなく急なV字谷になっています。
早川を橋梁で渡り、次に白根南嶺と赤石山脈とを潜り抜ける長大トンネルに入ります。1:25000地形図では24㎞くらいの長さになると思われます。トンネルは広河内川の谷底~転付峠(伝付峠)~二軒小屋~マンノー沢頭~西俣右岸~大日影山付近を経て、長野県大鹿村の釜無集落北方に達するものと思われます。
そして小渋川を橋梁で渡ります。このあたりは地すべり地形が密集しており、土砂災害が常習的に起きている地域で、前々からリニアのトンネル掘削や工事用道路開削による土砂災害誘発が懸念されています。工事用車両が狭い集落内を頻繁に通行することや、橋梁設置による景観の大きな悪化も懸念されます。
そして伊那山地を長さ15㎞ほどの長大なトンネルで潜り抜け、伊那盆地に抜けます。途中で中央構造線を通過するので、懸念の声が強く挙げられています。
このルートの設定にあたり、国土交通省中央新幹線小委員会という専門家会議で環境に関する審議を行ったらしいのですが、出席した委員から「資料が大雑把で審議しようがない」という発言があったのを幸いとして、委員長から「審議を行ったが、沿線自然環境はルート設定の制約条件とはならない」という、実にご都合主義な見解が出され、南アルプスにトンネルを掘ることが既成事実となりました。
詳しくはこちらhttp://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/4464182.html
これだけたくさんの穴を掘れば、当然地下水流動に何らかの悪影響が出るのは必至でしょう。
特に、谷底に沿うようにトンネルが掘られる広河内川、大井川西俣、小渋川水系小河内川では、どのような影響が出るのか全く予想がつきません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
長大トンネル工事の常として、途中に斜坑が設けられます。
斜坑というのは、工期を短縮させるために山の脇腹から本坑へむけて掘る工事補助用のトンネルです。後々、非難通路にするつもりだとか。
どうやら、JR東海は大井川源流部の二軒小屋という、南アルプスのど真ん中に斜坑を設けるつもりのようです。斜坑の深さはおそらく500mほど、ダンプカーの性能を考えると、ある程度勾配を緩やかにしなければならないので、長さは2㎞程度になるかと思われます。
このトンネル工事、3本のトンネルを合計すると400万立方メートル以上の土砂が排出されることになります
(3本合計長さ50000m×トンネル掘削断面積81平方メートル=405万㎥)
ちょっと計算をすると、毎日、とても狭い南アルプスのV字谷へと472tもの岩が掘り出されてくる計算になります。11t積みのダンプカーなら、約43台分。少なくとも、11年間、休日を除く毎日、大型ダンプカーが43往復しなければ、このトンネルを掘ることは物理的に不可能なのです。
さらには大量に発生する汚泥も運搬しなければなりませんし、資材や燃料を積んだ大型車両も通ることになります。斜坑を掘った際に出る岩も運び出さなければなりません。
ということは、少なく見積もっても、大型車両が11年間毎日轟音を響かせて50往復しなければなりません。
トーゼンのことながら、これだけの大型車両を円滑に通行させるために、道路整備をおこなう必要が出てきます。そしてここでも大規模な自然破壊…。
大井川源流部に至る東俣林道は狭く未舗装で、そのうえ土砂崩れでしょっちゅう通行止めになっています。今年の夏も、何度も崩落しています。また、一般車両は通行禁止となっています。ですから林道とはいえ、大きく自然環境や景観を損ねるものではありません。林道沿いにも絶滅危惧種を含む多種多様な植物が生育し、渓流にはイワナやカワネズミなどといった希少な生物も住んでいます。静岡県内で最も大規模な渓畦林(けいはんりん:渓流沿いに立地する、カツラ、サワグルミなどから構成される特殊な林)が見られるのも大井川源流部です。
道路整備…路面を舗装し、道幅拡幅のために山肌を削ってコンクリートで固め、、谷を埋め立てて護岸を整備し、小渓流に砂防ダムをつくり、雨水対策にU字溝を設ける…そして頻繁な大型車両の通行。
→貴重な渓畦林や道ばたのマント群集(ツル植物など)は消滅し、外来雑草がはびこり、川底は流入した砂利で埋まって水生昆虫やそれをエサにする動物は激減し、大型哺乳類や土壌生物の移動は遮断され、騒音ゆえ猛きん類の生態にも悪影響をおよぼす。南アルプスの深山幽谷に残るのは無粋なコンクリート構造物。
工事用道路のイメージ(静岡市清水区布沢川ダム工事用道路)
南アルプスは今まで静寂に包まれてきた、本州最後・最大の無人地帯です。何をどう配慮したって、環境の悪化と自然破壊は免れません。
東京~名古屋を47分で移動するだけのために、全く関係のない南アルプスの自然と景観とを未来永劫にわたってぶち壊すというのが、リニア計画の側面です。
2014年開業にこだわれば、この自然破壊という面を避けることは不可能です。
何度も強調しますが、トンネルをつくる限り、土砂の運搬という問題は物理的に避けることができません。
賢いことだとは思えません。
坑口付近が開けていた谷川岳直下の大清水トンネル等とは違い、とても狭く険しく、通ずる道もない場所で大工事を行うことに、大きな問題が潜んでいるのです。
なにより、このような貴重な場所を簡単に消し去ってしまうのを許容する感性が許せない…。
最後になりますが、静岡市が設置した南アルプス世界自然遺産登録学術検討委員会という組織から、具体的な問題点が数多く指摘されています。こちらもどうぞご覧ください。
http://www.city.shizuoka.jp/deps/seiryuu/houhousho.seiryu.html
日本自然保護協会の意見
httpwww.nacsj.or.jp/katsudo/kokuritsu/
リニア中央新幹線計画において、外来植物・移入種の搬入が南アルプスの生態系に与える危険性は、土砂災害を引き起こしかねない残土捨て場や、大井川の大幅な流量減少に比べて目に見えにくい懸念ですす。しかし林道や工事現場周辺が外来植物で埋め尽くされたら、南アルプスの生態系が根本的に破壊されてしまいます。
長くなりましたので要点をまとめます
・現状では、南アルプスの林道沿いでは外来植物の割合は少ない
・南アルプスという場所である以上、外来種をこれ以上増やしてはいけない
・リニア建設に伴い、人為的に広範囲にわたって裸地が生じる
・そこを大量の砂利や資材を積んだ大型車両が頻繁に出入りする
・大量の人間も出入りする
・これでは裸地が外来種で覆われてしまう
・いったん定着したら根絶は不可能であり、周囲に拡散する
・それは生態系の大きな破壊と南アルプスのもつ価値の低下である
しかし見解書で明らかな通り、現段階で現実的で有効な対策は考えられていません。
これでは南アルプスの生態系が南アルプスのものでなくなってしまいます!!.
アルプスはだれのものか?
[リニア新幹線]
中央リニア新幹線は、超電導磁気浮上方式、軌道から浮上し、時速500キロで走行する。来年中に着工し、2027年に品川、名古屋間を完成する。だが、これからの日本に、時速500キロで走行する鉄道が必要不可欠だろうか?
新幹線は品川を出発し、相模原、甲府、飯田、中津川と、名古屋までの停車駅は4駅のみ。乗降客の99%が、甲府以東の駅と、名古屋に集中するだろう。甲府以外の沿線住民には何の便益ももたらさない。その甲府にしても、すでに1時間強で新宿と結ばれている。東京、名古屋間は、言うまでもなく、東海道新幹線が2時間で走っている。それを最速40分に短縮しても、いったい、この国に、どれだけの便益をもたらすというのか?。
代償が大きすぎる。6兆円に近い巨額建設費(「リニア新幹線は狂気の沙汰」参照)もさることながら、大きな自然破壊を伴う。
南アルプスの壁に長大トンネルをぶちぬくという。南北アルプスは、かけがいのない、国民の資産である。もちろん国立公園である。地熱発電の開発でさえ、国立公園内では制限されているというのに、JR東海という一営利企業が、南アルプスに穴をぶち抜くことが、許されるのか?
リニア新幹線は 高速で走行するため、従来の鉄道のように、山間を縫って走るルートがとれない。障害物があれば、トンネルをぶちぬいてでも、直進せざるをえない。もともと、東京、名古屋間286キロの8割が地下に潜ると云われ、いわば地下鉄に近い路線だが、単なる地下鉄ではない。トンネルの中で浮上走行する、いわばロケットなのである。危険も伴うし、装置も大がかりになる。
最大、最長のトンネルは、地形の制約と路線の直進性から、南アルプスの塩見岳(3047M)と荒川岳(3141M)直下、大井川源流の静岡県・二軒小屋付近から、天竜川源流の長野県・大鹿村付近に抜くと推測されている。トンネルの長さは20キロ以上。トンネルの標高は1500メートルに近い。
この二つの地点は、大井川、天竜川のV字型渓谷に立つ、断崖絶壁の地点で、そこに大型重機をもちこみ、山を掘り進めなければならない。
当然、掘り出された土砂量を処分しなければならないが、おそらく、付近には埋め立て可能な土地は存在しないから、ダンプで土砂を運び出すことになる。そのための道路が必要。山を削り、谷を埋め立て、コンクリートで固め、渓流は護岸し、砂防ダムを建築することになるだろう。
手つかずの自然が残っていた山は、喧噪に包まれ、変形し、緑を失い、土砂に洗われる。工事期間は、おそらく、10年。そして、完成後の南アルプスには、およそ山とはそぐわない、無機質な光景が出現するだろう。植生も、動物の生態も変わる。水害、地すべり、地下断層の変形も心配だ。
何のために、だれのために、こんな大がかりな自然破壊をおこなうのか? くりかえすが、停車駅は4駅のみ。沿線住民には何の便益もないのである。