2016年08月18日13:16
カテゴリ社会科学者の随想福島・原発関係
「経済の論理」ではすでに破綻している原発を再稼働させうる合理的な根拠はない,あるのは核発電が元来有する核兵器との軍事的な関連性のみ
社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1060304225.html
<転載開始>
【原発を再稼働し,その寿命を延長させても,いずれあとには廃炉工程という至難の課題が待ちかまえている】
【「行きはよいよい帰りは怖い 怖いながらも通りゃんせ 通りゃんせ」(「稼働=当面の収益獲得」はともかくよいものの,「廃炉=将来における莫大な処理経費発生」がとても怖い)を地でいく原発行政の愚】
①「やっぱり危ない伊方原発 発電初日の地震直撃に専門家警鐘」(『日刊ゲンダイ』2016年8月17日)
発電初日,襲われた。〔2016年8月〕15日山口県で起きた震度3の地震。伊方原発3号機がある愛媛県伊方町でも震度2を観測した。四国電力では12日に原発を再稼働し,15日から発電と送電を始伊方原発断層画像めたばかり。いきなり地震に “直撃” され,周辺住民は「やっぱり伊方原発は危険だ」と不安を強めている。
出所)画像は,https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/04/16/004921651
伊方原発は以前から,その “危険性” が指摘されてきた。わずか8キロ先に国内最大の活断層「中央構造線断層帯」があるからだ。4月の熊本地震はその延長線上の「布田川・日奈久断層帯」が動いて起きた。愛媛県の中村時広知事は「(伊方原発で)福島と同じことが起こることはない」と断言しているが,なにを根拠にいっているのか。武蔵野学院大の島村英紀特任教授(地震学)がこういう。
補注)この知事の発言はまったくに政治的な発言であって,科学的な根拠などない完全なる妄言である。換言すれば,原発安全神話と少しも変わらぬ次元での発想であり,問答無用にそういわねばならない立場を正直に,それも一方的に宣言している。
島村英紀教授画像
出所)http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/0b3e735cb7ee1c77781b6b92883c1bc0
この種の原発安全に関する発言は,いままでにおける日本の原発史のなかでさんざん聞かされてきた誤謬説である。だがそれでも,いまさらにように愛媛県知事が口にしたという苦しい立場は理解できなくもないが,完全に間違った無理・無体ぶりには呆れるほかない。
〔島村の発言続き→〕 「熊本地震以降,震源地は周辺地域に広がってきています。今回の震源地の伊予灘は伊方原発のすぐ隣にある。非常に怖い場所で起こったといっていい。中央構造線断層帯沿いは,これまで地震が繰り返され,地震に弱い岩盤が広がっていて,不安要素は多いんです。しかも,福島第1原発事故の本当の原因は,まだ地震か津波か,はっきりしていない。そうした段階で,伊方原発を『安全』といい切るのは早すぎるでしょう」。
※-1「電力十分に原油安で再稼働必要なし」。
そもそも,いま危険な「伊方原発」を再稼働させる理由はほとんどない。電力業界は「電力の安定供給に原発は欠かせない」と説明するが,原発稼働がゼロでも,電力は十分足りている。しかも,原油安の影響で火力発電の燃料費も安く済んでいる。「原発のほうがコストは安い」という言い分も,事故対応や廃炉への費用を考えると,正しい見方とはいえない。
補注)「電力の安定供給」体制は原発なしでも,すでに達成できている。とくに今夏からは,政府がこれまでしてきた,電力使用者側に対する特段の節電要請をしなくても済むことになっていた。原油安は定着しており,多少の価格上昇の動勢はあっても,1バレル当たり100ドルを超えていた時期には戻りそうにはなく,50ドル以下(40ドル台)で落ちついている。
以下の議論は,原発の全基が稼働していない時期から,昨年(2015年夏以降)まだ数基しか稼働できていない現在の状況にも妥当する話題である。
--「3・11」以後,電力の不足分を火力発電に代替させるために原油・LNGを多く輸入してきた。そのために日本の貿易収支が赤字になっていた,だから,原発を(コストが安価だという理由をもって)稼働させろと騒いできた電力会社と,これを囲む原子力村利害共同体諸集団は,その後,原油価格が大幅に値下げし,そのように主張する理由がなくなった段階に至っていた。ところが,こんどは,その「反対方向でもっていうべき理屈」については,いっさい口をつぐんだまま,けっしてなにもいおうとしなかった。
どうなる原発のコスト画像 ということで,原発推進派が主張するところに一貫性のないことだけは,確実になっていた。しかもその間,「3・11」以降においては,自然・再生可能エネルギーの高度な開発・利用がじわじわと浸透・普及しだしている。
出所)右側画像は,http://genpatsu173.blog.fc2.com/blog-entry-332.html
逆に,原発の不要性・不利性・害悪性はますます不可避な事態をも迎えており,一般庶民にも認識が深まっている。それゆえ,皮肉になにかをいうといった以前において,すでに完全に《落ち目である原発再稼働派》の主張が,なお前面にしゃしゃり出てくるようでは,日本のエネルギー政策の根本からの転換が遅延させられるばかりである。
原発コストの「最安価」論が非現実的な幻想「論」であることは明瞭になっている。だからこそ実は,それ以外の関連する事情をもってなのであるが,愛媛県知事のように原発に事故が起こることはありえない,それもとくに四国電力の「伊方原発では福島原発と同じことが起こりえない」などと,合理的な根拠もないままに断言している。だが,これは安全神話の崩壊すらも完全に無視した暴論でしかない。問題は「なぜ,知事をしてそういわせるのか」という疑問に焦点が向けられる。
〔記事本文に戻る ↓ 〕
※-2 ジャーナリスト・横田 一氏はこういう。電力会社が再稼働を急ぐのは,すでに燃料も買って施設もあるからです。初期投資が大きい原発では,なるべく長期で使用したほうが,経営上はプラスになる。政治家側も,現在は電力会社から直接の政治献金はありませんが,選挙時に運動員を出すという人件費の無償提供を受けている。
『脱原発』という候補には,『応援しないぞ』と脅しをかけるケースも多い。選挙を “人質” にとられ,原発推進にならざるをえないんです」。つまり,国民の安全よりも,大切なのはカネと選挙ということだ。発電初日に伊方原発を揺らした地震は,天の啓示ではないか。
註記)http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187842/2
つぎに「原子力発電所をめぐる原子力産業の関連図表」を参照しておくが,ともかく原発産業の裾野は広い。この図解に出ているのはそれでもまだ「電力を生産している原発」工程の範囲にとどまるが,いまではすでに「廃炉工程に入った原発」が,この「後」工程に群がる諸産業・諸企業にとって「オイシイ商売の種」になっている。電気を作ると作らないとを問わずこのように原発産業は,非常なる金喰い虫である。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
原子力発電所のための各種産業図表
出所)http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit_nuclear-power_japan.pdf
原発全基停止中2014年5月時点画像
このうち下にかかげた図表においては「運転中」という理解しがたい,まことに奇妙な表現が出ている。「稼働中」でも「営業運転」でも「ない状態」にあった原発が,この表現のように「運転中」という表現でもって,その存在を「誇示(?)」されているらしいのである。実際には,原発が運転を「休止」している〈記事〉のための説明字句であるはずなのに,ずいぶんヘンテコな表記を当てている。
ここで断わっておくが,,この図表を借りた資料の表紙には,“日本の原子力発電の概要 (プレスキット)』2014年5月27日,(一社)日本原子力産業協会政策・コミュニケーション部”,と記載されている。2014年5月27日の時点は,いうまでもなく,「2014年9月15日に日本全国の原発が稼働を停止して1年を迎えていた」時期に入っていた。
その状況のなかであったのだから「原発は休止中」なのであり,ただ物的に存在していた事実(稼働中でも運転中でもない原発が発電所の敷地内あった時期という意味において)を,そのように「運転中」と表現するのは,奇妙奇天烈であるどころか,理解に苦しむ日本語の使用法である。
いずれにせよ,「3・11」原発事故を起こした東電福島第1原発事故現場の後始末は,いまだに廃炉工程にすら勧めない状況に置かれているが,東電の経営会計全体に対してはすでに,われわれの血税関係の資金が実質的に10兆円以上も超えて投入されている。原発が物理化学的に《悪魔の火》であり,絶対に利用してはいけなかった〔核兵器以外には!〕という大事な認識を,福島第1原発事故はあらためて実物教育しているのである。
②「高浜原発の燃料取り出し開始 運転差し止め,長期停止見越し」(『東京新聞』2016年8月17日 13時57分)
関西電力は〔2016年8月〕17日,高浜原発4号機(福井県高浜町)に装填(そうてん)されている核燃料をとり出す作業を始めた。19日に終了する予定。高浜3・4号機の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定に対する執行停止の申し立てが6月に却下され,長期停止の可能性があることから異例のとり出しを決めた。関電は大津地裁の仮処分決定を不服として大阪高裁に抗告しており,高裁の審理で仮処分決定が覆れば,2基を再稼働できる。抗告審は秋以降に始まるとみられる。
4号機には現在,プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料四体を含む 157体が装填されていて,とり出した核燃料は使用済み燃料プールに移す。3号機は9月5~7日に核燃料をとり出す。管理を容易化するため,すでに保管されている別の燃料とまとめる。
3・4号機は今〔2016〕年1~2月に相次いで再稼働した。しかし大津地裁が3月に運転を差し止める仮処分を決定。関電は仮処分決定の執行停止に加え,異議も申し立てたが,却下されたため,7月に大阪高裁に抗告した。関電は運転停止による代替発電で1日当たり約3億円の損失が出るとして,早期に仮処分の効力を止めるよう求めている。
現在稼働中の原発は九州電力川内(せんだい)原発1・2号機(鹿児島県),四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県)の3基。いずれも運転差し止めを求める仮処分を申し立てられたり,訴訟が起こされたりしている。
【解説】 〈高浜原発4号機〉は,福井県高浜町にある関西電力の原発。加圧水型軽水炉(PWR)で,出力は87万キロワット。1985年に営業運転を開始した。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏内には,京都府舞鶴市や滋賀県高島市の一部も含まれる。3号機も1985年に運転が始まった。
註記)http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081790135705.html
つぎの図表は「原発出力合計図表」である。4千万キロワット時になっている原発の総発電能力であるが,この能力水準に相当する自然・再生可能エネルギーの開発・利用が準備・提供されつつある事実を指摘しておく必要もある。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
原発出力総計図表画像
出所)http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02050110/06.gif
なお,ここでは,認定NPO法人・環境エネルギー政策研究『自然エネルギー白書 2015 サマリー版』の参照をお願いしておきたい。原発がもはや要らなくなっている事由が説得的に記述されている。
③「大型風力発電相次ぐ エコ・パワー,1000億円投資 買い取り制度が後押し」(『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊11面「企業総合」)
国内で大型風力発電所の新設計画が相次ぐ。エコ・パワー(東京・品川)は1000億円以上を投じ,2030年までに発電能力を現在の10倍の計200万キロワットに増やす。ユーラスエナジーホールディングス(東京・港)も最大80万キロワットの事業を計画。再生可能『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊風力発電画像資料エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の後押しにくわえ,マイナス金利で資金調達がしやすくなり積極投資する。
政府は2030年の電源構成見通し(ベストミックス)で,再生可能エネルギーを22~24%に高め,このうち風力は2015年末比3倍以上の1000万キロワットまで増やす方針を示している。これまでは設置が容易な太陽光発電の導入が先行しているが,風力は太陽光よりも発電効率が高く,木やヤシ殻などを燃やして電気を作るバイオマスのように燃料調達の必要がない。このため再生エネの主力として期待されている。
補注)なお原発1基あたりの発電能力(出力)は,ここでは比較しやすいように100万キロワット時と理解しておくにする。
『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊風力発電関連表
エコ・パワーは,まず2222年度までに約1000億円を投じ,発電能力を50万キロワットまで拡大。2030年に計200万キロワットまで増やす。同社は現在,全国で計約18万キロワットの風力発電所を運営する。2022年度までに陸上では北海道や福島県,洋上では秋田県で丸紅などと約15万キロワットの発電所の建設を進める。
風力発電の国内首位で現在,約65万キロワットの風力発電所を運営するユーラスは,稚内市など北海道北部で,7つの風力発電事業の環境影響評価(アセスメント)を進めている。送電線の新設が必要だが,実現すれば道北だけで合計最大80万キロワットの発電能力が増える。
補注)北電が所有する原発は,北電自身の解説では分かりにくいので,ウィキペディアから参照すると,つぎの3基である。原子炉形式→運転開始→定格出力→現況の順に書いてある。
◇-1 1号機(加圧水型軽水炉)……1989年6月22日 57.9万kW 定期点検中
◇-2 2号機(加圧水型軽水炉)……1991年4月12日 57.9万kW 定期点検中
◇-3 3号機(加圧水型軽水炉)……2009年12月22日 91.2万kW 定期点検中
北電管内ではこのように,道北地区における風力発電だけでも,北電の所有する原発1基分が発電する電力に相当する出力が期待できているという。ほかの自然・再生可能エネルギーの開発・利用も各種あるが,北海道地域の場合は風力発電が有力な方式である。日本国内の電力事情(需給関係)においても,このように大きく影響する自然・再生可能エネルギーの開発・利用を踏まえていえば,原発の不要性に関する議論は進むほかあるまい。
〔記事本文に戻る→〕 国内では大型の風力発電所の建設計画が相次ぐ。国内2位のJパワーは秋田県由利本荘市に1万6100キロワット,北海道せたな町に5万キロワットの風力発電所を建設中だ。3位の日本風力開発は開発中の案件を国内で計30万キロワット以上もつ。ゴールドマン・サックス系のジャパン・リニューアブル・エナジー(東京・港)が宮崎県に自社開発の案件を初めて建設するなど新規参入も増える。
風力発電で起こした電気のFITによる買い取り価格は現在,陸上が1キロワット時あたり22円,洋上では同36円。再生エネで先行した太陽光発電は,2012年のFIT開始時に40円だった買い取り価格が24円に下がった。設置コストが安くなったことなどが理由で,風力発電による電気を売るほうが有利な環境になっている。
1997年設立のエコ・パワーなど風力大手は,日本各地で大型発電の事業開発や安定運営で経験を積んできた。一般に風力は太陽光に比べて初期投資は大きいが,マイナス金利下で「機関投資家の風力への投資意欲が高まった」(関係者)という。大型案件に向けた資金調達がしやすい環境となっている。
④「風力発電,2030年には世界で5倍増も 全電源の2割に達する可能性」(『ハフィンポスト』投稿日: 2014年10月22日 18時06分 JST 更新: 2014年10月22日 18時06分 JST)
世界風力エネルギー会議(GWEC)は,2030年までに世界の風力発電設備容量が現在の5倍強に相当する2000ギガワット(GW)に達し,電源構成の19%を占める可能性があるとの見通しを示した。
補注)1GWとは1,000,000キロワットであり,100万キロワット。
国際環境NGOのグリーンピースと共同でまとめた報告書を〔2014年10月〕21日公表した。2013年末時点の世界の風力発電設備容量は318GWで,電源構成に占めるシェアは3%だった。設備容量は2014年には45GW増加し,363GWになるとみられている。
同報告でGWECは,2020年,2030年,2050年における風力発電を3つのシナリオに分けて予想。国際エネルギー機関(IEA)の予測にもとづくもっとも保守的なシナリオでは2030年の風力発電設備容量を964GWとしている。
しかし,再生可能エネルギーに関する現在の政策を基礎として,2015年の国連気候変動パリ会議(COP21)で控えめな温暖化ガス削減目標が採択されるシナリオで試算した場合,2030年の設備容量は1500GWになり,風力発電は電源構成の13%~15%を占めるという。
各国が積極的に再生可能エネルギーを推進し,より健全な温暖化ガス削減目標が採択される前提での試算では,2030年の世界の風力発電設備容量は2000GWに達し,電源構成の17%~19%を占めるようになるという。さらに同シナリオでは2050年の設備容量は4000GWになるとしている。
風力発電については,政府補助が電力料金の上昇につながっているとして欧州を中心として推進に反対する意見も強い。しかし,GWECのスティーブ・ソーヤー事務局長は,電力供給能力を増強する上で風力による発電コストがもっとも安い国・地域が増えており,価格も下落が続いていると指摘した。
そのうえで「温暖化ガス削減が喫緊の課題となるなか,輸入化石燃料への依存度が高止まりしている現状を考えると,未来のエネルギー供給に風力発電が大きな役割を果たすことになることは間違いない」と語る。
GWECは,ブラジル,メキシコ,南アフリカの3国を風力エネルギーの成長市場とし,ブラジルでは2014年だけで4GWの設備容量増加がみこまれ,メキシコは今後10年に年間2GWの増加が続くと予想している。
註記)http://www.huffingtonpost.jp/2014/10/22/windfarm-increase-2030_n_6026248.html
ここでつぎの画像資料をみたい。これは,原発用の核燃料を「国産」に分類している。だが,これは〈欺瞞的な仕分け方〉である。たしかいままでは,核燃料は「準国産」だといいつづけてきたはずのものが,「3・11」以降になると,いつの間にかこのように核燃料は「国産」だと偽りだしている(この指摘は以下の図表においては「エネルギー自給率(%)」における数値に注目していうものである)。日本の原発の燃料は国産ではない。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
日本のエネルギー源別構成比率画像
出所)http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/outline/
補注)経済産業省資源エネルギー庁は,このような〈図々しいいいかえ〉を平気でおこなえる〈厚かましい官庁〉であるらしい。この論法でいくと,外国から輸入した小麦粉を加工したうえで,これを原料にして作ったパンでも〈純〉国産品になりそうである。つぎの図表もみておこう。核燃料の調達先は外国ばかりである。
主要燃料の調達先画像
出所)http://kuippa.com/blog/2015/08/13/原発論。取り除き難きは正論に紛れ巣食うもの。/
経済産業省資源エネルギー庁は,2030年における原発の電源構成比率(いわゆる「ベストミックス」)を22~23(20~23%)という原案に示してきた。だが,そもそも「3・11」以来5年半近くが経過してきた現在,その「%」に実質相当する比率分は,すでに節電され削電できている。
当面の原油・液化の価格も低めに安定している。原発コストの急激な上昇(もともと本来の高コストが表面に出てきて現象してきたに過ぎないが)が明白になっている現段階において,この原発の再稼働にしゃかりきになっている電力会社と国家側関係官庁の基本姿勢は,自然・再生可能エネルギーの開発・利用を妨害するような,なかでも後者は行政の指導が主であって,エネルギー問題全体に対して観ると,文字どおり反動形成の国家組織・機関である。
経済産業省資源エネルギー庁は電力会社のいいなりに,あるいは進んでご奉仕だけするような,日本のこれからにとって必要不可欠であるエネルギー政策とはいえないような,担当官庁としての仕事っぷりであった。その後に及んでもなお,自然・再生可能エネルギーの開発・利用に不熱心であると判断されるような,根本的な基本姿勢を切り替えていない。日本国におけるエネルギー問題をまともな方向へともっていくための,つまりエネルギー自給率を高めるための近道は,自然・再生可能エネルギーの開発・利用にみいだすべきことは,自明に過ぎる選択肢である。
⑤ 自然・再生可能エネルギーの開発・利用の可能性・展望
こういう意見:「再生可能エネルギーはこんなに広がる」があるが,あなたならどう思うか? 『緑の党』の主張であるが,単に主張としてではなく,現実問題に関する見通しとして受けとめ,考えてみたい論点である。
1)日本がもつ再生可能エネルギーのポテンシャル
環境省が2012年に発表した再生可能エネルギーポテンシャル調査によれば,日本国内では,風力発電 40,000億kWh,太陽光発電(住宅を除く)約 1,600億kWh,中小水力発電約 800億kWh,地熱発電約 900億kWhの再生可能エネルギーの導入可能性があります。
数字だけをみれば,日本のエネルギー需要を十分賄うことが可能になっています。ただし実際には,たとえば風力発電の適地は北海道や東北等の一部に偏っていたり,国土が狭い日本では土地用途の利用調整が必要だったり,ポテンシャルを活かす工夫が必要になってきます。
2)再生可能エネルギーを大きく拡大する条件
2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり,発電事業参入への経済的インセンティブは整いました。制度開始から約8ヶ月が経過しましたが,太陽光発電については住宅用・産業ともに導入が増加しています。
しかし同時に,再生可能エネルギー適地への電力系統の整備に早急に着手し,再生可能エネルギー電源の受け入れ態勢を整備する必要があります。さらには,発送電分離を含む電力システム改革を,先行する欧米の経験にも学びながら進めていく必要があります。
日本のエネルギー消費量のうち約4分の3を占める熱エネルギーについても対策が必要です。工場等でボイラーの燃料として使われている重油,家庭や事業所などで暖房や給湯として使われている灯油やガスなどを再生可能エネルギーに置きかえるなど,とり組むべきことは多くあり,熱政策の整備もおこなう必要があります。
電源構成みとおし画像
出所)http://editor.fem.jp/blog/?p=203
この画像資料を参照した記述はこういう題名であった。
「脱原発と再生可能エネルギーシフトが雇用拡大・経済
発展もたらす-日本の電力消費の3倍ものポテンシャル
もつ再生可能エネルギーは原発産業の8倍もの雇用増や
す」(2015/8/11)。この記述も参照に値する。
上記のアドレス( ↑ )には,リンクを張ってある。
3)再生可能エネルギー100%の未来をめざして
再生可能エネルギーの未来は私たちのひとつひとつの「選択」の積み重ねにより決まります。同時に,国が “脱原発・エネルギーシフト” の大きな方向性を示し,選択肢を用意することは非常に重要です。私たち緑の党は,知恵・ネットワークを活かし,明確にエネルギーシフトを進める政策を打ち出し,実行していきます。
註記)http://greens.gr.jp/seisaku-list/5940/
以上は政党の〈標語的な主張〉である。だが,けっして不可能な方向性を語っているのではない。その気になってとり組む気されあれば,紆余曲折は予想されるものの,必らず実現できる「近未来の目標」である。ただし,原発の再稼働にこだわる原子力村利害共同体諸集団の面々にあっては,当面する自分たちの利害が彼らの視界を遮っており,自然・再生可能エネルギーの開発・利用に対する阻害要因になっている。
だからこそ,国家主体が一国のエネルギー資源調達問題を自然・再生可能エネルギーの開発・利用に向かわせねばならない。ところが,この日本国じたいが,原発依存病に罹患している原子力村を抱えている制度・基盤でもある。あまつさえ,この病状ををみずから矯正し,方向転換することを嫌がっている。
いずれにせよ,いまもなお,時代の流れに対しては反動形成分子であるその諸勢力(国家・支配体制)側が実権を掌握している点に変わりはない。だが,この勢力の妨害を抑えこみ,乗り越えながら,エネルギー資源基盤を根本から改革していく必要がある。
<転載終了>
カテゴリ社会科学者の随想福島・原発関係
「経済の論理」ではすでに破綻している原発を再稼働させうる合理的な根拠はない,あるのは核発電が元来有する核兵器との軍事的な関連性のみ
社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1060304225.html
<転載開始>
【原発を再稼働し,その寿命を延長させても,いずれあとには廃炉工程という至難の課題が待ちかまえている】
【「行きはよいよい帰りは怖い 怖いながらも通りゃんせ 通りゃんせ」(「稼働=当面の収益獲得」はともかくよいものの,「廃炉=将来における莫大な処理経費発生」がとても怖い)を地でいく原発行政の愚】
①「やっぱり危ない伊方原発 発電初日の地震直撃に専門家警鐘」(『日刊ゲンダイ』2016年8月17日)
発電初日,襲われた。〔2016年8月〕15日山口県で起きた震度3の地震。伊方原発3号機がある愛媛県伊方町でも震度2を観測した。四国電力では12日に原発を再稼働し,15日から発電と送電を始伊方原発断層画像めたばかり。いきなり地震に “直撃” され,周辺住民は「やっぱり伊方原発は危険だ」と不安を強めている。
出所)画像は,https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/04/16/004921651
伊方原発は以前から,その “危険性” が指摘されてきた。わずか8キロ先に国内最大の活断層「中央構造線断層帯」があるからだ。4月の熊本地震はその延長線上の「布田川・日奈久断層帯」が動いて起きた。愛媛県の中村時広知事は「(伊方原発で)福島と同じことが起こることはない」と断言しているが,なにを根拠にいっているのか。武蔵野学院大の島村英紀特任教授(地震学)がこういう。
補注)この知事の発言はまったくに政治的な発言であって,科学的な根拠などない完全なる妄言である。換言すれば,原発安全神話と少しも変わらぬ次元での発想であり,問答無用にそういわねばならない立場を正直に,それも一方的に宣言している。
島村英紀教授画像
出所)http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/0b3e735cb7ee1c77781b6b92883c1bc0
この種の原発安全に関する発言は,いままでにおける日本の原発史のなかでさんざん聞かされてきた誤謬説である。だがそれでも,いまさらにように愛媛県知事が口にしたという苦しい立場は理解できなくもないが,完全に間違った無理・無体ぶりには呆れるほかない。
〔島村の発言続き→〕 「熊本地震以降,震源地は周辺地域に広がってきています。今回の震源地の伊予灘は伊方原発のすぐ隣にある。非常に怖い場所で起こったといっていい。中央構造線断層帯沿いは,これまで地震が繰り返され,地震に弱い岩盤が広がっていて,不安要素は多いんです。しかも,福島第1原発事故の本当の原因は,まだ地震か津波か,はっきりしていない。そうした段階で,伊方原発を『安全』といい切るのは早すぎるでしょう」。
※-1「電力十分に原油安で再稼働必要なし」。
そもそも,いま危険な「伊方原発」を再稼働させる理由はほとんどない。電力業界は「電力の安定供給に原発は欠かせない」と説明するが,原発稼働がゼロでも,電力は十分足りている。しかも,原油安の影響で火力発電の燃料費も安く済んでいる。「原発のほうがコストは安い」という言い分も,事故対応や廃炉への費用を考えると,正しい見方とはいえない。
補注)「電力の安定供給」体制は原発なしでも,すでに達成できている。とくに今夏からは,政府がこれまでしてきた,電力使用者側に対する特段の節電要請をしなくても済むことになっていた。原油安は定着しており,多少の価格上昇の動勢はあっても,1バレル当たり100ドルを超えていた時期には戻りそうにはなく,50ドル以下(40ドル台)で落ちついている。
以下の議論は,原発の全基が稼働していない時期から,昨年(2015年夏以降)まだ数基しか稼働できていない現在の状況にも妥当する話題である。
--「3・11」以後,電力の不足分を火力発電に代替させるために原油・LNGを多く輸入してきた。そのために日本の貿易収支が赤字になっていた,だから,原発を(コストが安価だという理由をもって)稼働させろと騒いできた電力会社と,これを囲む原子力村利害共同体諸集団は,その後,原油価格が大幅に値下げし,そのように主張する理由がなくなった段階に至っていた。ところが,こんどは,その「反対方向でもっていうべき理屈」については,いっさい口をつぐんだまま,けっしてなにもいおうとしなかった。
どうなる原発のコスト画像 ということで,原発推進派が主張するところに一貫性のないことだけは,確実になっていた。しかもその間,「3・11」以降においては,自然・再生可能エネルギーの高度な開発・利用がじわじわと浸透・普及しだしている。
出所)右側画像は,http://genpatsu173.blog.fc2.com/blog-entry-332.html
逆に,原発の不要性・不利性・害悪性はますます不可避な事態をも迎えており,一般庶民にも認識が深まっている。それゆえ,皮肉になにかをいうといった以前において,すでに完全に《落ち目である原発再稼働派》の主張が,なお前面にしゃしゃり出てくるようでは,日本のエネルギー政策の根本からの転換が遅延させられるばかりである。
原発コストの「最安価」論が非現実的な幻想「論」であることは明瞭になっている。だからこそ実は,それ以外の関連する事情をもってなのであるが,愛媛県知事のように原発に事故が起こることはありえない,それもとくに四国電力の「伊方原発では福島原発と同じことが起こりえない」などと,合理的な根拠もないままに断言している。だが,これは安全神話の崩壊すらも完全に無視した暴論でしかない。問題は「なぜ,知事をしてそういわせるのか」という疑問に焦点が向けられる。
〔記事本文に戻る ↓ 〕
※-2 ジャーナリスト・横田 一氏はこういう。電力会社が再稼働を急ぐのは,すでに燃料も買って施設もあるからです。初期投資が大きい原発では,なるべく長期で使用したほうが,経営上はプラスになる。政治家側も,現在は電力会社から直接の政治献金はありませんが,選挙時に運動員を出すという人件費の無償提供を受けている。
『脱原発』という候補には,『応援しないぞ』と脅しをかけるケースも多い。選挙を “人質” にとられ,原発推進にならざるをえないんです」。つまり,国民の安全よりも,大切なのはカネと選挙ということだ。発電初日に伊方原発を揺らした地震は,天の啓示ではないか。
註記)http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187842/2
つぎに「原子力発電所をめぐる原子力産業の関連図表」を参照しておくが,ともかく原発産業の裾野は広い。この図解に出ているのはそれでもまだ「電力を生産している原発」工程の範囲にとどまるが,いまではすでに「廃炉工程に入った原発」が,この「後」工程に群がる諸産業・諸企業にとって「オイシイ商売の種」になっている。電気を作ると作らないとを問わずこのように原発産業は,非常なる金喰い虫である。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
原子力発電所のための各種産業図表
出所)http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit_nuclear-power_japan.pdf
原発全基停止中2014年5月時点画像
このうち下にかかげた図表においては「運転中」という理解しがたい,まことに奇妙な表現が出ている。「稼働中」でも「営業運転」でも「ない状態」にあった原発が,この表現のように「運転中」という表現でもって,その存在を「誇示(?)」されているらしいのである。実際には,原発が運転を「休止」している〈記事〉のための説明字句であるはずなのに,ずいぶんヘンテコな表記を当てている。
ここで断わっておくが,,この図表を借りた資料の表紙には,“日本の原子力発電の概要 (プレスキット)』2014年5月27日,(一社)日本原子力産業協会政策・コミュニケーション部”,と記載されている。2014年5月27日の時点は,いうまでもなく,「2014年9月15日に日本全国の原発が稼働を停止して1年を迎えていた」時期に入っていた。
その状況のなかであったのだから「原発は休止中」なのであり,ただ物的に存在していた事実(稼働中でも運転中でもない原発が発電所の敷地内あった時期という意味において)を,そのように「運転中」と表現するのは,奇妙奇天烈であるどころか,理解に苦しむ日本語の使用法である。
いずれにせよ,「3・11」原発事故を起こした東電福島第1原発事故現場の後始末は,いまだに廃炉工程にすら勧めない状況に置かれているが,東電の経営会計全体に対してはすでに,われわれの血税関係の資金が実質的に10兆円以上も超えて投入されている。原発が物理化学的に《悪魔の火》であり,絶対に利用してはいけなかった〔核兵器以外には!〕という大事な認識を,福島第1原発事故はあらためて実物教育しているのである。
②「高浜原発の燃料取り出し開始 運転差し止め,長期停止見越し」(『東京新聞』2016年8月17日 13時57分)
関西電力は〔2016年8月〕17日,高浜原発4号機(福井県高浜町)に装填(そうてん)されている核燃料をとり出す作業を始めた。19日に終了する予定。高浜3・4号機の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定に対する執行停止の申し立てが6月に却下され,長期停止の可能性があることから異例のとり出しを決めた。関電は大津地裁の仮処分決定を不服として大阪高裁に抗告しており,高裁の審理で仮処分決定が覆れば,2基を再稼働できる。抗告審は秋以降に始まるとみられる。
4号機には現在,プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料四体を含む 157体が装填されていて,とり出した核燃料は使用済み燃料プールに移す。3号機は9月5~7日に核燃料をとり出す。管理を容易化するため,すでに保管されている別の燃料とまとめる。
3・4号機は今〔2016〕年1~2月に相次いで再稼働した。しかし大津地裁が3月に運転を差し止める仮処分を決定。関電は仮処分決定の執行停止に加え,異議も申し立てたが,却下されたため,7月に大阪高裁に抗告した。関電は運転停止による代替発電で1日当たり約3億円の損失が出るとして,早期に仮処分の効力を止めるよう求めている。
現在稼働中の原発は九州電力川内(せんだい)原発1・2号機(鹿児島県),四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県)の3基。いずれも運転差し止めを求める仮処分を申し立てられたり,訴訟が起こされたりしている。
【解説】 〈高浜原発4号機〉は,福井県高浜町にある関西電力の原発。加圧水型軽水炉(PWR)で,出力は87万キロワット。1985年に営業運転を開始した。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏内には,京都府舞鶴市や滋賀県高島市の一部も含まれる。3号機も1985年に運転が始まった。
註記)http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081790135705.html
つぎの図表は「原発出力合計図表」である。4千万キロワット時になっている原発の総発電能力であるが,この能力水準に相当する自然・再生可能エネルギーの開発・利用が準備・提供されつつある事実を指摘しておく必要もある。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
原発出力総計図表画像
出所)http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02050110/06.gif
なお,ここでは,認定NPO法人・環境エネルギー政策研究『自然エネルギー白書 2015 サマリー版』の参照をお願いしておきたい。原発がもはや要らなくなっている事由が説得的に記述されている。
③「大型風力発電相次ぐ エコ・パワー,1000億円投資 買い取り制度が後押し」(『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊11面「企業総合」)
国内で大型風力発電所の新設計画が相次ぐ。エコ・パワー(東京・品川)は1000億円以上を投じ,2030年までに発電能力を現在の10倍の計200万キロワットに増やす。ユーラスエナジーホールディングス(東京・港)も最大80万キロワットの事業を計画。再生可能『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊風力発電画像資料エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の後押しにくわえ,マイナス金利で資金調達がしやすくなり積極投資する。
政府は2030年の電源構成見通し(ベストミックス)で,再生可能エネルギーを22~24%に高め,このうち風力は2015年末比3倍以上の1000万キロワットまで増やす方針を示している。これまでは設置が容易な太陽光発電の導入が先行しているが,風力は太陽光よりも発電効率が高く,木やヤシ殻などを燃やして電気を作るバイオマスのように燃料調達の必要がない。このため再生エネの主力として期待されている。
補注)なお原発1基あたりの発電能力(出力)は,ここでは比較しやすいように100万キロワット時と理解しておくにする。
『日本経済新聞』2016年8月17日朝刊風力発電関連表
エコ・パワーは,まず2222年度までに約1000億円を投じ,発電能力を50万キロワットまで拡大。2030年に計200万キロワットまで増やす。同社は現在,全国で計約18万キロワットの風力発電所を運営する。2022年度までに陸上では北海道や福島県,洋上では秋田県で丸紅などと約15万キロワットの発電所の建設を進める。
風力発電の国内首位で現在,約65万キロワットの風力発電所を運営するユーラスは,稚内市など北海道北部で,7つの風力発電事業の環境影響評価(アセスメント)を進めている。送電線の新設が必要だが,実現すれば道北だけで合計最大80万キロワットの発電能力が増える。
補注)北電が所有する原発は,北電自身の解説では分かりにくいので,ウィキペディアから参照すると,つぎの3基である。原子炉形式→運転開始→定格出力→現況の順に書いてある。
◇-1 1号機(加圧水型軽水炉)……1989年6月22日 57.9万kW 定期点検中
◇-2 2号機(加圧水型軽水炉)……1991年4月12日 57.9万kW 定期点検中
◇-3 3号機(加圧水型軽水炉)……2009年12月22日 91.2万kW 定期点検中
北電管内ではこのように,道北地区における風力発電だけでも,北電の所有する原発1基分が発電する電力に相当する出力が期待できているという。ほかの自然・再生可能エネルギーの開発・利用も各種あるが,北海道地域の場合は風力発電が有力な方式である。日本国内の電力事情(需給関係)においても,このように大きく影響する自然・再生可能エネルギーの開発・利用を踏まえていえば,原発の不要性に関する議論は進むほかあるまい。
〔記事本文に戻る→〕 国内では大型の風力発電所の建設計画が相次ぐ。国内2位のJパワーは秋田県由利本荘市に1万6100キロワット,北海道せたな町に5万キロワットの風力発電所を建設中だ。3位の日本風力開発は開発中の案件を国内で計30万キロワット以上もつ。ゴールドマン・サックス系のジャパン・リニューアブル・エナジー(東京・港)が宮崎県に自社開発の案件を初めて建設するなど新規参入も増える。
風力発電で起こした電気のFITによる買い取り価格は現在,陸上が1キロワット時あたり22円,洋上では同36円。再生エネで先行した太陽光発電は,2012年のFIT開始時に40円だった買い取り価格が24円に下がった。設置コストが安くなったことなどが理由で,風力発電による電気を売るほうが有利な環境になっている。
1997年設立のエコ・パワーなど風力大手は,日本各地で大型発電の事業開発や安定運営で経験を積んできた。一般に風力は太陽光に比べて初期投資は大きいが,マイナス金利下で「機関投資家の風力への投資意欲が高まった」(関係者)という。大型案件に向けた資金調達がしやすい環境となっている。
④「風力発電,2030年には世界で5倍増も 全電源の2割に達する可能性」(『ハフィンポスト』投稿日: 2014年10月22日 18時06分 JST 更新: 2014年10月22日 18時06分 JST)
世界風力エネルギー会議(GWEC)は,2030年までに世界の風力発電設備容量が現在の5倍強に相当する2000ギガワット(GW)に達し,電源構成の19%を占める可能性があるとの見通しを示した。
補注)1GWとは1,000,000キロワットであり,100万キロワット。
国際環境NGOのグリーンピースと共同でまとめた報告書を〔2014年10月〕21日公表した。2013年末時点の世界の風力発電設備容量は318GWで,電源構成に占めるシェアは3%だった。設備容量は2014年には45GW増加し,363GWになるとみられている。
同報告でGWECは,2020年,2030年,2050年における風力発電を3つのシナリオに分けて予想。国際エネルギー機関(IEA)の予測にもとづくもっとも保守的なシナリオでは2030年の風力発電設備容量を964GWとしている。
しかし,再生可能エネルギーに関する現在の政策を基礎として,2015年の国連気候変動パリ会議(COP21)で控えめな温暖化ガス削減目標が採択されるシナリオで試算した場合,2030年の設備容量は1500GWになり,風力発電は電源構成の13%~15%を占めるという。
各国が積極的に再生可能エネルギーを推進し,より健全な温暖化ガス削減目標が採択される前提での試算では,2030年の世界の風力発電設備容量は2000GWに達し,電源構成の17%~19%を占めるようになるという。さらに同シナリオでは2050年の設備容量は4000GWになるとしている。
風力発電については,政府補助が電力料金の上昇につながっているとして欧州を中心として推進に反対する意見も強い。しかし,GWECのスティーブ・ソーヤー事務局長は,電力供給能力を増強する上で風力による発電コストがもっとも安い国・地域が増えており,価格も下落が続いていると指摘した。
そのうえで「温暖化ガス削減が喫緊の課題となるなか,輸入化石燃料への依存度が高止まりしている現状を考えると,未来のエネルギー供給に風力発電が大きな役割を果たすことになることは間違いない」と語る。
GWECは,ブラジル,メキシコ,南アフリカの3国を風力エネルギーの成長市場とし,ブラジルでは2014年だけで4GWの設備容量増加がみこまれ,メキシコは今後10年に年間2GWの増加が続くと予想している。
註記)http://www.huffingtonpost.jp/2014/10/22/windfarm-increase-2030_n_6026248.html
ここでつぎの画像資料をみたい。これは,原発用の核燃料を「国産」に分類している。だが,これは〈欺瞞的な仕分け方〉である。たしかいままでは,核燃料は「準国産」だといいつづけてきたはずのものが,「3・11」以降になると,いつの間にかこのように核燃料は「国産」だと偽りだしている(この指摘は以下の図表においては「エネルギー自給率(%)」における数値に注目していうものである)。日本の原発の燃料は国産ではない。( ↓ 画面 クリックで 拡大・可)
日本のエネルギー源別構成比率画像
出所)http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/outline/
補注)経済産業省資源エネルギー庁は,このような〈図々しいいいかえ〉を平気でおこなえる〈厚かましい官庁〉であるらしい。この論法でいくと,外国から輸入した小麦粉を加工したうえで,これを原料にして作ったパンでも〈純〉国産品になりそうである。つぎの図表もみておこう。核燃料の調達先は外国ばかりである。
主要燃料の調達先画像
出所)http://kuippa.com/blog/2015/08/13/原発論。取り除き難きは正論に紛れ巣食うもの。/
経済産業省資源エネルギー庁は,2030年における原発の電源構成比率(いわゆる「ベストミックス」)を22~23(20~23%)という原案に示してきた。だが,そもそも「3・11」以来5年半近くが経過してきた現在,その「%」に実質相当する比率分は,すでに節電され削電できている。
当面の原油・液化の価格も低めに安定している。原発コストの急激な上昇(もともと本来の高コストが表面に出てきて現象してきたに過ぎないが)が明白になっている現段階において,この原発の再稼働にしゃかりきになっている電力会社と国家側関係官庁の基本姿勢は,自然・再生可能エネルギーの開発・利用を妨害するような,なかでも後者は行政の指導が主であって,エネルギー問題全体に対して観ると,文字どおり反動形成の国家組織・機関である。
経済産業省資源エネルギー庁は電力会社のいいなりに,あるいは進んでご奉仕だけするような,日本のこれからにとって必要不可欠であるエネルギー政策とはいえないような,担当官庁としての仕事っぷりであった。その後に及んでもなお,自然・再生可能エネルギーの開発・利用に不熱心であると判断されるような,根本的な基本姿勢を切り替えていない。日本国におけるエネルギー問題をまともな方向へともっていくための,つまりエネルギー自給率を高めるための近道は,自然・再生可能エネルギーの開発・利用にみいだすべきことは,自明に過ぎる選択肢である。
⑤ 自然・再生可能エネルギーの開発・利用の可能性・展望
こういう意見:「再生可能エネルギーはこんなに広がる」があるが,あなたならどう思うか? 『緑の党』の主張であるが,単に主張としてではなく,現実問題に関する見通しとして受けとめ,考えてみたい論点である。
1)日本がもつ再生可能エネルギーのポテンシャル
環境省が2012年に発表した再生可能エネルギーポテンシャル調査によれば,日本国内では,風力発電 40,000億kWh,太陽光発電(住宅を除く)約 1,600億kWh,中小水力発電約 800億kWh,地熱発電約 900億kWhの再生可能エネルギーの導入可能性があります。
数字だけをみれば,日本のエネルギー需要を十分賄うことが可能になっています。ただし実際には,たとえば風力発電の適地は北海道や東北等の一部に偏っていたり,国土が狭い日本では土地用途の利用調整が必要だったり,ポテンシャルを活かす工夫が必要になってきます。
2)再生可能エネルギーを大きく拡大する条件
2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり,発電事業参入への経済的インセンティブは整いました。制度開始から約8ヶ月が経過しましたが,太陽光発電については住宅用・産業ともに導入が増加しています。
しかし同時に,再生可能エネルギー適地への電力系統の整備に早急に着手し,再生可能エネルギー電源の受け入れ態勢を整備する必要があります。さらには,発送電分離を含む電力システム改革を,先行する欧米の経験にも学びながら進めていく必要があります。
日本のエネルギー消費量のうち約4分の3を占める熱エネルギーについても対策が必要です。工場等でボイラーの燃料として使われている重油,家庭や事業所などで暖房や給湯として使われている灯油やガスなどを再生可能エネルギーに置きかえるなど,とり組むべきことは多くあり,熱政策の整備もおこなう必要があります。
電源構成みとおし画像
出所)http://editor.fem.jp/blog/?p=203
この画像資料を参照した記述はこういう題名であった。
「脱原発と再生可能エネルギーシフトが雇用拡大・経済
発展もたらす-日本の電力消費の3倍ものポテンシャル
もつ再生可能エネルギーは原発産業の8倍もの雇用増や
す」(2015/8/11)。この記述も参照に値する。
上記のアドレス( ↑ )には,リンクを張ってある。
3)再生可能エネルギー100%の未来をめざして
再生可能エネルギーの未来は私たちのひとつひとつの「選択」の積み重ねにより決まります。同時に,国が “脱原発・エネルギーシフト” の大きな方向性を示し,選択肢を用意することは非常に重要です。私たち緑の党は,知恵・ネットワークを活かし,明確にエネルギーシフトを進める政策を打ち出し,実行していきます。
註記)http://greens.gr.jp/seisaku-list/5940/
以上は政党の〈標語的な主張〉である。だが,けっして不可能な方向性を語っているのではない。その気になってとり組む気されあれば,紆余曲折は予想されるものの,必らず実現できる「近未来の目標」である。ただし,原発の再稼働にこだわる原子力村利害共同体諸集団の面々にあっては,当面する自分たちの利害が彼らの視界を遮っており,自然・再生可能エネルギーの開発・利用に対する阻害要因になっている。
だからこそ,国家主体が一国のエネルギー資源調達問題を自然・再生可能エネルギーの開発・利用に向かわせねばならない。ところが,この日本国じたいが,原発依存病に罹患している原子力村を抱えている制度・基盤でもある。あまつさえ,この病状ををみずから矯正し,方向転換することを嫌がっている。
いずれにせよ,いまもなお,時代の流れに対しては反動形成分子であるその諸勢力(国家・支配体制)側が実権を掌握している点に変わりはない。だが,この勢力の妨害を抑えこみ,乗り越えながら,エネルギー資源基盤を根本から改革していく必要がある。
<転載終了>