2013年11月20日
特定秘密保護法の今次臨時国会での成立が目論まれている。
すでに、多くの人々がこの法律の問題点、危険性を指摘しているが、安倍政権が衆参両院で多数議席を占有し、野党勢力の大半が安倍政権の補完勢力になってしまっていることが、日本の主権者国民にとって危機的な状況を生み出している。
この法律は、政府があらゆる事項を秘密に指定し、これを国民から隠し、真実を知らせようとする行為、真実を知ろうとする行為を厳罰に処すことを定めるものである。
日本国憲法は国民主権を基本原則として定めているが、この法律は主権者である国民が行政に関する情報を知ることができなくなることを定め、かつ、その情報を知ろうとすること、その情報を知らせることを厳罰に処するという、国民主権の大原則を全面的に否定するものになっている。
この点を踏まえれば、民意の付託を受けた政党、政治家は、体を張って、法律の成立を阻止することに全力を注ぐべきである。
ところが、現実には、安倍政権が法律成立を推進し、かつ、大半の野党が、この暴走する与党勢力に加担する姿勢を強めている。
日本政治は文字通り、危機に直面しているのである。
これが「アベノリスク」の象徴的事象のひとつであることは言うまでもない。
日本国憲法は前文に次のように記述している。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
(中略)
主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」
主権者は国民であり、国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する。
国政の権威は国民に由来し、権力は国民の代表者がこれを行使するのである。
だからこそ、国民の代表者によって構成される国会が国権の最高機関とされているのである。
特定秘密保護法は、国民の上位に行政府を位置付け、主権者である国民に情報を公開せず、真実を知ること、真実を知らせることを厳罰に処するというもので、日本国憲法の定めに反するものである。
このような法律が成立するようでは、日本の民主主義、国民主権は意味を持たない。
細目についても、極めて不当な内容が盛り込まれている。
第一に、「特定秘密」の対象になる情報範囲が広く、曖昧で、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがあることだ。
「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」の区分があるが、この解釈によって、あらゆることが「特定秘密」に指定されて、国民の目から隠されてしまうおそれが高い。
普天間基地に関する情報や、自衛隊の海外派遣などの軍事・防衛問題は、「防衛」に含まれ、原子力発電所の安全性や、放射線被ばくの実態・健康への影響などの情報が「テロリズムの防止」に含まれ、あらゆる重要情報が隠されてしまう可能性高いのだ。
第二に、国民の知る権利が著しく侵害されることだ。
法律の条文には、知る権利に配慮すること、取材活動を認める文言が盛り込まれる見込みだが、「配慮」に強制力はない。
また、取材について、「著しく不当な方法」によらなければ取材が可能だとするが、「著しく不当な方法」などという表現がどのような意味を持つのかは一目瞭然だ。
「著しく不当」というのは、主観的な判断で、その判断によって内容は天地の開きが出る。
つまり、何も決めていないことと同じなのだ。
国会が、このような、どうにでも解釈、運用可能な条文を認めることは、法の支配、罪刑法定主義という、議会制民主主義の根幹を自ら否定するものである。
第三に、何を特定秘密にするのかについての監視機能が整備されないことだ。
首相の運用責任を明確化することで秘密指定の妥当性に目を光らせるというが、特定秘密になり得る情報の多さを考えると、「首相の監視」が言葉の上だけのものになることは避けられない。
まさに、天下の悪法の成立が強行される可能性が高まっているわけだ。
国会において、主権者国民を代表する政治勢力が一定の規模を確保していれば、安倍政権の暴走にくさびを打つことが可能だが、安倍政権与党とその補完勢力が議会議席の大半を占有している現状では、権力の暴走に歯止めをかけることが非常に難しくなっている。
みんな、維新は、予想通り、安倍政権の補完勢力としての正体をあらわにしつつある。
民主党もかなりの部分が安倍政権補完勢力であり、主権者勢力の良心の声が表に見えてこない。
次の国政選挙まで、政治権力の暴走が猛威を振るう危険性がいよいよ高まりつつある。
安倍のやりたい放題が止まらない。多分、戦後政治の中で、これほどまでに凄まじい極右路線をひた走る政権は初めてだろう。その意味では、歴史に残る総理大臣である。この国をひん曲げた政治家として…。
「特定秘密保護法案」のゴリ押しの派手さばかりが目につくが、ほかにも凄まじい極右政策のオンパレードだ。ざっと挙げてみよう。
◎日本版NSC(国家安全保障会議)の設置、
◎北岡伸一元東大教授ら自分に近しい人たちを“有識者懇談会”や“私的諮問会議”に登用しやたらと右翼的な政策提言をさせる手法
◎NHK経営委員へのお友達の任命(報道への政治介入)
◎教科書への政府見解の記述強制(教育への政治介入)
◎集団的自衛権の行使容認へ(解釈改憲への道)
◎「積極的平和主義」という名の軍拡路線
◎沖縄米軍普天間飛行場の辺野古移設の強行(自民党沖縄県連への恫喝)
◎TPP(環太平洋経済協定)交渉の秘密進行
◎災害復興に名を借りた公共事業への予算投入(土木国家再来)
◎武器輸出3原則のなし崩し的解禁
◎原発事故「完全にコントロール」ウソ発言
◎原発輸出と、原発再稼働への動き
…などなど、数え上げればきりがない。まさに、戦前回帰へひた走る安倍内閣である。こんな内閣、ほんとうに見たことがない。これが安倍の言う「戦後レジームからの脱却(=戦前回帰)」路線である。
安倍の政策志向は、まるでこの国を、自由にものが言えなかった国家抑圧体制の戦前へ引き戻そうとしているかのようだ。新聞紙条例も治安維持法も、最初は「言論の自由は保障する」と政府は言っていたのだ。だが、それがいつの間にか“自由弾圧法”として機能し、多くの人たちを逮捕拘留したことは周知の事実だ。中には作家小林多喜二のように、拷問で命を奪われた人だってかなりの数にのぼる。
しかもそんな戦前回帰政策を実現するための安倍の手法は、まったく許されざるものだ。例えば、東京新聞(11月19日)こちら特報部の見出しだけを拾ってみると、こうだ。
NHK経営委員に首相「お友達」続々
狙いは会長交代!?
報道の中立めぐり深い因縁
露骨な人事支配
日銀総裁、法制局長官…「聖域」も次々
政治任用「まるで独裁国家」…
前にも書いたけれど、自分に近しい人物をどんどん登用して、今までの歯止めを取っ払う。首相が好き勝手をやり放題…という現状では、「まるで独裁国家」と指摘されても仕方ない。
誰も口出しできない“裸の王様”状態になりつつある。裸のまんまだと、もうじき風邪をひくぜ!
閑話休題(それはともかく)、安倍は高い内閣支持率に鼻高々、今年9月、訪問先のアメリカでの講演では「私を右翼と呼びたければ、どうぞお呼びいただきたい」と開き直る始末。自らを“右翼”と認識しているわけだ。これまでに、「自分は右翼と呼ばれてもかまわない」などと口走った首相が果たしていただろうか?
もっとも、この講演はアメリカでも右寄りのシンクタンク、ハドソン研究所主催だったから、仲間内での気楽な放言だったらしい。それにしても、もはや度し難い。
だが、ほんとうのところ、アメリカは、安倍のことをいったいどう思っているのだろうか。
知人のジャーナリストや研究者は、「アメリカ政府は安倍首相のことを、かなり警戒している。特に彼の歴史認識については、苦々しく思っている政権幹部も多い」と言っている。
オバマ大統領は基本的にリベラル志向の政治家だとされている。オバマ大統領がなかなか安倍と会おうとしないのは、安倍の右派路線を嫌悪しているからだ、というのだ。
必死になって「同盟国アメリカのための政策」を掲げる安倍内閣だが、それはまったくの空回り。
少し前(11月9日)の毎日新聞コラム「昭和史のかたち」に、作家の保坂正康さんが次のように書いていた。少し長くなるが引用させてもらおう。
[米2閣僚の千鳥ヶ淵墓苑献花]
安倍史観に強い怒り
(略)今年の「公」のトップニュースは、10月3日午前にジョン・ケリー米国長官とチャック・ヘーゲル国防長官が連れ添って、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花、黙とうをささげたことである。(略)
アメリカ政府は、安倍晋三首相の歴史観に強い怒りを示していることがわかった。8月にあるアメリカ人記者の取材を受けた折に、アメリカ国内の共和党の保守派が、安倍首相の歴史観に不信感を持っていると聞いていたのである。
「侵略に学問上の定義はない」といった発言は、第二次大戦の根幹(アメリカにとっての民主主義を守る戦い)に対する挑戦の意味を含んでいるかのように受け止められたのだろう。加えて安倍首相が、こういう保守派の怒りを買ったのは、5月のアメリカ訪問時に、メディアのインタビューで、「日本の靖国神社はアメリカのアーリントン墓地と同じ」といった意味の発言を行ったことだ。この発言はアメリカ政府をはじめ、アメリカ国民を怒らせた。
なぜならアーリントン墓地は、アメリカのために戦った兵士たちを宗教・民族に関係なく追悼する施設だし、敗者への慰霊も含まれている。それに反して靖国神社は宗教的・政治的であると同時に、なによりA級戦犯の刑死者も祭礼の対象になっている。安倍首相は我々をバカにしているのではないか、アーリントン墓地を侮辱しているのではないか、との声が起っても当然であろう。
(筆者注・小泉純一郎内閣時代にも、在米日本大使館が靖国神社について「アーリントン墓地と同じ」と説明して米高官たちを激高させたという事例に触れて)つまり当時、小泉内閣の官房副長官だった安倍首相は、そういう国務省高官たちの怒りを知らないか、無視してか「靖国神社=アーリントン墓地」を口にしていたことになる。国務と国防の二人の主要閣僚が示した千鳥ヶ淵への献花は、単なる「現在」のニュースではない。長年のアメリカ政府の怒りが、正面切って我々の前に示されたことになる。(略)
安倍首相の歴史観は、一皮むけば昭和史を片面でしか見ていないという意味になる。(略)
この靖国問題に凝縮されているように、安倍の歴史観は、いまやアメリカ政府に限らず、アメリカのマスメディアなどにも問題視されている。保守派からさえ怒りを買っているのだ、一応リベラル志向のオバマ民主党政権が、安倍を快く思っているはずもない。
安倍や石破幹事長がしきりに吠え立てる「集団的自衛権行使容認」にしても、別にアメリカが要請したものではないという。
軍事評論家の田岡俊次さんに訊いたところでは、
「そんなもの、アメリカにはいい迷惑。それよりも、まず中国との関係改善を図るのが、アメリカにとっての国益なんだから、集団的自衛権などを振りかざして隣国と緊張関係を高めるのは、実にアメリカにとっては迷惑でしかないんですよ」ということだった。
むろん、安倍の母方の祖父・岸信介元首相が「A級戦犯容疑」で、巣鴨プリズンに収容されていた事実を、アメリカ現政府が知らないわけがない。その祖父の汚名を雪ぐために靖国神社に執着することと、現実の国際情勢の中で、いびつな歴史観に固執することはまったく違うと、アメリカ政府やマスメディアは見ているのだろう。
いよいよ、特定秘密保護法案が危ないところまで来てしまった。どの調査を見ても、この法案に対しては、賛成は少なく、反対や疑問の声のほうがかなり上回っている。それでも、安倍自民党は強行突破の姿勢を崩さない。
みんなの党が、どんな餌をちらつかされたのかは知らないが、危険極まりないこの法案の修正に応じて妥協し、賛成に回る様子。
僕はこのコラムで、多くの回数を原発問題に費やしてきたけれど、もしこの悪法が成立してしまえば、僕が知人のジャーナリストや研究者、作家、評論家などのみなさんなどから、様々なルートで得ていた程度の情報でさえ、取扱いにかなりの注意が必要になるかもしれない。
その意味で、僕も含め、個人のブログや市民ネット放送までもが危険に晒される可能性は高い。何しろ「何が秘密なのかは秘密だ」と安倍政権は言うのだから、どこでどう“難癖”をつけられて、警察のご厄介にならないとも限らないのだ。
たくさんの「秘密保護法反対」の集会やデモが行われているし、これからも開催される。何はともあれ、僕はできる限り参加する。そして、市民ネット放送やウェブマガジン、さらに雑誌などの紙面でも、できる限りの反対の声を上げていくつもりだ。
息苦しい世に、生きたくはない。
http://www.magazine9.jp/article/osanpo/9426/
この政権は狂気で異常だ なぜ右翼化したのか安倍自民党
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-10321.html
2013/11/20 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
大詰めを迎えている特定秘密保護法は19日、与党とみんなの党が法案修正で大筋合意したことで、一気に今国会での成立に向かって動き出した。民主党は、きのうになって対案を出したが、自民に「遅すぎる」と一蹴され、存在感すら示せない情けなさ。かくて、国民の知る権利を踏みにじり、言論の自由を剥奪する「世紀の悪法」は週明けにも衆院を通過する。ねじれが解消している国会では、参院は無力だから、法案はもう成立したも同然だ。
今後は取材の自由が制限され、政府は勝手に都合の悪い情報を隠し、米軍と二人三脚で右傾化路線を突き進んでいくことになる。暗黒時代の扉が開かれたのだが、ここで疑問なのは自民党はなぜ、かくも急激に右傾化したのか、ということだ。
確かに憲法改正は自民党の党是で、改憲草案には平和憲法を完全否定する文言が並んでいる。しかし、それはそれとして、右から左まで幅広い自民党には少なからずリベラルな議員もいて、彼らが右傾化に歯止めをかけてきた歴史がある。
野中広務・元自民党幹事長は97年、米軍基地のために沖縄の土地を半永久的に収用する米軍用地特措法が9割の賛成で可決した際、特別委員長(当時)として、こう訴えた。
「(この法案が通った結果)沖縄県民を軍靴で踏みにじるような結果にならないように。どうぞ再び大政翼賛会のような形にならないように若い皆さんにお願いしたい」
古賀誠・元自民党幹事長は今年6月、「しんぶん赤旗」のインタビューに応じ、憲法改正の発議要件を定める96条改正について「絶対にやるべきではない」と明言、「憲法の平和主義は『世界遺産』に匹敵する」と語って話題となった。
朝日新聞の特別編集委員、星浩氏はコラム(17日付)で、1985年、スパイ防止法を廃案にした故・宮下創平氏(厚相などを歴任)が生前、「私の原点は平和主義だ」と語っていたことを紹介し、〈宮下氏と同世代の故・梶山静六氏や野中広務氏、加藤紘一氏や河野洋平氏のような面々が自民党で活躍していたら、こんな法案(特定秘密保護法)が提出されることはなかったのではないか〉〈この法案は政権与党としての自民党の劣化を映し出している〉と書いていた。
だったら、朝日は体を張って、秘密保護法を阻止すべく、安倍倒閣キャンペーンを張るべきだが、それはともかく、かつてはこうやって警鐘を鳴らす議員がいたのに、今の自民党にはまったく見当たらない。みんなが安倍の顔色をうかがい、沈黙し、その中で安倍の異様な右傾化路線がうなりをあげているのである。
◇ポスト欲しさに沈黙するリベラル議員
自民党はなぜ、かくも堕落、劣化したのか。いろいろな人に聞いてみた。
「参院のねじれが解消してから、みんなが『物言えば唇寒し』になってしまった。安倍政権に長期化の目が出てきたからです。狡猾な安倍政権は臨時国会前の内閣改造を見送った。3年も政権から遠ざかっていた自民党内には大臣待望組が数十人いる。彼らは次の改造で大臣になりたいから、安倍批判などしないのです。そこにもってきて、安倍首相は内閣法制局長官やNHK経営委員会人事で、『気に入らないヤツは使わないよ』という姿勢を明確にした。ますます、議員は沈黙するようになった。情けないの一語ですよ」(政治ジャーナリスト・泉宏氏)
政治評論家の小林吉弥氏の見立てはこうだ。
「人事を人質にされているだけでなく、野党がだらしないし、支持率も高い。こうなると、自分だけ盾突いても、うまくいかない。だから、様子見になっている。派閥の領袖クラスでも『ものが言えない』と嘆いているのですから、ひどいもんです」
つくづく、自民党はダメになった。これじゃあ、安倍がのさばるわけだ。
◇厚顔無恥な国粋主義議員が増えているのはなぜか
自民党内で、独善的な民族主義者が増えてきたという事情もある。ウルトラタカ派の安倍が台頭し、「強い日本を目指す」とか、口だけ“勇ましい”ことを言うものだから、すっかりそれに感化されている単細胞の連中だ。拳を振り上げれば、中韓がひるむと思っているウルトラバカな議員たちだ。評論家の佐高信氏はこう言った。
「最近の日本には、根拠なき自信というか、“自分たちが優れているんだ”という選民意識みたいなものがはびこっているように感じます。なぜこうなったかといえば、やはり小選挙区の影響が大きい。大阪の橋下市長や安倍首相みたいに、勇ましいことを大声で言うヤツが選挙で勝ってしまうのです。慎重さよりも勇ましさ、思慮深さよりも声のでかさ。その結果、ますます、タカ派=単細胞が増えている」
リベラル派はポスト欲しさに沈黙を余儀なくされ、タカ派はますます過激化して、安倍を鼓舞し、すり寄るわけだ。なるほど、それなら、安倍がイイ気になるのも分かるが、それにしても、この右傾化のスピードはあまりにも異常だ。
安倍の思想信条は分かっているが、かくも拙速にやる必要性はどこにあるのか。秘密保護法の審議なんて、ムチャクチャだ。全マスコミを敵にまわし、国民が大反対している危険法案を、たった30時間の審議で無理やり採決しようとしているわけだ。
こんな乱暴な国会運営をすれば、もちろん、支持率は下がる。能天気な国民もさすがに安倍の危険性に気づく。それでも急ぐ理由がわからない。
◇経済失政を隠すためのタカ派思想
いくら与党に数があるといっても、国民の声に耳を傾けなければ、そんな政権は長続きしない。この辺の機微というか、一応は国民の声を聴いてきたのが自民党の「したたかさ」だったのに、いまや完全無視だから、トチ狂っている。だから、こんな見方も出てくるのだ。
「“ウワサの経済学”と揶揄されるアベノミクスのバケの皮がはがれそうになったから、次々と目くらましを繰り出しているのでしょう。当初は憲法改正の手続きを定めた憲法96条改正を言い出し、その反応がよくないとみたら、今度は解釈改憲で集団的自衛権の行使容認を打ち上げ、続いて秘密保護法です。弱い犬がよく吠えるごとく、タカ派の政策を打ち続けているように見えますね」(佐高信氏)
前出の小林吉弥氏はこう言った。
「やっぱり、不安の裏返しなんでしょう。いまはわが世の春の安倍政権ですが、来年の4月以降はガラリと状況が変わると思います。日銀の審議委員が消費増税の影響は『私たちが考えている以上に景気を下押しするリスクはある』と警告を発したように、いざ増税が実行されて、消費が冷え込めば、そのインパクトは計り知れないものになる。さらに5、6月には原発再稼働の決断を迫られます。国民の大半は小泉元首相が唱えるように脱原発ですから、安倍政権にはものすごい逆風が吹く。そういうことを考えると、安倍政権は今後、政権基盤を強固にするネタがない。だからこそ、右傾化路線を急ぎ、それを保守派に訴えるしかないのだと思います」
経済無策、内政無策、外交無策の安倍政権が、それをゴマカすために「面舵いっぱい」で走っている。だとしたら、とんでもない話だ。こういう政権は平気で、失政から目をそらせるために「戦争」をあおる。歴史に何度も出てくる過ちを繰り返す。改めて、「最悪の展開」と言うしかない。
特定秘密保護法の今次臨時国会での成立が目論まれている。
すでに、多くの人々がこの法律の問題点、危険性を指摘しているが、安倍政権が衆参両院で多数議席を占有し、野党勢力の大半が安倍政権の補完勢力になってしまっていることが、日本の主権者国民にとって危機的な状況を生み出している。
この法律は、政府があらゆる事項を秘密に指定し、これを国民から隠し、真実を知らせようとする行為、真実を知ろうとする行為を厳罰に処すことを定めるものである。
日本国憲法は国民主権を基本原則として定めているが、この法律は主権者である国民が行政に関する情報を知ることができなくなることを定め、かつ、その情報を知ろうとすること、その情報を知らせることを厳罰に処するという、国民主権の大原則を全面的に否定するものになっている。
この点を踏まえれば、民意の付託を受けた政党、政治家は、体を張って、法律の成立を阻止することに全力を注ぐべきである。
ところが、現実には、安倍政権が法律成立を推進し、かつ、大半の野党が、この暴走する与党勢力に加担する姿勢を強めている。
日本政治は文字通り、危機に直面しているのである。
これが「アベノリスク」の象徴的事象のひとつであることは言うまでもない。
日本国憲法は前文に次のように記述している。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
(中略)
主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」
主権者は国民であり、国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する。
国政の権威は国民に由来し、権力は国民の代表者がこれを行使するのである。
だからこそ、国民の代表者によって構成される国会が国権の最高機関とされているのである。
特定秘密保護法は、国民の上位に行政府を位置付け、主権者である国民に情報を公開せず、真実を知ること、真実を知らせることを厳罰に処するというもので、日本国憲法の定めに反するものである。
このような法律が成立するようでは、日本の民主主義、国民主権は意味を持たない。
細目についても、極めて不当な内容が盛り込まれている。
第一に、「特定秘密」の対象になる情報範囲が広く、曖昧で、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがあることだ。
「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」の区分があるが、この解釈によって、あらゆることが「特定秘密」に指定されて、国民の目から隠されてしまうおそれが高い。
普天間基地に関する情報や、自衛隊の海外派遣などの軍事・防衛問題は、「防衛」に含まれ、原子力発電所の安全性や、放射線被ばくの実態・健康への影響などの情報が「テロリズムの防止」に含まれ、あらゆる重要情報が隠されてしまう可能性高いのだ。
第二に、国民の知る権利が著しく侵害されることだ。
法律の条文には、知る権利に配慮すること、取材活動を認める文言が盛り込まれる見込みだが、「配慮」に強制力はない。
また、取材について、「著しく不当な方法」によらなければ取材が可能だとするが、「著しく不当な方法」などという表現がどのような意味を持つのかは一目瞭然だ。
「著しく不当」というのは、主観的な判断で、その判断によって内容は天地の開きが出る。
つまり、何も決めていないことと同じなのだ。
国会が、このような、どうにでも解釈、運用可能な条文を認めることは、法の支配、罪刑法定主義という、議会制民主主義の根幹を自ら否定するものである。
第三に、何を特定秘密にするのかについての監視機能が整備されないことだ。
首相の運用責任を明確化することで秘密指定の妥当性に目を光らせるというが、特定秘密になり得る情報の多さを考えると、「首相の監視」が言葉の上だけのものになることは避けられない。
まさに、天下の悪法の成立が強行される可能性が高まっているわけだ。
国会において、主権者国民を代表する政治勢力が一定の規模を確保していれば、安倍政権の暴走にくさびを打つことが可能だが、安倍政権与党とその補完勢力が議会議席の大半を占有している現状では、権力の暴走に歯止めをかけることが非常に難しくなっている。
みんな、維新は、予想通り、安倍政権の補完勢力としての正体をあらわにしつつある。
民主党もかなりの部分が安倍政権補完勢力であり、主権者勢力の良心の声が表に見えてこない。
次の国政選挙まで、政治権力の暴走が猛威を振るう危険性がいよいよ高まりつつある。
安倍のやりたい放題が止まらない。多分、戦後政治の中で、これほどまでに凄まじい極右路線をひた走る政権は初めてだろう。その意味では、歴史に残る総理大臣である。この国をひん曲げた政治家として…。
「特定秘密保護法案」のゴリ押しの派手さばかりが目につくが、ほかにも凄まじい極右政策のオンパレードだ。ざっと挙げてみよう。
◎日本版NSC(国家安全保障会議)の設置、
◎北岡伸一元東大教授ら自分に近しい人たちを“有識者懇談会”や“私的諮問会議”に登用しやたらと右翼的な政策提言をさせる手法
◎NHK経営委員へのお友達の任命(報道への政治介入)
◎教科書への政府見解の記述強制(教育への政治介入)
◎集団的自衛権の行使容認へ(解釈改憲への道)
◎「積極的平和主義」という名の軍拡路線
◎沖縄米軍普天間飛行場の辺野古移設の強行(自民党沖縄県連への恫喝)
◎TPP(環太平洋経済協定)交渉の秘密進行
◎災害復興に名を借りた公共事業への予算投入(土木国家再来)
◎武器輸出3原則のなし崩し的解禁
◎原発事故「完全にコントロール」ウソ発言
◎原発輸出と、原発再稼働への動き
…などなど、数え上げればきりがない。まさに、戦前回帰へひた走る安倍内閣である。こんな内閣、ほんとうに見たことがない。これが安倍の言う「戦後レジームからの脱却(=戦前回帰)」路線である。
安倍の政策志向は、まるでこの国を、自由にものが言えなかった国家抑圧体制の戦前へ引き戻そうとしているかのようだ。新聞紙条例も治安維持法も、最初は「言論の自由は保障する」と政府は言っていたのだ。だが、それがいつの間にか“自由弾圧法”として機能し、多くの人たちを逮捕拘留したことは周知の事実だ。中には作家小林多喜二のように、拷問で命を奪われた人だってかなりの数にのぼる。
しかもそんな戦前回帰政策を実現するための安倍の手法は、まったく許されざるものだ。例えば、東京新聞(11月19日)こちら特報部の見出しだけを拾ってみると、こうだ。
NHK経営委員に首相「お友達」続々
狙いは会長交代!?
報道の中立めぐり深い因縁
露骨な人事支配
日銀総裁、法制局長官…「聖域」も次々
政治任用「まるで独裁国家」…
前にも書いたけれど、自分に近しい人物をどんどん登用して、今までの歯止めを取っ払う。首相が好き勝手をやり放題…という現状では、「まるで独裁国家」と指摘されても仕方ない。
誰も口出しできない“裸の王様”状態になりつつある。裸のまんまだと、もうじき風邪をひくぜ!
閑話休題(それはともかく)、安倍は高い内閣支持率に鼻高々、今年9月、訪問先のアメリカでの講演では「私を右翼と呼びたければ、どうぞお呼びいただきたい」と開き直る始末。自らを“右翼”と認識しているわけだ。これまでに、「自分は右翼と呼ばれてもかまわない」などと口走った首相が果たしていただろうか?
もっとも、この講演はアメリカでも右寄りのシンクタンク、ハドソン研究所主催だったから、仲間内での気楽な放言だったらしい。それにしても、もはや度し難い。
だが、ほんとうのところ、アメリカは、安倍のことをいったいどう思っているのだろうか。
知人のジャーナリストや研究者は、「アメリカ政府は安倍首相のことを、かなり警戒している。特に彼の歴史認識については、苦々しく思っている政権幹部も多い」と言っている。
オバマ大統領は基本的にリベラル志向の政治家だとされている。オバマ大統領がなかなか安倍と会おうとしないのは、安倍の右派路線を嫌悪しているからだ、というのだ。
必死になって「同盟国アメリカのための政策」を掲げる安倍内閣だが、それはまったくの空回り。
少し前(11月9日)の毎日新聞コラム「昭和史のかたち」に、作家の保坂正康さんが次のように書いていた。少し長くなるが引用させてもらおう。
[米2閣僚の千鳥ヶ淵墓苑献花]
安倍史観に強い怒り
(略)今年の「公」のトップニュースは、10月3日午前にジョン・ケリー米国長官とチャック・ヘーゲル国防長官が連れ添って、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花、黙とうをささげたことである。(略)
アメリカ政府は、安倍晋三首相の歴史観に強い怒りを示していることがわかった。8月にあるアメリカ人記者の取材を受けた折に、アメリカ国内の共和党の保守派が、安倍首相の歴史観に不信感を持っていると聞いていたのである。
「侵略に学問上の定義はない」といった発言は、第二次大戦の根幹(アメリカにとっての民主主義を守る戦い)に対する挑戦の意味を含んでいるかのように受け止められたのだろう。加えて安倍首相が、こういう保守派の怒りを買ったのは、5月のアメリカ訪問時に、メディアのインタビューで、「日本の靖国神社はアメリカのアーリントン墓地と同じ」といった意味の発言を行ったことだ。この発言はアメリカ政府をはじめ、アメリカ国民を怒らせた。
なぜならアーリントン墓地は、アメリカのために戦った兵士たちを宗教・民族に関係なく追悼する施設だし、敗者への慰霊も含まれている。それに反して靖国神社は宗教的・政治的であると同時に、なによりA級戦犯の刑死者も祭礼の対象になっている。安倍首相は我々をバカにしているのではないか、アーリントン墓地を侮辱しているのではないか、との声が起っても当然であろう。
(筆者注・小泉純一郎内閣時代にも、在米日本大使館が靖国神社について「アーリントン墓地と同じ」と説明して米高官たちを激高させたという事例に触れて)つまり当時、小泉内閣の官房副長官だった安倍首相は、そういう国務省高官たちの怒りを知らないか、無視してか「靖国神社=アーリントン墓地」を口にしていたことになる。国務と国防の二人の主要閣僚が示した千鳥ヶ淵への献花は、単なる「現在」のニュースではない。長年のアメリカ政府の怒りが、正面切って我々の前に示されたことになる。(略)
安倍首相の歴史観は、一皮むけば昭和史を片面でしか見ていないという意味になる。(略)
この靖国問題に凝縮されているように、安倍の歴史観は、いまやアメリカ政府に限らず、アメリカのマスメディアなどにも問題視されている。保守派からさえ怒りを買っているのだ、一応リベラル志向のオバマ民主党政権が、安倍を快く思っているはずもない。
安倍や石破幹事長がしきりに吠え立てる「集団的自衛権行使容認」にしても、別にアメリカが要請したものではないという。
軍事評論家の田岡俊次さんに訊いたところでは、
「そんなもの、アメリカにはいい迷惑。それよりも、まず中国との関係改善を図るのが、アメリカにとっての国益なんだから、集団的自衛権などを振りかざして隣国と緊張関係を高めるのは、実にアメリカにとっては迷惑でしかないんですよ」ということだった。
むろん、安倍の母方の祖父・岸信介元首相が「A級戦犯容疑」で、巣鴨プリズンに収容されていた事実を、アメリカ現政府が知らないわけがない。その祖父の汚名を雪ぐために靖国神社に執着することと、現実の国際情勢の中で、いびつな歴史観に固執することはまったく違うと、アメリカ政府やマスメディアは見ているのだろう。
いよいよ、特定秘密保護法案が危ないところまで来てしまった。どの調査を見ても、この法案に対しては、賛成は少なく、反対や疑問の声のほうがかなり上回っている。それでも、安倍自民党は強行突破の姿勢を崩さない。
みんなの党が、どんな餌をちらつかされたのかは知らないが、危険極まりないこの法案の修正に応じて妥協し、賛成に回る様子。
僕はこのコラムで、多くの回数を原発問題に費やしてきたけれど、もしこの悪法が成立してしまえば、僕が知人のジャーナリストや研究者、作家、評論家などのみなさんなどから、様々なルートで得ていた程度の情報でさえ、取扱いにかなりの注意が必要になるかもしれない。
その意味で、僕も含め、個人のブログや市民ネット放送までもが危険に晒される可能性は高い。何しろ「何が秘密なのかは秘密だ」と安倍政権は言うのだから、どこでどう“難癖”をつけられて、警察のご厄介にならないとも限らないのだ。
たくさんの「秘密保護法反対」の集会やデモが行われているし、これからも開催される。何はともあれ、僕はできる限り参加する。そして、市民ネット放送やウェブマガジン、さらに雑誌などの紙面でも、できる限りの反対の声を上げていくつもりだ。
息苦しい世に、生きたくはない。
http://www.magazine9.jp/article/osanpo/9426/
この政権は狂気で異常だ なぜ右翼化したのか安倍自民党
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-10321.html
2013/11/20 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
大詰めを迎えている特定秘密保護法は19日、与党とみんなの党が法案修正で大筋合意したことで、一気に今国会での成立に向かって動き出した。民主党は、きのうになって対案を出したが、自民に「遅すぎる」と一蹴され、存在感すら示せない情けなさ。かくて、国民の知る権利を踏みにじり、言論の自由を剥奪する「世紀の悪法」は週明けにも衆院を通過する。ねじれが解消している国会では、参院は無力だから、法案はもう成立したも同然だ。
今後は取材の自由が制限され、政府は勝手に都合の悪い情報を隠し、米軍と二人三脚で右傾化路線を突き進んでいくことになる。暗黒時代の扉が開かれたのだが、ここで疑問なのは自民党はなぜ、かくも急激に右傾化したのか、ということだ。
確かに憲法改正は自民党の党是で、改憲草案には平和憲法を完全否定する文言が並んでいる。しかし、それはそれとして、右から左まで幅広い自民党には少なからずリベラルな議員もいて、彼らが右傾化に歯止めをかけてきた歴史がある。
野中広務・元自民党幹事長は97年、米軍基地のために沖縄の土地を半永久的に収用する米軍用地特措法が9割の賛成で可決した際、特別委員長(当時)として、こう訴えた。
「(この法案が通った結果)沖縄県民を軍靴で踏みにじるような結果にならないように。どうぞ再び大政翼賛会のような形にならないように若い皆さんにお願いしたい」
古賀誠・元自民党幹事長は今年6月、「しんぶん赤旗」のインタビューに応じ、憲法改正の発議要件を定める96条改正について「絶対にやるべきではない」と明言、「憲法の平和主義は『世界遺産』に匹敵する」と語って話題となった。
朝日新聞の特別編集委員、星浩氏はコラム(17日付)で、1985年、スパイ防止法を廃案にした故・宮下創平氏(厚相などを歴任)が生前、「私の原点は平和主義だ」と語っていたことを紹介し、〈宮下氏と同世代の故・梶山静六氏や野中広務氏、加藤紘一氏や河野洋平氏のような面々が自民党で活躍していたら、こんな法案(特定秘密保護法)が提出されることはなかったのではないか〉〈この法案は政権与党としての自民党の劣化を映し出している〉と書いていた。
だったら、朝日は体を張って、秘密保護法を阻止すべく、安倍倒閣キャンペーンを張るべきだが、それはともかく、かつてはこうやって警鐘を鳴らす議員がいたのに、今の自民党にはまったく見当たらない。みんなが安倍の顔色をうかがい、沈黙し、その中で安倍の異様な右傾化路線がうなりをあげているのである。
◇ポスト欲しさに沈黙するリベラル議員
自民党はなぜ、かくも堕落、劣化したのか。いろいろな人に聞いてみた。
「参院のねじれが解消してから、みんなが『物言えば唇寒し』になってしまった。安倍政権に長期化の目が出てきたからです。狡猾な安倍政権は臨時国会前の内閣改造を見送った。3年も政権から遠ざかっていた自民党内には大臣待望組が数十人いる。彼らは次の改造で大臣になりたいから、安倍批判などしないのです。そこにもってきて、安倍首相は内閣法制局長官やNHK経営委員会人事で、『気に入らないヤツは使わないよ』という姿勢を明確にした。ますます、議員は沈黙するようになった。情けないの一語ですよ」(政治ジャーナリスト・泉宏氏)
政治評論家の小林吉弥氏の見立てはこうだ。
「人事を人質にされているだけでなく、野党がだらしないし、支持率も高い。こうなると、自分だけ盾突いても、うまくいかない。だから、様子見になっている。派閥の領袖クラスでも『ものが言えない』と嘆いているのですから、ひどいもんです」
つくづく、自民党はダメになった。これじゃあ、安倍がのさばるわけだ。
◇厚顔無恥な国粋主義議員が増えているのはなぜか
自民党内で、独善的な民族主義者が増えてきたという事情もある。ウルトラタカ派の安倍が台頭し、「強い日本を目指す」とか、口だけ“勇ましい”ことを言うものだから、すっかりそれに感化されている単細胞の連中だ。拳を振り上げれば、中韓がひるむと思っているウルトラバカな議員たちだ。評論家の佐高信氏はこう言った。
「最近の日本には、根拠なき自信というか、“自分たちが優れているんだ”という選民意識みたいなものがはびこっているように感じます。なぜこうなったかといえば、やはり小選挙区の影響が大きい。大阪の橋下市長や安倍首相みたいに、勇ましいことを大声で言うヤツが選挙で勝ってしまうのです。慎重さよりも勇ましさ、思慮深さよりも声のでかさ。その結果、ますます、タカ派=単細胞が増えている」
リベラル派はポスト欲しさに沈黙を余儀なくされ、タカ派はますます過激化して、安倍を鼓舞し、すり寄るわけだ。なるほど、それなら、安倍がイイ気になるのも分かるが、それにしても、この右傾化のスピードはあまりにも異常だ。
安倍の思想信条は分かっているが、かくも拙速にやる必要性はどこにあるのか。秘密保護法の審議なんて、ムチャクチャだ。全マスコミを敵にまわし、国民が大反対している危険法案を、たった30時間の審議で無理やり採決しようとしているわけだ。
こんな乱暴な国会運営をすれば、もちろん、支持率は下がる。能天気な国民もさすがに安倍の危険性に気づく。それでも急ぐ理由がわからない。
◇経済失政を隠すためのタカ派思想
いくら与党に数があるといっても、国民の声に耳を傾けなければ、そんな政権は長続きしない。この辺の機微というか、一応は国民の声を聴いてきたのが自民党の「したたかさ」だったのに、いまや完全無視だから、トチ狂っている。だから、こんな見方も出てくるのだ。
「“ウワサの経済学”と揶揄されるアベノミクスのバケの皮がはがれそうになったから、次々と目くらましを繰り出しているのでしょう。当初は憲法改正の手続きを定めた憲法96条改正を言い出し、その反応がよくないとみたら、今度は解釈改憲で集団的自衛権の行使容認を打ち上げ、続いて秘密保護法です。弱い犬がよく吠えるごとく、タカ派の政策を打ち続けているように見えますね」(佐高信氏)
前出の小林吉弥氏はこう言った。
「やっぱり、不安の裏返しなんでしょう。いまはわが世の春の安倍政権ですが、来年の4月以降はガラリと状況が変わると思います。日銀の審議委員が消費増税の影響は『私たちが考えている以上に景気を下押しするリスクはある』と警告を発したように、いざ増税が実行されて、消費が冷え込めば、そのインパクトは計り知れないものになる。さらに5、6月には原発再稼働の決断を迫られます。国民の大半は小泉元首相が唱えるように脱原発ですから、安倍政権にはものすごい逆風が吹く。そういうことを考えると、安倍政権は今後、政権基盤を強固にするネタがない。だからこそ、右傾化路線を急ぎ、それを保守派に訴えるしかないのだと思います」
経済無策、内政無策、外交無策の安倍政権が、それをゴマカすために「面舵いっぱい」で走っている。だとしたら、とんでもない話だ。こういう政権は平気で、失政から目をそらせるために「戦争」をあおる。歴史に何度も出てくる過ちを繰り返す。改めて、「最悪の展開」と言うしかない。