"チェリストのバイブル"とまで言われるバッハの6曲の無伴奏チェロ組曲。技術的にも音楽的にも非常に高度なものを求めているこの曲は、チェロを弾く人にとって自分を高めるためには避けて通れない曲であり、すべてのチェリストはこの曲のために存在している、とも言えるかもしれません。当然、古今の名チェリストたちもこの曲を取り上げており、多数の録音があります。
今朝は、ジャクリーヌ・デュプレで聴きました
new!!
ピーター・ウィスペルウェイ (1998年録音)
バロックチェロも現代のチェロも扱うウィスペルウェイ。ここでは当然バロックチェロを用いていますが、細かいニュアンスに富んだ演奏でとても興味深い。また一貫して穏やかで高貴な雰囲気が流れる。紳士。
new!!
パブロ・カザルス (1915,1916年録音 第3番のプレリュード、サラバンド、ブーレ、ジーグのみ)
バッハの無伴奏チェロ組曲の世界初録音だろうか。当然録音はよろしくありませんが、貴重な記録。カザルス三十代末の録音。後年の録音よりどことなくかしこまっていて、カッチリ弾いている印象。カザルスが提唱していた、左手の指を指板にしっかり叩きつけて明瞭な音を出す奏法が非常に徹底されていて、音が一つ一つはっきり聞こえるし、指板を叩く音も聞こえる。
鈴木秀美 (2004年録音)
日本が世界に誇るバロックチェロのパイオニア、鈴木秀美の2回目の録音は、日本が世界に誇る録音。軽やかでありながら深みがある。聴き応えはあるが過度にお腹一杯にならない。あまりに素晴らしい演奏です。
ミッシャ・マイスキー (1999年録音)
古楽器の影響から誰もが逃れられないこの時代において、まさに時代に逆行した録音。レガート&テヌートで塗りつぶし、テンポの起伏も大きく、きわめてロマンティック。個性が強すぎるので好き嫌いがはっきりわかれると思われる。ここまで自由にやってもいいんだ、という安心感は感じるが。
ヨーヨー・マ (1996年録音)
ヨーヨー・マ2回目の録音。1曲ごとにテーマを決め、各界の著名人とユニークな協演をしているのでも話題になった(ちなみに5番は歌舞伎の坂東玉三郎)。演奏はピッチが低く古楽器奏法を取り入れているが、リズミカルで生き生きとしており、舞曲の性格がよく出ている。以前「徹子の部屋」に出演していた際に、笑みをたたえながら6番のガボットを弾き「これは舞曲なんです、楽しい曲なんです」と言っていたけど、そりゃこれだけ弾ければ何しても楽しいよなー。
鈴木秀美 (1995年録音)
日本が世界に誇るバロックチェロのパイオニア、鈴木秀美の1回目の録音。いかにも古楽器による演奏といった感じで軽い弓使い。おもしろいことはおもしろいが、僕にはちょっと軽すぎる気がする。
ダヴィド・ゲリンガス (1994年録音)
実力はあるのになぜか知名度は低いゲリンガス。ここでも完璧な技巧で全曲弾ききっているが、装飾音符つけまくりでど派手な演奏になってしまった。笑える。外見は渋い人なのに。
アンナー・ビルスマ (1992年録音)
ビルスマ2回目の録音はモダン仕様のストラディバリで。旧盤よりも流れが流麗で、どちらかというと「歌うバッハ」という印象。楽器を鳴らすのではなく、楽器が自然に鳴っている、というのが素晴らしい。でも僕はどちらかというと旧盤の方が好きだなぁ。
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ (1992年録音)
チェロの巨人ロストロポーヴィチが満を持して取り組んだ録音ということで非常に期待していたんだけど、全くの期待はずれ。曲と演奏がマッチしてない気がする。彼の音楽の資質とバッハが合わなかったのだろうか。大味というか大雑把な雰囲気がして、好きになれない。
ヤーノシュ・シュタルケル (1992年録音)
重鎮シュタルケルの最新録音。年輪を感じさせる味わい深い演奏。フレーズの終わりごとにいちいちテンポを落とすのがちょっと気にはなるが。後述のトルトゥリエ同様、録音当時68歳だったとは思えない完璧なテクニック。
山下和仁 (1990年録音)
日本が世界に誇る名ギタリスト山下和仁の、自身の編曲によるギターでの演奏。チェロ弾きの中にはギターなんて邪道な、と思う人もいるかもしれないけど、これがめちゃめちゃいい。ギターとバッハって合うんだよね。
ハインリヒ・シフ (1984年録音)
ひょっとしてモダン楽器に古楽器奏法を取り入れた世界初録音、だったのかも(ウィスペルウェイやヨーヨー・マの先駆け?)。これがさっぱりしていて音も躍動していて、どことなくせかせかしていると言えなくはないけど、なかなか結構な口当たりなのです。
ミッシャ・マイスキー (1984年録音)
僕がこの曲の良さを初めて知った演奏。表面上はカザルスとは全く正反対で穏やかですが、内面に激しく燃え上がる情熱を秘めた演奏であり、スタイルは違ってもめざすものはカザルスと全く同じ。
ポール・トルトゥリエ (1982年録音)
トルトゥリエ2度目の録音。旧盤よりもさらに流れがなめらかになり、いかにも円熟を感じさせる。それにしても、68歳にしてこの完璧なテクニック!! こうなりたいものです。
アンナー・ビルスマ (1979年録音)
古楽器のパイオニア、ビルスマの旧盤。1音1音慈しむように弾かれた、まさに「語るバッハ」。味わいのあるとてもいい演奏。昔ヤンキーだったおじいさんが幼い孫を膝にのせて昔話を語っているような趣。
アンドレ・ナヴァラ (1977年録音)
いやー、ひたすら塗りつぶすなぁ。全部の音が力強く鳴っている。男!
ピエール・フルニエ (1972年録音)
1972年来日時のライブ録音。「チェロの貴公子」と呼ばれたフルニエだけど、とても力強い音を出す人で、僕は貴公子というより騎士と言った方が合うと思う。ライブということでミスもあるけど、それを補って余りある気概を感じる。フルニエの肉声によるコメントが聞けるのがファンには貴重。
ニコラウス・アーノンクール (1964年頃録音)
アーノンクールは実はチェリストだったのです。ひょっとして古楽器による無伴奏チェロ組曲の世界初録音、だったのかも。でも、演奏自体はそうとりたててどうこう言う代物ではないような気がする。所々変わった音で弾いてておっと思う箇所もあるけど、今となってはわざわざ手に入れて聴くまでもないかと。この盤で重要なのは、アーノンクールが弾いている、という事実のみなのです。
モーリス・ジャンドロン (1964年録音)
フランス人のジャンドロンによるバッハ(フランスって名チェリストが多いんだよね)。明るくて流麗だが、ちょっと楽天的すぎるんじゃないか?
ジャクリーヌ・デュ・プレ (1962年録音 1,2番のみ)
デュプレのデビュー直後のもので、BBCへの放送用の録音。彼女にしては珍しく落ちつきのある味わい深い演奏で、録音当時まだ10代半ばだったとは思えない完成度。彼女が全曲録音せずにこの世を去ってしまったのが非常に残念。
ポール・トルトゥリエ (1960年録音)
フランスのチェリスト、トルトゥリエの旧盤。流れに重点を置いたしなやかな演奏。
ピエール・フルニエ (1960年録音)
いかにもフルニエらしい真摯で品のある演奏。それでいて男性的な力強さも合わせ持っていて、非常にいい演奏だと思う。初めてこの曲を聴く人にはおすすめ。
ピエール・フルニエ (1959年録音)
知る人ぞしる、フルニエのライヴ録音。ミスもあるが、1960年のスタジオ録音よりも雄弁で表情が豊か。どちらをとるかは聴く人の好みの問題でしょう。
アントニオ・ヤニグロ (?年録音)
流麗で細部まで気配りのきいた意欲的な演奏。一昔前のスタイル。
ガスパール・カサド (1957年録音)
曲に多少手が入っていて、所々音が違ったりする。白眉は第4番で、変ホ長調のこの曲をヘ長調で弾いている。A線の開放を効果的に使えるので、渋い地味な曲がど派手になってしまった。
パブロ・カザルス (1955年録音、第1番のみ)
ドイツのボンにあるベートーヴェン・ハウスにおける、ベートーヴェンが生前所有していたチェロによる演奏で、2003年になって初めて売り出された。1930年代の有名な録音よりも伸び伸びしている印象。リラックスした自然さを感じます。
パブロ・カザルス (1936〜39年録音)
バッハと言えばカザルス、というほど有名な録音。この曲を現代によみがえらせた張本人でもあります。いかにも入魂の演奏、といった感じですが、録音が古いのとくせがあまりにも強すぎるので、初めてこの曲を聴く人には向かないかも。僕は嫌いではないです。
今朝は、ジャクリーヌ・デュプレで聴きました
new!!
ピーター・ウィスペルウェイ (1998年録音)
バロックチェロも現代のチェロも扱うウィスペルウェイ。ここでは当然バロックチェロを用いていますが、細かいニュアンスに富んだ演奏でとても興味深い。また一貫して穏やかで高貴な雰囲気が流れる。紳士。
new!!
パブロ・カザルス (1915,1916年録音 第3番のプレリュード、サラバンド、ブーレ、ジーグのみ)
バッハの無伴奏チェロ組曲の世界初録音だろうか。当然録音はよろしくありませんが、貴重な記録。カザルス三十代末の録音。後年の録音よりどことなくかしこまっていて、カッチリ弾いている印象。カザルスが提唱していた、左手の指を指板にしっかり叩きつけて明瞭な音を出す奏法が非常に徹底されていて、音が一つ一つはっきり聞こえるし、指板を叩く音も聞こえる。
鈴木秀美 (2004年録音)
日本が世界に誇るバロックチェロのパイオニア、鈴木秀美の2回目の録音は、日本が世界に誇る録音。軽やかでありながら深みがある。聴き応えはあるが過度にお腹一杯にならない。あまりに素晴らしい演奏です。
ミッシャ・マイスキー (1999年録音)
古楽器の影響から誰もが逃れられないこの時代において、まさに時代に逆行した録音。レガート&テヌートで塗りつぶし、テンポの起伏も大きく、きわめてロマンティック。個性が強すぎるので好き嫌いがはっきりわかれると思われる。ここまで自由にやってもいいんだ、という安心感は感じるが。
ヨーヨー・マ (1996年録音)
ヨーヨー・マ2回目の録音。1曲ごとにテーマを決め、各界の著名人とユニークな協演をしているのでも話題になった(ちなみに5番は歌舞伎の坂東玉三郎)。演奏はピッチが低く古楽器奏法を取り入れているが、リズミカルで生き生きとしており、舞曲の性格がよく出ている。以前「徹子の部屋」に出演していた際に、笑みをたたえながら6番のガボットを弾き「これは舞曲なんです、楽しい曲なんです」と言っていたけど、そりゃこれだけ弾ければ何しても楽しいよなー。
鈴木秀美 (1995年録音)
日本が世界に誇るバロックチェロのパイオニア、鈴木秀美の1回目の録音。いかにも古楽器による演奏といった感じで軽い弓使い。おもしろいことはおもしろいが、僕にはちょっと軽すぎる気がする。
ダヴィド・ゲリンガス (1994年録音)
実力はあるのになぜか知名度は低いゲリンガス。ここでも完璧な技巧で全曲弾ききっているが、装飾音符つけまくりでど派手な演奏になってしまった。笑える。外見は渋い人なのに。
アンナー・ビルスマ (1992年録音)
ビルスマ2回目の録音はモダン仕様のストラディバリで。旧盤よりも流れが流麗で、どちらかというと「歌うバッハ」という印象。楽器を鳴らすのではなく、楽器が自然に鳴っている、というのが素晴らしい。でも僕はどちらかというと旧盤の方が好きだなぁ。
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ (1992年録音)
チェロの巨人ロストロポーヴィチが満を持して取り組んだ録音ということで非常に期待していたんだけど、全くの期待はずれ。曲と演奏がマッチしてない気がする。彼の音楽の資質とバッハが合わなかったのだろうか。大味というか大雑把な雰囲気がして、好きになれない。
ヤーノシュ・シュタルケル (1992年録音)
重鎮シュタルケルの最新録音。年輪を感じさせる味わい深い演奏。フレーズの終わりごとにいちいちテンポを落とすのがちょっと気にはなるが。後述のトルトゥリエ同様、録音当時68歳だったとは思えない完璧なテクニック。
山下和仁 (1990年録音)
日本が世界に誇る名ギタリスト山下和仁の、自身の編曲によるギターでの演奏。チェロ弾きの中にはギターなんて邪道な、と思う人もいるかもしれないけど、これがめちゃめちゃいい。ギターとバッハって合うんだよね。
ハインリヒ・シフ (1984年録音)
ひょっとしてモダン楽器に古楽器奏法を取り入れた世界初録音、だったのかも(ウィスペルウェイやヨーヨー・マの先駆け?)。これがさっぱりしていて音も躍動していて、どことなくせかせかしていると言えなくはないけど、なかなか結構な口当たりなのです。
ミッシャ・マイスキー (1984年録音)
僕がこの曲の良さを初めて知った演奏。表面上はカザルスとは全く正反対で穏やかですが、内面に激しく燃え上がる情熱を秘めた演奏であり、スタイルは違ってもめざすものはカザルスと全く同じ。
ポール・トルトゥリエ (1982年録音)
トルトゥリエ2度目の録音。旧盤よりもさらに流れがなめらかになり、いかにも円熟を感じさせる。それにしても、68歳にしてこの完璧なテクニック!! こうなりたいものです。
アンナー・ビルスマ (1979年録音)
古楽器のパイオニア、ビルスマの旧盤。1音1音慈しむように弾かれた、まさに「語るバッハ」。味わいのあるとてもいい演奏。昔ヤンキーだったおじいさんが幼い孫を膝にのせて昔話を語っているような趣。
アンドレ・ナヴァラ (1977年録音)
いやー、ひたすら塗りつぶすなぁ。全部の音が力強く鳴っている。男!
ピエール・フルニエ (1972年録音)
1972年来日時のライブ録音。「チェロの貴公子」と呼ばれたフルニエだけど、とても力強い音を出す人で、僕は貴公子というより騎士と言った方が合うと思う。ライブということでミスもあるけど、それを補って余りある気概を感じる。フルニエの肉声によるコメントが聞けるのがファンには貴重。
ニコラウス・アーノンクール (1964年頃録音)
アーノンクールは実はチェリストだったのです。ひょっとして古楽器による無伴奏チェロ組曲の世界初録音、だったのかも。でも、演奏自体はそうとりたててどうこう言う代物ではないような気がする。所々変わった音で弾いてておっと思う箇所もあるけど、今となってはわざわざ手に入れて聴くまでもないかと。この盤で重要なのは、アーノンクールが弾いている、という事実のみなのです。
モーリス・ジャンドロン (1964年録音)
フランス人のジャンドロンによるバッハ(フランスって名チェリストが多いんだよね)。明るくて流麗だが、ちょっと楽天的すぎるんじゃないか?
ジャクリーヌ・デュ・プレ (1962年録音 1,2番のみ)
デュプレのデビュー直後のもので、BBCへの放送用の録音。彼女にしては珍しく落ちつきのある味わい深い演奏で、録音当時まだ10代半ばだったとは思えない完成度。彼女が全曲録音せずにこの世を去ってしまったのが非常に残念。
ポール・トルトゥリエ (1960年録音)
フランスのチェリスト、トルトゥリエの旧盤。流れに重点を置いたしなやかな演奏。
ピエール・フルニエ (1960年録音)
いかにもフルニエらしい真摯で品のある演奏。それでいて男性的な力強さも合わせ持っていて、非常にいい演奏だと思う。初めてこの曲を聴く人にはおすすめ。
ピエール・フルニエ (1959年録音)
知る人ぞしる、フルニエのライヴ録音。ミスもあるが、1960年のスタジオ録音よりも雄弁で表情が豊か。どちらをとるかは聴く人の好みの問題でしょう。
アントニオ・ヤニグロ (?年録音)
流麗で細部まで気配りのきいた意欲的な演奏。一昔前のスタイル。
ガスパール・カサド (1957年録音)
曲に多少手が入っていて、所々音が違ったりする。白眉は第4番で、変ホ長調のこの曲をヘ長調で弾いている。A線の開放を効果的に使えるので、渋い地味な曲がど派手になってしまった。
パブロ・カザルス (1955年録音、第1番のみ)
ドイツのボンにあるベートーヴェン・ハウスにおける、ベートーヴェンが生前所有していたチェロによる演奏で、2003年になって初めて売り出された。1930年代の有名な録音よりも伸び伸びしている印象。リラックスした自然さを感じます。
パブロ・カザルス (1936〜39年録音)
バッハと言えばカザルス、というほど有名な録音。この曲を現代によみがえらせた張本人でもあります。いかにも入魂の演奏、といった感じですが、録音が古いのとくせがあまりにも強すぎるので、初めてこの曲を聴く人には向かないかも。僕は嫌いではないです。